スーツのクリーニング料金相場は?出す頻度や仕上がり日数を解説

スーツのクリーニング料金相場は?、出す頻度や仕上がり日数を解説

大切な仕事道具であり、自分を表現する一部でもあるスーツ。常に清潔で美しい状態を保つことは、ビジネスパーソンとしての信頼感や自己肯定感を高める上で非常に重要です。しかし、「スーツのクリーニングはどれくらいの頻度で出せばいいの?」「料金はいくらくらいかかるんだろう?」といった疑問や、「そもそも自宅で洗ってはいけないのか?」という悩みをお持ちの方も少なくないでしょう。

スーツはデリケートな素材と複雑な構造で作られているため、適切なケアをしなければ、型崩れや生地の傷みを引き起こし、寿命を縮めてしまう可能性があります。クリーニングは、単に汚れを落とすだけでなく、スーツ本来のシルエットや風合いを保ち、長く愛用するための不可欠なメンテナンスなのです。

この記事では、スーツのクリーニングに関するあらゆる疑問に答えるべく、適切な頻度から料金相場、仕上がりまでの日数、クリーニングの種類、そして仕上がりを格段に良くするオプション加工まで、網羅的に解説します。さらに、クリーニングに出す前のチェックポイントや、返ってきた後の正しい保管方法、日常のお手入れのコツまで、スーツを長持ちさせるための知識を詳しくご紹介します。

この記事を最後まで読めば、あなたのスーツに最適なクリーニング方法がわかり、大切な一着をいつまでも美しく保つことができるようになるでしょう。

スーツのクリーニングは必要?自宅で洗濯できる?

デリケートな素材を保護、スーツの複雑な構造を維持、油性の汚れを効果的に落とす

そもそも、スーツは必ずクリーニングに出さなければならないのでしょうか。最近では「ウォッシャブルスーツ」も増えており、自宅での洗濯を検討する方もいるかもしれません。しかし、結論から言えば、ほとんどのスーツはプロのクリーニングに任せるのが最善の選択です。その理由と、ウォッシャブルスーツとの違いについて詳しく見ていきましょう。

基本的にはクリーニングに出すのがおすすめ

一般的なスーツのクリーニングを推奨する理由は、主に「素材」「構造」「汚れの種類」の3つの観点から説明できます。

第一に、スーツに使われる素材は非常にデリケートである点です。高級なスーツほど、ウール、カシミヤ、シルクといった天然繊維が使用されています。これらの素材は、水に濡れると繊維が膨張し、乾く過程で縮んだり、硬くなったりする性質があります。家庭用の洗濯機で水洗いをしてしまうと、生地の滑らかな風合いや光沢が失われ、元には戻らないダメージを与えてしまうリスクが非常に高いのです。また、スーツの裏地に使われるキュプラなども水に弱い素材であり、表地と裏地の収縮率が違うことで、スーツ全体のシルエットが崩れる「型崩れ」の直接的な原因となります。

第二に、スーツの複雑な構造が挙げられます。ジャケットには、美しい立体的なシルエットを保つために、芯地や肩パッドといった副資材が内部に組み込まれています。これらは表地とは異なる素材で作られており、水洗いによって剥がれたり、変形したりすることがあります。一度、芯地がよれたり型崩れしたりすると、家庭でのアイロンがけで修正するのはほぼ不可能です。プロのクリーニングでは、こうした構造を熟知した上で、型崩れを最小限に抑える特殊な機械やプレス技術を用いて仕上げるため、美しいシルエットを維持できます。

