冬のファッションに欠かせないコートは、大切に扱えば何年も着続けられるアイテムです。しかし、日々の着用で目に見えない汗や皮脂、ホコリが付着し、放置すると生地の傷みや黄ばみ、虫食いの原因となります。そこで重要になるのが、プロによる定期的なクリーニングです。
とはいえ、「クリーニング料金はいくらくらい?」「どれくらいの頻度で出せばいいの?」「出すタイミングはいつがベスト?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。また、クリーニング店には昔ながらの「店舗型」と、自宅で完結する「宅配型」があり、どちらを選ぶべきか迷うこともあるでしょう。
この記事では、コートのクリーニングに関するあらゆる疑問に答えるべく、料金相場から最適な頻度・時期、お店の選び方、さらにはクリーニング後の正しい保管方法まで、網羅的に解説します。大切なコートを来シーズンも気持ちよく着るために、ぜひ最後までご覧ください。
目次
コートのクリーニング料金相場
コートのクリーニング料金は、依頼するお店の形態(店舗型か宅配型か)やコートの種類・素材、さらには追加するオプションによって大きく変動します。まずは、それぞれの料金相場を詳しく見ていきましょう。
店舗型クリーニングの料金
店舗型クリーニングは、街中にある個人経営のお店や全国展開のチェーン店に直接衣類を持ち込むスタイルです。料金はコート1点ごとに設定されているのが一般的で、地域や店舗の規模、サービス品質によって価格差があります。
一般的な店舗型クリーニングの料金相場は、1着あたり1,500円~3,500円程度です。比較的安価なチェーン店では1,000円台前半から対応している場合もありますが、高級素材を扱う場合や、仕上がりの質を重視する店舗では4,000円を超えることもあります。
店舗型のメリットは、スタッフと直接対面で相談できる点です。気になるシミや汚れの箇所を指し示しながら説明したり、素材に合わせた最適なクリーニング方法を提案してもらったりできます。また、急ぎの場合は即日や翌日仕上げに対応してくれる店舗があるのも魅力です。
一方で、料金は店舗ごとの差が大きいため、近隣に複数の店舗がある場合は料金表を比較検討することをおすすめします。特に、キャンペーンや会員割引などを利用すると、通常価格よりもお得にクリーニングできる場合があります。
宅配クリーニングの料金
宅配クリーニングは、インターネットや電話で申し込み、専用のキットや手持ちの段ボールに衣類を詰めて配送業者に渡すだけでクリーニングが完了するサービスです。料金体系は、店舗型のような1点ごとの料金設定のほかに、「5点で〇〇円」といったパック料金制度を採用している事業者が多いのが特徴です。
コートのようなかさばる冬物衣類は、パック料金を利用することで1点あたりの単価を抑えられる傾向があります。コートを含むパック料金の相場は、5点で8,000円~15,000円程度、つまり1点あたりに換算すると1,600円~3,000円ほどになります。もちろん、パックの点数が多くなるほど1点あたりの単価は安くなります。
宅配クリーニングの最大のメリットは、重くてかさばるコートを店舗まで運ぶ手間が省けることです。自宅にいながら申し込みから受け取りまで完結するため、忙しい方や近くにクリーニング店がない方にとって非常に便利です。また、多くの事業者では、クリーニング後の衣類を次のシーズンまで預かってくれる長期保管サービスを有料または無料で提供しており、クローゼットの省スペース化にも繋がります。
ただし、パック料金の場合は、Tシャツのような単価の安い衣類とコートを一緒に出すと、かえって割高になる可能性もあるため、何を出すかをよく考えて利用することが重要です。
コートの種類・素材別の料金目安
コートのクリーニング料金を決定づける最も大きな要因は、その素材です。素材によってクリーニング方法や使用する溶剤、手間が大きく異なるため、料金に差が生じます。ここでは、代表的な素材別の料金目安を解説します。
コートの素材 | 料金目安(1着あたり) | 特徴 |
---|---|---|
一般的な素材(綿・ポリエステルなど) | 1,500円~2,500円 | 機械でのドライクリーニングが可能なものが多く、比較的安価。 |
ウール素材 | 2,000円~3,500円 | 縮みや型崩れを防ぐため、丁寧な処理が必要。 |
高級素材(カシミヤ・アンゴラなど) | 3,000円~5,000円 | デリケートな繊維を傷めない特殊な技術や溶剤が必要。 |
ダウン素材 | 3,000円~5,500円 | 羽毛の油分を保ちつつ、ふんわり感を復元する専門技術が必要。 |
特殊素材(革・ファー・ムートンなど) | 5,000円~20,000円 | 専用の設備と高度な専門知識が必要なため、高額になる。 |
一般的な素材(綿・ポリエステルなど)
トレンチコートやモッズコートなどに多く使われる綿やポリエステル、ナイロンといった素材は、比較的丈夫で扱いやすいため、クリーニング料金も安価な傾向にあります。
料金の目安は1,500円~2,500円程度です。
これらの素材は、多くの場合、一般的なドライクリーニングで対応可能です。ただし、装飾が凝っていたり、ライナーが取り外し可能であったりすると、追加料金が発生することもあります。また、撥水加工が施されているコートの場合、クリーニングによって効果が薄れることがあるため、再加工を依頼するかどうかを検討しましょう。
ウール素材
チェスターコートやダッフルコートなど、冬の定番であるウール素材のコートは、保温性が高く人気ですが、クリーニングには注意が必要です。ウールは水に濡れると縮みやすく、摩擦によって毛玉(ピリング)ができやすいデリケートな素材です。
そのため、クリーニング店ではウールの風合いを損なわないよう、専用の溶剤を使ったり、乾燥方法を工夫したりと、丁寧な作業が求められます。こうした手間がかかる分、料金は2,000円~3,500円程度と、一般的な素材よりやや高めに設定されています。
高級素材(カシミヤ・アンゴラなど)
カシミヤ、アンゴラ、アルパカ、ビキューナといった動物の獣毛から作られる高級素材のコートは、その滑らかな肌触りと光沢、軽さが魅力です。しかし、これらの繊維は非常にデリケートで、少しの摩擦や不適切な溶剤で風合いが大きく損なわれてしまいます。
クリーニング店では、これらの素材を「デラックスコース」や「ロイヤルコース」といった特別なコースで扱い、熟練の職人が手作業に近い形で一点一点丁寧に洗浄・仕上げを行うことがほとんどです。そのため、料金相場も3,000円~5,000円、場合によってはそれ以上と高額になります。大切な高級コートを長く愛用するためには、料金だけでなく、その店の技術力や実績をしっかり見極めることが重要です。
ダウン素材
ダウンジャケットやダウンコートは、内部の羽毛(ダウンやフェザー)が空気の層を作ることで高い保温性を実現しています。クリーニングの際、この羽毛が持つ油分を過剰に奪ってしまうと、保温性が低下し、ふんわりとしたボリューム感も失われてしまいます。
プロのクリーニング店では、羽毛の油分を適度に残しつつ汚れを落とす特殊な技術を用いて洗浄します。さらに、乾燥工程では羽毛が均等に広がり、偏らないように特別な配慮がなされます。こうした専門的な工程が必要なため、料金は3,000円~5,500円程度と、ウールコートなどよりも高くなるのが一般的です。特に、モンクレールやカナダグースといった高級ブランドのダウンは、ブランド専門のクリーニングコースが用意されていることもあり、さらに高額になる場合があります。
特殊素材(革・ファー・ムートンなど)
レザー(本革)、スエード、ムートン(羊革)、リアルファーといった素材は、水や溶剤に極めて弱く、クリーニングには高度な専門知識と特殊な設備が必要です。通常のクリーニング店では対応できず、皮革専門のクリーニング工場に依頼するケースがほとんどです。
洗浄方法も、汚れを拭き取ったり、専用のクリームを塗り込んだり、特殊なスプレーで色補正を行ったりと、衣類というよりは「修理」に近い工程が含まれます。そのため、料金は非常に高額になり、レザージャケットで5,000円~10,000円、ムートンコートやファーコートになると10,000円~20,000円以上することも珍しくありません。これらの素材のクリーニングを依頼する際は、必ず皮革製品の取り扱い実績が豊富な専門店を選びましょう。
オプションなどで追加料金がかかるケース
基本のクリーニング料金に加えて、衣類の状態や要望に応じて様々なオプション加工を追加できます。オプションを利用することで、コートをより良い状態で長持ちさせられます。
代表的なオプションと料金目安は以下の通りです。
- シミ抜き: 通常のクリーニングでは落ちない古いシミや特殊な汚れ(インク、ワイン、血液など)を除去する作業です。シミの種類や範囲によって料金は異なり、1箇所あたり500円~3,000円程度が目安です。広範囲や難しいシミの場合は、別途見積もりとなることもあります。
- 撥水(はっすい)加工: 生地の表面をコーティングし、水や汚れを弾くようにする加工です。雨や雪の日に着るコートや、食べこぼしが気になる場合に効果的です。料金は1,000円~2,000円程度。購入時にあった撥水効果が薄れてきたと感じたら、追加するのがおすすめです。
- 防虫・防カビ加工: クリーニング後の保管中に、虫食いやカビの発生を防ぐための加工です。特に、次のシーズンまで長期間保管するウールやカシミヤなどの天然繊維のコートには必須と言えるでしょう。料金は500円~1,500円程度です。
- 汗抜き加工: ドライクリーニングでは落としきれない水溶性の汚れである汗の成分を、特殊な技術で洗い流す加工です。襟元や脇の黄ばみ予防、臭い対策に効果があります。料金は500円~1,500円程度です。
- デラックス仕上げ・手仕上げ: 熟練の職人が手作業でアイロンがけや成形を行い、新品に近いシルエットや風合いを蘇らせるコースです。高級ブランドのコートや、特に大切にしたい一着におすすめ。基本料金の1.5倍~2倍程度が目安です。
- 付属品: 取り外し可能なフード、ベルト、ライナーなどは、それぞれ別料金としてカウントされる場合があります。1点あたり300円~1,000円程度が目安です。
これらのオプションは、すべてを追加すると高額になります。コートの素材や着用シーン、現在の状態を考慮し、必要なオプションを賢く選択することが重要です。
コートのクリーニングにかかる日数
コートをクリーニングに出してから手元に戻ってくるまでの日数は、お店の形態や時期によって大きく異なります。いざ着たい時に間に合わないという事態を避けるためにも、一般的な所要日数を把握しておきましょう。
店舗型クリーニングの場合
店舗型クリーニングの場合、仕上がりまでの日数は通常3日~7日程度が目安です。自社工場を持つ店舗であれば比較的早く、クリーニングを集中工場で行っているチェーン店などでは、配送の時間が加わるため少し長くなる傾向があります。
多くの店舗では「お急ぎ便」や「即日仕上げ」といったサービスを提供しており、追加料金を支払うことで、当日中や翌日に受け取ることも可能です。ただし、即日仕上げに対応できるのは、一般的な素材のスーツやワイシャツなどが中心で、コートのような特殊な洗い方や乾燥に時間のかかる衣類は対象外となることが多いので注意が必要です。特にダウンコートや高級素材のコートは、丁寧な作業が必要なため、通常でも1週間~2週間ほどかかる場合があります。
また、後述する繁忙期(3月~4月や衣替えの時期)は、クリーニングの依頼が集中するため、通常よりも仕上がりまでの日数が長くなる傾向があります。通常期なら3日で仕上がるものが、繁忙期には1週間以上かかることも珍しくありません。急ぎでクリーニングしたい場合は、出す前に必ず店舗に納期を確認しましょう。
宅配クリーニングの場合
宅配クリーニングは、往復の配送時間が含まれるため、店舗型よりも日数がかかるのが一般的です。申し込みから自宅に届くまでの期間は、通常7日~14日程度を見ておくと良いでしょう。
具体的な流れとしては、以下のようになります。
- 申し込み・集荷キットの到着: 申し込み後、1~3日で衣類を入れるバッグや段ボール、伝票が届きます。
- 発送: 衣類を詰めて配送業者に集荷を依頼します。
- 工場での検品・クリーニング: 工場到着後、1点ずつ検品し、クリーニング作業に入ります。この工程に5~10日ほどかかります。
- 発送・自宅への到着: クリーニング完了後、発送され、1~2日で自宅に届きます。