第三に、家庭では落としきれない汚れに対応できるという点です。スーツに付着する汚れには、汗や飲みこぼしなどの「水溶性の汚れ」と、皮脂や排気ガス、食べ物の油などの「油溶性の汚れ」があります。家庭での洗濯は基本的に水溶性の汚れを落とすのが得意ですが、油溶性の汚れは苦手です。一方、クリーニングの基本である「ドライクリーニング」は、有機溶剤を使って洗濯するため、この油溶性の汚れを効果的に分解して落とすことができます。目には見えなくても、着用するたびに皮脂などの油溶性の汚れは蓄積しており、これらが酸化すると黄ばみや悪臭の原因となります。定期的なドライクリーニングは、こうした見えない汚れを取り除き、スーツを清潔に保つために不可欠なのです。

これらの理由から、大切なスーツの性能を最大限に引き出し、長く愛用するためには、専門知識と設備を持つクリーニング店に任せることが最も賢明な判断と言えるでしょう。

自宅で洗濯できるウォッシャブルスーツとは

近年、機能性を重視した「ウォッシャブルスーツ」が人気を集めています。これはその名の通り、家庭の洗濯機で洗うことを前提に作られたスーツです。

ウォッシャブルスーツは、主にポリエステルなどの化学繊維で作られています。化学繊維は水に強く、縮みや型崩れが起こりにくい特性を持っています。また、内部の芯地や縫製にも水に耐えられる工夫が施されており、家庭での洗濯を可能にしています。

ウォッシャブルスーツのメリット

  • 経済的: クリーニング代を節約できます。特に夏場など汗をかきやすい季節には、気軽に洗濯できるため衛生的かつ経済的です。
  • 手軽さ: 汚れたり汗をかいたりした際に、クリーニング店に持ち込む手間なく、自宅でいつでも洗えます。
  • 速乾性: 化学繊維は速乾性に優れているものが多く、洗濯後比較的早く乾くため、翌日に着用することも可能です。

ウォッシャブルスーツのデメリットと注意点
一方で、ウォッシャブルスーツにもデメリットや注意すべき点があります。

  • 風合いや高級感: 一般的に、ウールなどの天然繊維に比べて生地の風合いや光沢が劣る傾向にあります。重要な商談やフォーマルな場には不向きな場合もあります。
  • 耐久性: 洗濯を繰り返すことで、撥水性などの機能が低下したり、生地が摩耗したりする可能性があります。一般的なスーツに比べて寿命が短い傾向にあることは否めません。
  • 洗濯の手間: 「洗濯機で洗える」といっても、何の手入れもなしに放り込んで良いわけではありません。型崩れを防ぐために、ジャケットやスラックスをきれいに畳んで必ず洗濯ネットに入れ、「手洗いコース」や「ドライコース」などの弱水流で洗う必要があります。洗剤も、生地へのダメージが少ないおしゃれ着洗い用の中性洗剤を使用しましょう。
  • 脱水と乾燥: 脱水は1分以内など短時間で済ませ、シワを防ぎます。乾燥機の使用は縮みや型崩れの大きな原因となるため絶対に避け、風通しの良い場所で陰干しするのが基本です。
  • アイロンがけ: 洗濯後は必ずシワができます。特にパンツのセンタープレス(中央の折り目)は消えてしまうため、着用前にはアイロンがけが必須です。この手間を考えると、必ずしも「手軽」とは言い切れない側面もあります。

ウォッシャブルスーツは、日々のローテーション用や、汗を大量にかく夏場の対策としては非常に有効な選択肢です。しかし、その特性を正しく理解し、適切な方法で洗濯・手入れをすることが前提となります。そして、ここぞという場面で着用する大切な一着は、やはりプロのクリーニングに任せるのが安心です。

スーツをクリーニングに出す適切な頻度

スーツをクリーニングに出す適切な頻度

スーツをクリーニングに出す最適な頻度は、季節や着用状況によって大きく異なります。頻繁すぎると生地を傷める原因になりかねませんが、間隔が空きすぎると汚れが定着してしまいます。ここでは、一般的な目安をご紹介します。

夏用スーツの頻度目安

夏は気温と湿度が高く、知らず知らずのうちに大量の汗をかいています。汗は水分だけでなく、塩分や皮脂を含んでおり、これらを放置すると生地の変色(黄ばみ)や悪臭、カビの発生、さらには生地そのものを傷める原因となります。

そのため、夏用スーツのクリーニング頻度は、冬用スーツに比べて高くなります。

  • 外回りなど汗をかく機会が多い場合: 2週間に1回程度
  • 内勤が中心で、あまり汗をかかない場合: 3週間〜1ヶ月に1回程度

着用回数で言うと、10回程度着用したら一度クリーニングに出すのが一つの目安です。特に、襟元や脇、背中などは汗を吸収しやすい部分です。目に見える汚れがなくても、汗の成分は繊維の奥に蓄積しています。夏場はこまめなクリーニングを心がけ、汗によるダメージを防ぎましょう。後述する「汗抜き加工」をオプションで付けると、より効果的です。

冬用スーツの頻度目安

冬は夏に比べて汗をかく量が少ないため、クリーニングの頻度は低くなります。冬用スーツはツイードやフランネルなど厚手の生地が多く、頻繁なクリーニングはかえって生地の風合いを損なうことにも繋がりかねません。

  • 一般的な着用頻度の場合: シーズン中に1〜2回

具体的には、シーズン終わりに衣替えで長期保管する前に必ず1回クリーニングに出すのが基本です。着用中に目立つ汚れが付かなければ、シーズン中のクリーニングは必須ではありません。ただし、忘年会や新年会などで飲食の機会が増え、タバコや食べ物の臭いが付いてしまった場合は、その都度検討するのが良いでしょう。

冬場は、クリーニングに出すよりも、後述する日常のお手入れ(ブラッシングなど)が特に重要になります。日々のケアでホコリや軽い汚れを落とし、生地の状態を良好に保つことで、クリーニングの回数を適切にコントロールできます。

汚れや汗が気になるときは都度出す

上記の頻度はあくまで一般的な目安です。季節を問わず、スーツに明らかな汚れやシミが付いてしまった場合は、すぐにクリーニングに出すのが鉄則です。

  • 食べこぼし・飲みこぼし: コーヒー、ワイン、醤油、ソースなどのシミは、時間が経つほど繊維の奥深くに浸透し、酸化して落としにくくなります。付いてしまったら、できるだけ早く専門家であるクリーニング店に持ち込みましょう。その際、「いつ、何が付いたか」を正確に伝えることが、シミをきれいに落とすための重要なポイントです。
  • 強い臭い: タバコや焼肉の臭いが染み付いてしまった場合、日常のケアで取れなければクリーニングに出すのが効果的です。
  • 雨に濡れた: 雨水には、大気中のホコリや排気ガスなどの不純物が含まれています。濡れたまま放置すると、シミやカビ、臭いの原因になります。タオルで優しく水分を拭き取り、風通しの良い場所で完全に乾かしても、ごわつきや臭いが残る場合はクリーニングに出しましょう。

汚れやダメージは、放置すればするほど深刻化します。シーズンや前回のクリーニングからの期間に関わらず、「気になったときがクリーニングのタイミング」と心得ておくと、スーツを常に良い状態で保つことができます。

スーツのクリーニング料金相場

スーツのクリーニング料金は、依頼する店舗の形態によって大きく異なります。「近所の安いお店」から「高品質な専門店」まで選択肢は様々です。ここでは、「店舗型」「宅配型」「高級店」の3つのタイプに分けて、それぞれの料金相場を詳しく解説します。

店舗型クリーニング店の料金相場

駅前や商店街でよく見かける、最も一般的なクリーニング店です。個人経営の店舗から全国展開する大手チェーンまで様々ですが、料金体系は比較的似ています。

店舗型クリーニングの料金は、アイテムごとに設定されているのが基本です。スーツの場合は、「上下セット」で出すか、「ジャケットのみ」「スラックスのみ」で出すかによって料金が変わります。