ただし、これはあくまで通常サービスの目安です。一部の宅配クリーニングサービスでは、「お急ぎ便」を提供しており、最短2日~5日程度で届けてくれる場合もあります。ただし、こちらもコートの種類やオプションの有無によっては対応できないことがあるため、利用前に公式サイトで条件を確認することが必須です。
一方で、宅配クリーニングの大きな特徴である「長期保管サービス」を利用する場合は、仕上がりまでの期間が数ヶ月単位になります。春に預けて、秋口の指定した時期に届けてもらうといった利用方法が一般的で、納期を急がない代わりに、自宅の収納スペースを有効活用できるというメリットがあります。
コートをクリーニングに出す適切な頻度
お気に入りのコートを長持ちさせるためには、適切な頻度でクリーニングに出すことが不可欠です。しかし、「毎回出すべき?」「汚れていなければ出さなくてもいい?」など、頻度については悩む方も多いようです。ここでは、コートの状態や着用頻度に応じたクリーニングの目安を解説します。
基本は1シーズンに1回
コートをクリーニングに出す最も基本的なタイミングは、「衣替えの時期」、つまりシーズンが終わって長期間保管する前です。これを「1シーズンに1回」の目安と考えると良いでしょう。
「あまり着ていないし、目立った汚れもないから大丈夫」と思うかもしれません。しかし、たとえ短時間の着用であっても、コートには目に見えない汚れがたくさん付着しています。主な汚れの原因は以下の通りです。
- 皮脂や汗: 特に襟元や袖口には、直接肌が触れるため皮脂や汗が付着しやすいです。これらは時間が経つと酸化し、黄ばみや変色の原因となります。
- ホコリや排気ガス: 屋外で着用するコートは、空気中のホコリ、チリ、花粉、車の排気ガスなどを吸着しています。これらも生地を傷め、臭いの元になります。
- 食べこぼしや飲み物のシミ: 小さなシミでも、気づかずに放置すると酸化して定着し、落としにくい頑固な汚れになってしまいます。
これらの汚れを落とさずにクローゼットに保管してしまうと、次のシーズンに取り出したときに、黄ばみやシミが浮き出ていたり、嫌な臭いがしたりするだけでなく、カビや虫食いの原因にもなります。特に、ウールやカシミヤなどの天然繊維は、虫にとって格好の栄養源です。汚れが付着したままの状態は、虫を呼び寄せることになりかねません。
したがって、着用回数にかかわらず、シーズンオフには必ずクリーニングに出して汚れをリセットすることが、コートを美しく長持ちさせるための鉄則です。
3〜5年に1回で良い場合
基本はシーズンに1回のクリーニングが推奨されますが、例外もあります。それは、冠婚葬祭用のフォーマルなコートなど、着用回数が極端に少ない場合です。
例えば、1シーズンに1~2回、短時間しか着用しなかったコートであれば、必ずしも毎年クリーニングに出す必要はありません。このような場合は、3~5年に1回程度のクリーニングでも問題ないでしょう。
ただし、その場合でもシーズンオフの保管前には適切なケアが必要です。
- ブラッシング: 全体を丁寧にブラッシングして、表面のホコリや髪の毛を落とします。
- 陰干し: 風通しの良い日陰で半日ほど干し、着用中に吸った湿気を飛ばします。
- 部分的な汚れの確認: 襟元や袖口、裾などに汚れがないかチェックします。もし軽い汚れがあれば、固く絞ったタオルで優しく叩くようにして拭き取ります。
こうしたセルフケアを行った上で、防虫カバーをかけて湿気の少ない場所に保管します。そして、数年に一度、プロのクリーニングで全体の汚れをしっかりと落としてもらう、というサイクルです。ただし、これはあくまで「ほとんど汚れていない」ことが前提です。少しでも汚れや臭いが気になる場合は、年数にかかわらずクリーニングに出しましょう。
汚れが気になったら出す
シーズン中であっても、目立つ汚れやシミが付いてしまった場合は、放置せずにできるだけ早くクリーニングに出すことを強くおすすめします。
汚れは、付着してからの時間が長ければ長いほど繊維の奥深くに浸透し、酸化して落としにくくなります。例えば、コーヒーや醤油をこぼしてしまった場合、すぐに対処すれば比較的簡単に落ちるシミでも、数週間放置するとプロの技術でも除去が困難になることがあります。
特に以下のような汚れが付いた場合は、シーズン途中でも迷わずクリーニング店に相談しましょう。
- 食べ物や飲み物のシミ(コーヒー、ワイン、醤油、ケチャップなど)
- 化粧品(ファンデーション、口紅など)
- 泥はね
- 雨に濡れてできた輪ジミ
- ボールペンのインク
応急処置としてティッシュで拭き取る程度は良いですが、自分で洗剤を使ったり、強くこすったりするのは絶対に避けてください。シミが広がったり、生地が傷んだりして、かえって状態を悪化させてしまう可能性があります。汚れの種類や付着した状況をクリーニング店のスタッフに正確に伝えることで、より適切なシミ抜き処理をしてもらえます。
「シーズンオフまで待つ」のではなく、「汚れたらすぐに出す」ことが、大切なコートをシミから守るための重要なポイントです。
コートをクリーニングに出すおすすめの時期
コートのクリーニングは、出すタイミングによって料金や仕上がりの品質、納期に差が出ることがあります。最もお得で高品質なサービスを受けるためには、いつクリーニングに出すのがベストなのでしょうか。
シーズンオフの春(4月〜5月)が最適
結論から言うと、コートのクリーニングに最も適した時期は、冬物衣類の着用シーズンが終わる春、具体的には4月から5月頃です。この時期に出すことには、多くのメリットがあります。
- 料金が割安になるキャンペーンが多い:
クリーニング業界では、冬物の需要が落ち着く4月以降に、顧客を確保するために「冬物セール」や「早割キャンペーン」などを実施する店舗や事業者が非常に多くなります。通常価格の10%~30%割引になることもあり、コートのような単価の高い衣類をまとめて出すと、大きな節約に繋がります。 - 仕上がりの品質が期待できる:
後述する繁忙期を過ぎているため、工場は比較的空いています。そのため、一点一点の衣類に時間をかけて丁寧に作業してもらえる可能性が高まります。急かされることなく、検品から洗浄、シミ抜き、仕上げまで、質の高いサービスが期待できるのです。特にデリケートな素材のコートや、丁寧な仕上げを望む場合は、この時期を狙うのが賢明です。 - 納期が早い:
工場が混み合っていないため、仕上がりまでの日数も短縮されます。店舗型であれば通常通りの納期で、宅配型でもスムーズに返却されることが多いでしょう。すぐに返却してもらえれば、梅雨入り前の湿気が少ない時期にクローゼットにしまうことができ、保管環境の面でも有利です。 - 保管サービスを有効活用できる:
多くの宅配クリーニングが提供する長期保管サービスは、春に預けて秋に受け取るのが基本サイクルです。4月~5月に預けることで、最もかさばる冬物コートを梅雨や夏の期間中、最適な環境(温度・湿度管理)で保管してもらえます。これにより、自宅のクローゼットがスッキリするだけでなく、カビや虫食いのリスクからコートを守ることができます。
これらの理由から、コートのクリーニングはシーズンが終わったらすぐに、具体的には4月~5月に出すのが最も賢い選択と言えます。
繁忙期(3月・6月)を避けるべき理由
一方で、クリーニング業界には年に数回の繁忙期があり、この時期にコートを出すのはなるべく避けた方が良いとされています。特に注意すべきなのが3月と6月です。
- 3月の繁忙期:
3月は、卒業式や入学式、就職、転勤など、新生活の準備が重なる時期です。多くの人が礼服やスーツをクリーニングに出すため、クリーニング店は非常に混み合います。この時期に冬物のコートを出すと、他の衣類に紛れてしまい、納期が大幅に遅れたり、工場の作業が立て込んでいるために十分な検品や丁寧な仕上げが行われにくくなったりするリスクがあります。 - 6月の繁忙期:
6月は、多くの地域で衣替えが本格化する時期です。「そろそろ冬物を片付けないと」と考える人が一斉にクリーニング店に駆け込むため、一年で最も混雑する時期の一つです。この「駆け込み需要」により、以下のようなデメリットが生じやすくなります。- 納期の遅延: 通常1週間のところが3週間以上かかることもあります。
- 品質低下のリスク: 大量の衣類を短時間で処理しなければならないため、シミの見落としやプレス(アイロンがけ)の甘さなど、仕上がりの質が低下する可能性があります。
- 割引キャンペーンの終了: 4月~5月に行われていた割引キャンペーンが、6月には終了していることがほとんどです。むしろ、繁忙期料金が設定されることさえあります。
もちろん、やむを得ず繁忙期に出さなければならない場合もあるでしょう。その際は、納期に十分な余裕を持つこと、そしてシミやほつれなど特に注意してほしい点をカウンターでしっかり伝えることが重要です。しかし、可能であれば3月と6月を避け、4月~5月の閑散期を狙って出すことが、満足度の高いクリーニングに繋がります。
コートをクリーニングに出す前に確認すべき3つのこと
クリーニング店にコートを預ける前に、少しの手間をかけて確認作業を行うことで、後のトラブルを防ぎ、より満足のいく仕上がりを得ることができます。ここでは、必ずチェックしておきたい3つのポイントを解説します。
① ポケットの中身
これはクリーニングに出す際の基本中の基本ですが、意外と忘れがちなポイントです。コートのポケットには、知らず知らずのうちに様々なものが紛れ込んでいる可能性があります。
必ず、すべてのポケット(内ポケット、胸ポケット、腰ポケットなど)に手を入れて、中が空になっていることを確認してください。
もしポケットに物が入ったままクリーニングに出してしまうと、次のような深刻なトラブルに繋がる可能性があります。
- ティッシュペーパー、ハンカチ: 洗濯槽の中で溶けて細かくなり、クリーニングに出したコートだけでなく、一緒に洗われた他の人の衣類全体に付着してしまうという最悪の事態を招きます。付着した紙くずを取り除くのは非常に困難で、店舗に多大な迷惑をかけることになります。
- ペン、口紅: キャップが外れるとインクや中身が漏れ出し、コートに大きなシミを作ってしまいます。これも他の衣類を汚染する原因となり、損害賠償問題に発展するケースもあります。
- 鍵、イヤホン、アクセサリー: 洗浄機のドラムを傷つけたり、小物自体が破損したりする可能性があります。紛失のリスクも非常に高いです。
- レシート、現金: 水に濡れてボロボロになり、判読不能になったり、紛失したりします。後から気づいても、返還を求めるのは困難です。
クリーニング店でも受け付け時にポケットの確認を行いますが、最終的な責任は依頼者にあります。万が一、自分の持ち物が原因で他の顧客の衣類に損害を与えてしまった場合、その損害を賠償しなければならない可能性もゼロではありません。「自分は大丈夫」と思わず、出す直前に必ず最終チェックする習慣をつけましょう。
② シミ・汚れ・ほつれの有無
コートを預ける前に、全体を明るい場所でよく点検し、シミや汚れ、ボタンの緩み、糸のほつれなどがないかを確認しましょう。そして、気になる箇所があれば、受付の際に必ずスタッフに伝えることが重要です。
これを怠ると、以下のようなトラブルが起こり得ます。
- 「クリーニングでシミが付いた」という誤解: 元々あった薄いシミに気づかず、クリーニングから返ってきた後に「新しくシミが付いている!」とクレームを入れてしまうケースです。事前に伝えておくことで、このような無用な争いを避けられます。
- シミが落ちきらない: クリーニング店では検品を行いますが、全ての小さなシミを見つけられるとは限りません。特に目立たない場所のシミは見落とされがちです。事前に「ここにコーヒーのシミがある」と具体的に伝えることで、適切なシミ抜き処理を重点的に行ってもらえ、シミが落ちる確率が格段に上がります。
- ほつれやボタンの紛失: 少しほつれている箇所や、取れかかっているボタンをそのままクリーニングに出すと、洗浄中の遠心力で完全に取れてしまったり、ほつれが広がってしまったりすることがあります。事前に伝えておけば、お店によっては簡単な補修をしてくれたり、より慎重に扱ってくれたりします。
シミを伝える際は、「いつ頃、何が付いたシミか」(例:「1ヶ月くらい前に付いたワインのシミです」)という情報をできるだけ詳しく伝えると、クリーニング店は原因物質に合った最適な溶剤や方法を選べるため、除去率が向上します。面倒に感じるかもしれませんが、このひと手間が仕上がりの満足度を大きく左右します。