アイテム 料金相場(税込) 備考
スーツ上下セット 1,500円~3,000円 セット割引が適用され、単品で出すよりお得になるのが一般的です。
ジャケットのみ 900円~1,800円 単品での料金設定になります。
スラックス・パンツのみ 600円~1,200円 ジャケット同様、単品での料金設定です。

※上記の料金はあくまで目安であり、地域(都心部か地方か)や店舗の規模、素材(カシミヤ混など)によって変動します。また、セール期間中であれば、さらに安くなることもあります。

大手チェーン店は、比較的リーズナブルな価格設定で、キャンペーンなども頻繁に行われる傾向があります。一方、個人経営の店は、店主の技術力が高く、一点一点丁寧に対応してくれる場合がありますが、料金はやや高めに設定されていることもあります。

上下セット

スーツは、後述する理由からジャケットとスラックスを必ず一緒にクリーニングに出すべきです。そのため、多くの店舗では「スーツ上下セット」の料金が設定されており、単品でそれぞれ出すよりも1〜2割ほど割安になっています。料金の目安は1,500円〜3,000円あたりがボリュームゾーンです。

ジャケットのみ

ジャケット単品でのクリーニングも可能で、料金相場は900円〜1,800円程度です。ただし、ジャケットだけを繰り返しクリーニングすると、スラックスとの色合いや風合いに差が出てしまう可能性があるため、基本的にはセットで出すことを強く推奨します。

スラックス・パンツのみ

スラックスやパンツは、ジャケットに比べて汚れやすく、着用頻度も高いことから、単品でクリーニングに出したいと考える方もいるでしょう。料金相場は600円〜1,200円程度です。夏場など、汗をかきやすいスラックスだけを頻繁に洗いたい気持ちもわかりますが、やはり色合いの差を避けるため、できるだけジャケットとタイミングを合わせて出すのが理想です。

宅配クリーニングの料金相場

近年利用者が急増しているのが、自宅にいながらクリーニングの依頼から受け取りまで完結する「宅配クリーニング」です。

宅配クリーニングの最大の特徴は、「パック料金」が主流である点です。これは、「衣類5点で〇〇円」「10点で〇〇円」といったように、点数で料金が決まるシステムです。スーツの上下は、それぞれ1点ずつ、合計2点としてカウントされるのが一般的です。

プラン 料金相場(税込) 1点あたりの料金目安 備考
5点パック 7,000円~12,000円 1,400円~2,400円 スーツ上下(2点)+コート(1点)+シャツ(2点)などで利用。
10点パック 12,000円~20,000円 1,200円~2,000円 点数が多くなるほど1点あたりの単価は安くなる傾向にあります。
15点パック以上 20,000円~ 1,100円~ 家族の衣類や季節の変わり目にまとめて出すと非常にお得です。

宅配クリーニングは、スーツだけでなく、コートやダウンジャケットといったクリーニング代が高額になりがちなアイテムも同じ1点としてカウントされることが多いため、組み合わせ次第では店舗型よりも大幅に安くなるケースがあります。

送料は、パック料金に含まれていたり、「〇〇円以上で送料無料」と設定されていたりすることが多いです。また、多くのサービスで最長9ヶ月〜1年程度の「無料保管サービス」が付帯しており、シーズンオフの衣類を預かってもらえるため、クローゼットの省スペース化にも繋がり、非常に人気があります。

高級クリーニング店の料金相場

オーダースーツやハイブランドのスーツなど、特に大切な一着を任せたい場合に選択肢となるのが、高品質な仕上がりを専門とする高級クリーニング店です。

料金は一般的なクリーニング店よりもかなり高額で、スーツ上下セットで5,000円〜15,000円、あるいはそれ以上になることも珍しくありません。なぜこれほど料金が高いのか、その理由はサービス内容にあります。

  • 完全手仕上げ: 機械による流れ作業ではなく、熟練の職人が一点一点の状態を見極め、最適な洗い方やプレスを行います。
  • 高品質な溶剤: ドライクリーニングに使用する溶剤を毎回ろ過・蒸留し、常にクリーンな状態で使用するため、洗い上がりのサッパリ感や独特の石油臭のなさが格別です。
  • ウェットクリーニングの標準化: 汗汚れなどを落とす高度な技術「ウェットクリーニング」を標準サービスとして提供している店舗もあります。
  • 細部へのこだわり: ボタンをアルミホイルで保護したり、装飾品を取り外して洗浄後に付け直したりと、細部まで丁寧にケアします。
  • 充実したリペア・メンテナンス: ほつれ直しやボタン付けはもちろん、より高度な修理にも対応してくれる場合があります。

料金は高いですが、スーツ本来の美しさを最大限に引き出し、最高の状態で長持ちさせたいと考えるならば、その価値は十分にあると言えるでしょう。

クリーニングの仕上がりにかかる日数

Webサイトで申し込み、衣類の発送、工場に到着・検品、クリーニング・仕上げ、工場から発送、自宅に到着

クリーニングに出してからスーツが手元に戻ってくるまでの日数は、急な出張や冠婚葬祭の予定がある場合には特に気になるところです。ここでも「店舗型」と「宅配型」で大きく異なります。

店舗型クリーニングの場合

店舗型クリーニングの最大のメリットは、そのスピード感にあります。

  • 通常仕上げ: 2日〜3日後の受け取りが一般的です。例えば、月曜日に出すと水曜日か木曜日に仕上がります。
  • 即日・翌日仕上げ: 多くのチェーン店では、スピード仕上げのサービスを提供しています。午前中の早い時間に持ち込めば、その日の夕方〜夜に受け取れる「即日仕上げ」や、翌日に受け取れる「翌日仕上げ」が可能です。ただし、追加料金がかかる場合や、会員限定のサービスであることも多いので、事前に確認が必要です。
  • 特殊な加工やシミ抜きがある場合: 汗抜き加工や撥水加工といったオプションを追加したり、複雑なシミ抜きを依頼したりすると、通常より時間がかかります。この場合は5日〜1週間程度を見ておくと安心です。

また、衣替えのシーズンである4月〜5月や10月〜11月はクリーニング店が最も混み合う繁忙期です。この時期は、通常よりも仕上がり日数が長くなる可能性があるため、余裕を持って依頼することをおすすめします。

宅配クリーニングの場合

宅配クリーニングは、店舗に持ち込む手間がない分、仕上がりまでにはある程度の時間が必要です。日数の計算には、「衣類の往復の輸送期間」が含まれることを理解しておく必要があります。

  • 一般的な仕上がり日数: 最短でも5日〜1週間、通常は10日〜2週間程度を見ておくと良いでしょう。

宅配クリーニングの基本的な流れは以下のようになります。

  1. Webサイトで申し込み: 集荷キットが送られてくるか、自身で梱包材を用意します。
  2. 衣類の発送: 宅配業者が自宅まで集荷に来てくれます。
  3. 工場に到着・検品: クリーニング工場に衣類が到着し、一点ずつ状態がチェックされます。
  4. クリーニング・仕上げ: 最適な方法でクリーニングとプレスが行われます。
  5. 工場から発送: 仕上がった衣類が梱包され、発送されます。
  6. 自宅に到着: 衣類を受け取ります。

この一連のプロセスには、どうしても物理的な輸送時間と作業時間がかかるため、店舗型のような即日仕上げは不可能です。

ただし、「リネット」のように最短2日後にお届けといった非常にスピーディーなサービスを提供している業者もあります(エリア限定の場合あり)。急ぎの場合は、各サービスの公式サイトで対応エリアや最短お届け日数を確認しましょう。

また、前述の「保管サービス」を利用する場合は、クリーニング完了後、指定した時期(例:秋口)まで数ヶ月間預かってもらい、希望のタイミングで返送してもらうことになります。