③ ベルトやフードなど付属品の確認
トレンチコートのウエストベルトや袖ベルト、ダウンコートのフード、ライナー、ファーの襟飾りなど、コートには多くの付属品が付いています。これらの付属品は、クリーニングの過程で紛失するリスクが最も高いパーツです。
トラブルを防ぐため、以下の2点を確認しましょう。
- 付属品の点数を数え、受付伝票に記載してもらう:
コート本体に加えて、「ベルト1点、フード1点、ライナー1点、合計4点」というように、預ける付属品の種類と点数をスタッフと一緒に確認し、受付伝票に明記してもらうことが最も確実な対策です。これにより、万が一紛失があった場合でも、預けた証拠としてお店側に責任を問いやすくなります。 - 取り外せるものは自分で保管する:
特に高価なファーの襟飾りなど、クリーニングが不要なものや、紛失した際に替えがきかない大切な付属品は、あらかじめ取り外して自宅で保管しておくというのも一つの手です。ただし、付属品も汚れている場合は一緒にクリーニングに出すべきなので、その際はやはり点数確認を徹底しましょう。
ベルトのバックルが破損したり、フードの紐がなくなったりといったトラブルも少なくありません。預ける側と預かる側の双方で「何を預けたか」を明確に共有しておくことが、安心してクリーニングを任せるための鍵となります。
クリーニング店の選び方
大切なコートを預けるクリーニング店選びは非常に重要です。料金の安さだけで選んでしまうと、型崩れや風合いの劣化といった失敗に繋がりかねません。ここでは、店舗型と宅配型の特徴を比較し、信頼できるお店を選ぶための4つのポイントを解説します。
店舗型と宅配型のメリット・デメリット
クリーニングサービスは、大きく「店舗型」と「宅配型」に分けられます。それぞれに一長一短があるため、ご自身のライフスタイルや何を重視するかによって最適な選択は異なります。
店舗型クリーニング
近所にある昔ながらの個人店や、駅前などにあるチェーン店がこれにあたります。
メリット | デメリット |
---|---|
直接スタッフに相談できる(シミの箇所や仕上がりの要望を伝えやすい) | 店舗まで衣類を運ぶ手間がかかる(特に冬物コートは重くてかさばる) |
仕上がりが早い場合がある(即日・翌日仕上げに対応している店舗も) | 営業時間に合わせる必要がある(仕事帰りなどに間に合わないことも) |
1点から気軽に頼める | 料金が店舗によって異なり、比較がしにくい |
会員割引やセールなど、地域限定の特典があることも | 保管サービスがない、または有料の場合が多い |
店舗型がおすすめな人:
- シミやほつれなど、直接見せて相談したいことがある人
- 急ぎでクリーニングしてほしい衣類がある人
- クリーニングに出す点数が少なく、持ち運びが苦にならない人
- 近所に信頼できるお気に入りの店がある人
宅配クリーニング
インターネットで注文し、配送業者が集荷・配達を行うサービスです。
メリット | デメリット |
---|---|
自宅で全て完結し、持ち運びの手間がない | 仕上がりまでに時間がかかる(往復の配送日数を含む) |
24時間いつでも注文できる | 直接スタッフと対面で相談できない(要望は申込フォームに記入) |
パック料金でお得になることが多い(冬物など単価の高いものをまとめて出すと割安) | 1点だけだと割高になることがある |
長期保管サービスが充実している(無料の場合も多く、クローゼットがスッキリする) | 仕上がりを確認するまで品質がわからない不安がある |
宅配クリーニングがおすすめな人:
- 仕事や育児で忙しく、店舗に行く時間がない人
- コートや布団など、かさばる物をまとめてクリーニングしたい人
- 近くにクリーニング店がない、または車を持っていない人
- クローゼットの収納スペースを確保したい人(保管サービスを利用したい人)
お店を選ぶときの4つのポイント
店舗型・宅配型にかかわらず、数あるクリーニング店の中から信頼できる一社を選ぶためには、以下の4つのポイントをチェックしましょう。
① 料金
料金は誰もが気になるポイントですが、単純な安さだけで選ぶのは危険です。極端に料金が安いお店は、効率を重視するあまり、洗浄液をろ過せずに使い回していたり、乾燥やプレスの工程を簡略化していたりする可能性があります。その結果、汚れが十分に落ちていなかったり、他の衣類の汚れが再付着(逆汚染)したり、型崩れしたりといったトラブルに繋がることがあります。
まずは本記事で紹介した料金相場を参考に、価格が適正かどうかを判断しましょう。その上で、基本料金に何が含まれているか(簡単なシミ抜きは込みか、など)、オプション料金はいくらか、といった詳細を確認します。特に高級素材のコートを出す場合は、安さよりも品質を保証する「デラックスコース」などを提供しているお店を選ぶ方が安心です。
② 仕上がりの品質
クリーニングの価値は、最終的な仕上がりの美しさで決まります。品質の高いお店を見極めるには、いくつかのチェックポイントがあります。
- 受付スタッフの対応(店舗型の場合): 衣類の素材をしっかり確認し、シミや汚れについて丁寧にヒアリングしてくれるか、適切なオプションを提案してくれるかなど、スタッフの知識や対応力は、その店の品質基準を反映していることが多いです。
- SマークやLDマークの有無: 「クリーニング業の標準営業約款」に基づいて営業していることを示す「Sマーク(標準営業約款登録店)」や、全国クリーニング生活衛生同業組合連合会が認める優良店の証である「LDマーク(信用できるお店)」が掲示されているお店は、一定の基準を満たしており、万が一の際の賠償基準も明確なため安心です。
- 口コミや評判: 実際に利用した人の声は非常に参考になります。「シミがきれいになった」「プレスが丁寧でシルエットが蘇った」といったポジティブな口コミが多いお店は、品質が高い可能性があります。ただし、個人の主観も含まれるため、複数の情報を参考にしましょう。
- 仕上がりの具体例: 宅配クリーニングの公式サイトなどでは、ビフォーアフターの写真を掲載している場合があります。どのような仕上がりになるのかを視覚的に確認できるのは、良い判断材料になります。
③ オプション加工の種類