スーツクリーニングの主な2つの種類

スーツクリーニングの主な2つの種類

クリーニング店で行われるスーツの洗浄方法は、主に「ドライクリーニング」と「ウェットクリーニング」の2種類です。それぞれ得意な汚れが異なるため、その特性を理解しておくことで、より効果的にスーツをきれいにすることができます。

ドライクリーニング|油性の汚れに強い

ドライクリーニングは、その名の通り水を使わずに、「有機溶剤」と呼ばれる石油系の液体で衣類を洗う方法です。ほとんどのクリーニング店で、スーツやコート、セーターなどの水洗いに適さない衣類に対して行われる、最も標準的な洗浄方法です。

得意な汚れ(油溶性の汚れ):

  • 皮脂汚れ: 襟や袖口に付着する黄ばみの原因。
  • 食べ物の油: ドレッシング、バター、揚げ物など。
  • 化粧品: ファンデーション、口紅など。
  • 油性インク: ボールペンなど。
  • 排気ガスやタバコのヤニ

メリット:

  • 型崩れや縮みが起きにくい: 水を使わないため、ウールなどのデリケートな繊維への影響が少なく、スーツのシルエットを保ったまま洗浄できます。
  • 油汚れをしっかり落とす: 有機溶剤が油を溶かし出すため、家庭洗濯では落としきれない油溶性の汚れに非常に効果的です。

デメリット:

  • 水溶性の汚れは落ちにくい: 汗、醤油、ジュース、ワインといった水溶性の汚れは、ドライクリーニングだけでは完全に除去することが難しいです。
  • 特有の臭い: 溶剤の管理が不十分な場合、仕上がった衣類に石油系の臭いが残ることがあります。

一般的なスーツのクリーニングは、このドライクリーニングを指します。目に見えない皮脂汚れなどを定期的にリセットし、生地の劣化を防ぐために重要です。

ウェットクリーニング|汗など水性の汚れに強い

ウェットクリーニングは、本来ドライクリーニングすべき衣類を、専門的な技術と特殊な洗剤を用いて水で洗う方法です。これは、家庭で行う「水洗い」とは全く異なり、「クリーニング業法」にもとづくプロの技術です。

得意な汚れ(水溶性の汚れ):

  • 汗の成分(塩分・アンモニアなど): 臭いや黄ばみ、ごわつきの根本原因。
  • 飲み物のシミ: コーヒー、お茶、ジュースなど。
  • 食べ物のシミ: 醤油、ソースなど。
  • 泥はね

メリット:

  • 汗汚れに絶大な効果: 夏場にかいた大量の汗や、長年蓄積した汗の成分を根本から洗い流すことができます。仕上がりのサッパリ感は格別です。
  • 臭いや黄ばみを強力に除去・予防: ドライクリーニングでは落としきれない水溶性の汚れを除去することで、不快な臭いや頑固な黄ばみを解消し、将来的な発生も防ぎます。

デメリット:

  • 料金が高い: 専門的な技術と手間がかかるため、通常のドライクリーニング料金に加えて、500円~2,000円程度の追加料金が発生します。
  • 時間がかかる: 丁寧な作業が必要なため、通常のクリーニングよりも仕上がりまでに日数がかかる場合があります。
  • 技術力が必要: 高度な技術が求められるため、全てのクリーニング店で対応しているわけではありません。

特に汗をかきやすい夏場のスーツや、臭いが気になるとき、飲み物をこぼしてしまったときなどは、ウェットクリーニングを依頼するのが非常に効果的です。ドライクリーニングとウェットクリーニングを季節やスーツの状態で使い分けることが、スーツを常に最高のコンディションに保つ秘訣と言えるでしょう。