基本的なクリーニングだけでなく、どのようなオプション加工を提供しているかも重要な選択基準です。自分のニーズに合った加工があるかを確認しましょう。
例えば、
- 雨や雪の日に着ることが多いコートなら「撥水加工」
- 襟元や脇の汗ジミが気になるなら「汗抜き加工」
- 次のシーズンまで長期間保管するなら「防虫・防カビ加工」
- 高級ブランドのコートの風合いを保ちたいなら「デラックス仕上げ」
など、コートの状態や用途に合わせて必要なケアを提案してくれるお店は、顧客の衣類を大切に扱っている証拠と言えます。オプションが豊富で、それぞれの効果を分かりやすく説明してくれるお店を選びましょう。
④ 保管サービスの有無
特に宅配クリーニングを選ぶ際に大きなメリットとなるのが、長期保管サービスです。シーズンオフのコートをクリーニング後、そのまま次のシーズンまで預かってくれるこのサービスは、自宅の収納スペースを圧迫しないという点で非常に価値があります。
保管サービスを選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。
- 保管環境: 温度・湿度が24時間管理された専用の保管庫で預かってくれるかどうかが最も重要です。単なる倉庫での保管では、カビや虫食いのリスクがあります。遮光されているかも大切なポイントです。
- 料金: サービス料金は、クリーニング料金に含まれている(無料)場合と、別途オプション料金がかかる場合があります。1点あたり月額数百円が相場ですが、パック料金に組み込まれているほうがお得なことが多いです。
- 期間: 保管期間は最大9ヶ月~12ヶ月など、事業者によって異なります。自分が受け取りたい時期まで預かってもらえるかを確認しましょう。
大切なコートを最適な環境で保管してもらえることは、コートの寿命を延ばすことに直結します。このサービスの有無と質も、クリーニング店選びの大きな決め手となるでしょう。
クリーニング後のコートを長持ちさせる保管方法
クリーニングから戻ってきたコートをそのままクローゼットにしまうだけでは、せっかくきれいになった状態を維持できません。ほんの少しの手間で、次のシーズンも新品のような状態で着始められます。ここでは、プロも実践する正しい保管方法を5つのステップで解説します。
ビニールカバーはすぐに外す
クリーニング店でかけられているビニールカバーは、あくまで店舗でのホコリよけや、持ち帰る際の汚れ防止のためのものです。保管用ではないため、自宅に持ち帰ったらすぐに外してください。
ビニールカバーをかけたまま保管してしまうと、以下のような問題が発生します。
- 湿気がこもる: ビニールは通気性が全くないため、内部に湿気がこもりやすくなります。特に梅雨や夏の時期は、湿気によってカビが発生する絶好の環境を作ってしまいます。
- 化学変化による変色(ガスヤケ): ビニールカバーの原料に含まれる酸化防止剤が、空気中の窒素酸化物ガスと化学反応を起こし、衣類が黄色っぽく変色する「ガスヤケ」という現象を引き起こすことがあります。
- 溶剤が残る可能性: クリーニングで使われたドライクリーニング溶剤が完全に揮発しきれずに残っている場合、ビニールで密閉することで気化した溶剤が再び衣類に付着し、臭いや変色の原因になることがあります。
ビニールカバーは、コートをクローゼットにしまう前に必ず取り外す、と覚えておきましょう。
厚みのあるハンガーに交換する
クリーニング店で付いてくるワイヤーハンガーは、一時的な使用を目的とした簡易的なものです。細いワイヤーハンガーに重いコートを長期間かけておくと、重みが肩の狭い一点に集中し、型崩れや肩部分の生地の伸び、ハンガー跡の原因になります。
コートを保管する際は、必ず肩のラインに合った、厚みのある木製またはプラスチック製のハンガーに交換しましょう。男性用・女性用など、コートのサイズに合った幅のハンガーを選ぶことが重要です。ジャケット用の、肩先に丸みと厚みがあるタイプのハンガーが最適です。これにより、コート自身の重さが分散され、美しいシルエットを保つことができます。
風通しの良い場所で陰干しする
ビニールカバーを外し、適切なハンガーにかけ替えたら、すぐにクローゼットにはしまわず、風通しの良い日陰で半日~1日程度陰干しをしましょう。
このひと手間には、2つの重要な目的があります。
- 残った湿気を飛ばす: クリーニングの工程(特にスチーム仕上げなど)で残ったわずかな湿気を完全に飛ばし、カビの発生を防ぎます。
- クリーニング溶剤を揮発させる: ドライクリーニングで使用された石油系溶剤などが、ごく微量に残っている場合があります。これらをしっかりと揮発させることで、化学物質による生地へのダメージや、保管中の臭いを防ぎます。
直射日光は色あせや生地の傷みの原因になるため、必ず室内やベランダの日陰など、風が通る場所を選んでください。
防虫カバーをかけて保管する
陰干しが終わったら、いよいよクローゼットにしまいます。その際、ホコリよけと虫食い対策のために、保管用のカバーをかけましょう。このとき、ビニール製ではなく、不織布(ふしょくふ)などでできた通気性の良いカバーを選ぶことが絶対条件です。
不織布製のカバーは、ホコリや光を防ぎながらも空気を通すため、湿気がこもるのを防ぎます。市販されている防虫剤がセットになったタイプのカバーや、防虫効果のある薬剤が練り込まれたカバーを利用すると、防虫対策も同時にできて一石二鳥です。カバーを選ぶ際は、コートの丈に合った長さのものを選び、裾が折れ曲がったりしないように注意しましょう。
クローゼット内は間隔をあける
最後のポイントは、クローゼット内の収納方法です。ぎゅうぎゅう詰めの状態で保管すると、風通しが悪くなって湿気がこもりやすくなるだけでなく、衣類同士が擦れてシワや生地の傷みの原因になります。
コートを保管する際は、隣の衣類との間にこぶし一つ分以上の間隔をあけるように心がけましょう。これにより、クロー-ゼット内に空気の通り道ができ、カビや湿気を防ぐことができます。また、定期的にクローゼットの扉を開けて換気したり、除湿剤を置いたりすることも、保管環境を良好に保つために効果的です。
衣替えの際に、もう着ない服を整理してスペースを確保することも、大切なコートを守ることに繋がります。
コートは自宅で洗濯できる?
クリーニングに出すのが基本とはいえ、「このコート、家で洗えたら手軽なのに…」と考えたことがある方もいるでしょう。素材や作りによっては自宅で洗濯できるコートもありますが、それには正しい知識と慎重な判断が必要です。失敗して大切なコートを台無しにしないために、基本をしっかり押さえておきましょう。
まずは洗濯表示を確認する
コートが自宅で洗えるかどうかを判断するための最も重要な手がかりは、内側についているタグの「洗濯表示(取扱い絵表示)」です。2016年12月から国際規格に合わせた新しい表示に変わっており、記号の意味を正しく理解することが第一歩です。
主に確認すべきは、以下の記号です。
- 洗い方(桶のマーク):
- 桶に水が入っているマーク: 家庭用洗濯機で洗えます。桶の中の数字は、水の温度の上限を示します(例:「40」なら40℃以下)。
- 桶の下に線が1本: 「弱い洗濯」が必要です。洗濯機の「弱水流」「手洗い」「ドライ」などのコースを選びます。
- 桶の下に線が2本: 「非常に弱い洗濯」が必要です。最もデリケートなコースを選びます。
- 桶に手を入れているマーク: 「手洗い」のみ可能です。洗濯機は使えません。
- 桶に×がついているマーク: 「家庭での洗濯禁止」。水洗いは一切できません。このマークがある場合は、迷わずクリーニングに出しましょう。
- 漂白(三角のマーク):
- 無地の三角: 塩素系・酸素系どちらの漂白剤も使えます。
- 三角に斜線: 酸素系漂白剤のみ使えます。
- 三角に×: すべての漂白剤が使用禁止です。
- 乾燥(四角のマーク):
- 四角に〇: タンブル乾燥(乾燥機)が可能です。〇の中の点で温度(・は低温、・・は高温)を示します。
- 四角に〇で×: タンブル乾燥禁止です。乾燥機にかけると、縮みや型崩れの大きな原因になります。
- 四角に縦線: 吊り干しが推奨されます。
- 四角に横線: 平干しが推奨されます。
- ドライクリーニング(丸のマーク):
- 丸にP: 石油系溶剤でのドライクリーニングが可能です。
- 丸にF: パークロロエチレン及び石油系溶剤でのドライクリーニングが可能です。
- 丸にW: ウェットクリーニング(プロによる水洗い)が可能です。
- 丸に×: ドライクリーニング禁止です。
「家庭での洗濯禁止(桶に×)」のマークがあるコートは、絶対に自宅で洗わないでください。
自宅で洗濯できるコート・できないコート
洗濯表示を確認した上で、一般的に自宅での洗濯に向いているコートと、絶対に避けるべきコートの具体例を挙げます。
【自宅で洗濯できる可能性が高いコート】
- 素材: ポリエステル、ナイロン、綿(ウォッシャブル加工のもの)、アクリルなど、化学繊維や比較的丈夫な植物繊維が中心。
- デザイン: ダウンジャケット(中綿がポリエステルのものも含む)、モッズコート、キルティングコートなど、比較的シンプルな作りのもの。
- 注意点: ダウンジャケットは、中の羽毛が偏らないように特別な干し方が必要です。また、撥水加工などは洗濯で効果が落ちる可能性があります。
【自宅での洗濯はNG!クリーニングに出すべきコート】
- 素材:
- ウール、カシミヤ、アンゴラなどの獣毛素材: 水に濡れると繊維のキューティクルが開いて絡み合い、著しく縮んでフェルト化してしまいます。元に戻すことはほぼ不可能です。
- シルク、レーヨン、キュプラ: 水に弱く、縮み、色落ち、光沢の喪失、輪ジミなどが起こりやすい非常にデリケートな素材です。
- 皮革、スエード、ムートン: 水で硬化したり、シミになったり、カビが生えたりします。専門的なケアが必須です。
- リアルファー: 毛皮がゴワゴワになり、抜け毛の原因になります。
- デザイン・作り:
- 芯地やパッドが多く使われているテーラードコートやチェスターコート: 表地と芯地の収縮率が違うため、型崩れ(気泡のような凹凸ができる「ブク」)が起きます。
- 裏地が異素材(特にレーヨンやキュプラ)のもの: 表地と裏地の収縮率の違いで、つっぱりや歪みが生じます。
- ビジューやスパンコールなどの装飾が多いもの: 洗濯中に取れたり、生地を傷つけたりする恐れがあります。
結論として、ほとんどの冬物主力コート(ウールコート、高級素材のコート、本格的な作りのトレンチコートなど)は自宅での洗濯には向いていません。「洗えるかも?」と少しでも迷ったら、無理をせずプロに任せるのが賢明です。失敗した時の代償は、クリーニング代よりもはるかに大きくなります。
おすすめの宅配クリーニングサービス3選
ここでは、数ある宅配クリーニングの中から、特にコートのクリーニングで評価が高く、実績のあるサービスを3社厳選して紹介します。それぞれの特徴を比較し、ご自身のニーズに合ったサービスを見つけてください。
(※料金やサービス内容は変更される可能性があるため、ご利用の際は必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。)
サービス名 | 料金体系の特徴 | コート1点あたりの目安 | 保管サービス | こんな人におすすめ |
---|---|---|---|---|
① リネット (Lenet) | 会員制(プレミアム会員/通常会員)。1点から注文可能。 | 約1,900円~ | あり(有料オプション) プレミアムクローク | 品質とスピードを両立させたい人。1点からでも気軽に頼みたい人。 |
② 白洋舍 | 1点ごとの料金設定。高品質なコースが充実。 | 約2,420円~(素材・コースによる) | あり(有料オプション) | 大切な高級ブランドのコートを安心して任せたい人。品質を最優先する人。 |
③ カジタク | パック料金制が基本。保管付きパックがお得。 | 約1,500円~(10点パック利用時) | あり(パック料金に込み) 最長9ヶ月無料 | 複数点をまとめてお得に出したい人。無料の長期保管サービスを利用したい人。 |
① リネット