仕上がりを良くするクリーニングのオプション加工

汗抜き加工、折り目加工、撥水加工、防虫・防カビ加工

クリーニング店では、基本的な洗浄に加えて、様々な「オプション加工」が用意されています。これらを賢く利用することで、クリーニングの仕上がりを格段に向上させ、スーツをより快適に、そして長持ちさせることができます。ここでは代表的なオプション加工を紹介します。

汗抜き加工

「汗抜き加工」は、ドライクリーニングの工程で、汗などの水溶性の汚れを落としやすくする特殊な洗剤(ソープ)を溶剤に加える加工です。前述の「ウェットクリーニング」が衣類を直接水で洗うのに対し、汗抜き加工はあくまでドライクリーニングの範囲内で行われます。

  • 効果: ドライクリーニングだけでは落としきれない汗の成分を除去し、臭いや黄ばみ、生地のごわつきを防ぎます。ウェットクリーニングほど強力ではありませんが、手軽に汗対策ができるのが魅力です。
  • おすすめなケース: 夏場のスーツや、汗をかいたと感じたスーツをクリーニングに出す際には、ぜひ追加したいオプションです。特にシーズンオフで長期保管する前に行うと、保管中の黄ばみ発生リスクを大幅に低減できます。
  • 料金相場: 1点あたり300円〜1,000円程度が目安です。

折り目加工(シロセット加工)

「折り目加工」は、スラックスのセンタープレス(中央の折り目)を、雨に濡れたり、長時間の着用でも消えにくくする特殊な加工です。ウール繊維が持つ特性を利用し、専用の薬剤をラインに沿って噴霧し、熱を加えて形状記憶させる「シロセット加工」が有名です。

  • 効果: 常にシャープで美しい折り目をキープできます。だらしない印象を与えず、日々のアイロンがけの手間も省けます。一度加工すると、その効果は次回のクリーニングまで持続します。
  • おすすめなケース: 外回りや出張が多いビジネスパーソン、雨の日でもきれいにスーツを着こなしたい方、アイロンがけが苦手な方には特におすすめです。
  • 料金相場: スラックス1本あたり500円〜1,500円程度が目安です。

撥水加工

「撥水加工」は、繊維一本一本をシリコン樹脂などでコーティングし、水や油を弾くようにする加工です。衣類の通気性を損なうことなく、表面に付着した水分が玉のようになって転がり落ちるようになります。防水加工とは異なり、生地の織り目を塞ぐわけではないため、蒸れにくいのが特徴です。

  • 効果: 突然の雨からスーツを守るだけでなく、食事の際にうっかり飲み物やソースをこぼしてしまっても、シミになりにくいという大きなメリットがあります。汚れが付着しにくくなるため、スーツをきれいに保つ効果も期待できます。
  • おすすめなケース: 梅雨の時期や天候が不安定な季節、会食の機会が多い方におすすめです。効果は永久的ではないため、シーズンごとなど定期的に加工すると良いでしょう。
  • 料金相場: 1点あたり500円〜1,500円程度が目安です。

防虫・防カビ加工

ウールやカシミヤといった動物性(タンパク質)の天然繊維は、衣類を食べる害虫(ヒメカツオブシムシなど)の大好物です。シーズンオフでスーツをクローゼットに長期保管する際には、防虫対策が欠かせません

  • 効果: クリーニングで汚れを完全に落とした後、繊維に虫が嫌う忌避効果のある薬剤をコーティングします。これにより、保管中の虫食いのリスクを大幅に減らすことができます。また、湿気が原因で発生するカビを防ぐ効果も期待できる加工もあります。
  • おすすめなケース: 衣替えでスーツを半年以上保管する前には、必須とも言えるオプションです。市販の防虫剤と併用することで、より万全な対策ができます。
  • 料金相場: 1点あたり300円〜800円程度が目安です。

これらのオプションは、スーツの状態や着用シーン、悩みに合わせて組み合わせることで、より満足度の高い仕上がりを実現します。クリーニングに出す際に、店員さんに相談してみるのも良いでしょう。