「リネット」は、会員数50万人を突破した業界最大手の宅配クリーニングサービスです。品質の高さと利便性の両立に定評があります。
- 特徴:
- 1点から注文可能: パック料金制ではなく、衣類1点ごとに料金が設定されているため、コート1着だけでも気軽に頼めます。
- プレミアム会員制度: 月額または年額の会費を支払うプレミアム会員になると、クリーニング料金が割引になるほか、最短翌日届けの「お急ぎ便」、段ボール無料、送料無料の条件緩和など、多くの特典を受けられます。
- 高品質なクリーニング: 全品無料でシミ抜きを行うほか、リネット独自の「プレミアム仕上げ」では、衣類に合わせた最適な洗い方と、熟練スタッフによる手仕上げで風合いを蘇らせます。
- 安心保証: 万が一の仕上がり不満時には無料で再仕上げ、事故があった際には再取得価格の100%を補償するなど、保証制度が充実しています。
- 料金(プレミアム会員の場合):
- コート: 1,947円(税込)~
- ダウンジャケット: 3,267円(税込)~
- 保管オプション「プレミアムクローク」: 1点あたり月額110円(税込)~
- こんな人におすすめ:
- 宅配クリーニングを初めて利用する人
- コート1~2点だけなど、少ない点数をクリーニングしたい人
- 仕上がりの品質はもちろん、スピーディーな対応を求める人
参照: リネット公式サイト
② 白洋舍
1906年創業の「白洋舍」は、日本のクリーニング業界をリードしてきた老舗です。その歴史に裏打ちされた高い技術力と信頼性が最大の魅力で、宮内庁御用達としても知られています。
- 特徴:
- 卓越した技術力: 素材やデザインに応じて「標準コース」「ローヤルクリーニング」「クリスタルクリーニング」といった複数のコースを用意。特にローヤルやクリスタルは、熟練の職人が一点一点手作業で仕上げる最高品質のクリーニングです。
- 高級ブランド・特殊素材に強い: デリケートなカシミヤやシルク、扱いの難しい皮革製品なども安心して任せられます。ブランドごとの特性を熟知したケアが期待できます。
- 店舗と宅配の連携: 全国に広がる店舗網と「らくらく宅配便」という宅配サービスを展開。ライフスタイルに合わせて利用方法を選べます。
- 充実のオプション: 撥水加工、防虫・防ダニ加工など、衣類を長持ちさせるためのオプションが豊富に揃っています。
- 料金(らくらく宅配便・標準コースの場合):
- コート(ウール・カシミヤなど): 2,420円(税込)~
- ダウンジャケット: 3,410円(税込)~
- 保管サービス: 別途料金にて提供
- こんな人におすすめ:
- カシミヤやブランド物など、絶対に失敗したくない大切な一着を預けたい人
- 料金よりも、とにかく仕上がりの品質を最優先したい人
- 長年の実績と信頼性を重視する人
参照: 白洋舍公式サイト
③ カジタク
「カジタク」は、イオングループが提供する家事代行サービスの一環で、宅配クリーニングも人気です。分かりやすいパック料金と無料の長期保管サービスが大きな特徴です。
- 特徴:
- お得なパック料金: 「保管付きクリーニング 6点パック」「10点パック」など、点数固定のパック料金が基本。点数が多くなるほど1点あたりの単価が安くなるため、家族の衣類などをまとめて出すのに最適です。
- 最長9ヶ月の無料保管: 全てのパックに最長9ヶ月間の無料保管サービスが含まれています。温度・湿度が管理された専用倉庫で保管してくれるため、自宅のクローゼットがスッキリし、カビや虫食いの心配もありません。
- シンプルな料金体系: パック料金なので、ダウンジャケットや装飾付きの衣類でも追加料金がかからないのが魅力です(一部対象外品あり)。料金計算が非常にシンプルで分かりやすいです。
- イオングループの安心感: 大手企業が運営しているという安心感も大きなポイントです。
- 料金:
- 保管付きクリーニング 6点パック: 11,880円(税込)~(1点あたり1,980円)
- 保管付きクリーニング 10点パック: 15,400円(税込)~(1点あたり1,540円)
- こんな人におすすめ:
- コートだけでなく、冬物衣類を5点以上まとめてクリーニングしたい人
- 無料の長期保管サービスを最大限に活用して、収納スペースを確保したい人
- 料金体系が分かりやすいサービスを求めている人
参照: カジタク公式サイト
まとめ
今回は、コートのクリーニングに関する料金相場から頻度、時期、お店の選び方、保管方法までを網羅的に解説しました。
最後に、大切なポイントをまとめます。
- 料金相場: コート1着あたり1,500円~5,000円以上と幅広く、素材によって大きく変動します。宅配クリーニングのパック料金を利用すると、1点あたりの単価を抑えられる場合があります。
- 日数: 店舗型で3~7日、宅配型で7~14日が目安。繁忙期はさらに長引くため注意が必要です。
- 頻度と時期: 「シーズンオフ(4月~5月)に1回」が基本です。この時期は割引が多く、仕上がりも丁寧な傾向にあります。汚れが付いたらシーズン中でもすぐに出しましょう。
- 出す前の確認: 「ポケットの中身」「シミ・汚れ・ほつれ」「付属品の点数」の3点は、トラブル防止のために必ずチェックしてください。
- お店の選び方: 安さだけでなく、「品質」「オプション」「保管サービス」などを総合的に比較し、信頼できるお店を選びましょう。店舗型と宅配型のメリット・デメリットを理解し、自分のライフスタイルに合った方を選ぶことが重要です。
- 保管方法: クリーニングから戻ってきたら、ビニールを外して厚みのあるハンガーにかけ替え、陰干ししてから通気性の良いカバーをかけて保管することが、コートを長持ちさせる秘訣です。
コートは決して安い買い物ではありません。正しい知識を持って定期的にお手入れをすることで、その価値を長く保つことができます。この記事を参考に、あなたの大切なコートが来シーズンも最高の状態で活躍できるよう、最適なクリーニングを実践してみてください。