スーツをクリーニングに出す前の7つのチェックポイント

ポケットの中身を空にする、シミや汚れの場所を店員に伝える、ボタンのゆるみや生地のほつれを確認する、ジャケットとパンツは必ずセットで出す、付属品は外しておく、オプション加工を検討する、仕上がり予定日を確認する

クリーニングの効果を最大限に引き出し、予期せぬトラブルを避けるために、スーツを店に持ち込む前にいくつか確認しておくべき大切なポイントがあります。この一手間が、仕上がりの質を左右すると言っても過言ではありません。

① ポケットの中身を空にする

これは最も基本的かつ重要なチェックポイントです。ジャケットの内ポケット、外ポケット、スラックスの前後左右のポケット、すべての中身を完全に出してください

  • 忘れがちなもの: ボールペン、名刺、レシート、小銭、鍵、USBメモリ、ティッシュ、ガムなど。
  • リスク:
    • 紛失・破損: 大切なものや個人情報が入ったままクリーニングに出すと、紛失のリスクがあります。
    • 衣類へのダメージ: ボールペンのインクが漏れて広範囲のシミになったり、ティッシュが溶けて繊維に絡みついたりすると、取り除くのが非常に困難になります。場合によっては、追加料金が発生したり、元に戻らなくなったりする最悪のケースも考えられます。
    • クリーニング機械の故障: 硬いものが機械に引っかかり、故障の原因となることもあります。

店側でも検品は行いますが、最終的な責任は持ち主である自分にあります。出す直前に、必ず全てのポケットを裏返して確認する習慣をつけましょう。

② シミや汚れの場所を店員に伝える

もしスーツにシミや目立つ汚れがある場合は、受付の際に「いつ、どこに、何が付いた汚れか」をできるだけ具体的に店員さんに伝えましょう

  • : 「昨日の昼食で、胸元にミートソースが付きました」「3日前にコーヒーをこぼしてしまい、右の太ももあたりです」

この情報があるのとないのとでは、シミ抜きの成功率が大きく変わります。汚れの種類によって、使用する薬剤や処置の方法が全く異なるためです。原因がわかれば、プロは最適な方法でアプローチできます。時間が経てば経つほどシミは落ちにくくなるため、正直に伝えることが重要です。どこに汚れがあるか指し示し、受付票にメモしてもらうなどして、確実に情報を共有しましょう。

③ ボタンのゆるみや生地のほつれを確認する

クリーニングの洗浄工程では、衣類が機械の中で回転するため、ある程度の物理的な力が加わります。そのため、元々ゆるんでいたボタンが取れてしまったり、小さなほつれが悪化したりする可能性があります。

事前にスーツ全体をチェックし、ボタンがぐらついていないか、縫い目にほつれがないかを確認しておきましょう。もし見つけたら、店員さんに伝えてください。多くのクリーニング店では、有料でボタンの付け直しや簡単な修理(リペア)サービスを提供しています。事前に依頼しておくことで、クリーニング中のトラブルを防ぎ、より完璧な状態でスーツを返却してもらえます。

④ ジャケットとパンツは必ずセットで出す

スーツは、必ずジャケットとスラックス(またはスカート)を一緒にクリーニングに出してください。これはスーツを長持ちさせるための鉄則です。

片方だけをクリーニングに出すことを繰り返すと、洗浄やプレス、経年による微妙な色合いの変化や風合いの差が生じてしまいます。例えば、ジャケットだけを3回クリーニングし、スラックスは1回しか出していない場合、上下で見た目の印象が異なり、スーツとして着用できなくなってしまう可能性があります。

たとえ片方しか汚れていないと感じても、必ず上下セットで出すことで、色や風合いの均一性を保ち、スーツとしての寿命を延ばすことができます。

⑤ 付属品は外しておく

ラペルホールに付けるピンズ(ラペルピン)、袖口のカフスボタン(カフリンクス)、ポケットチーフ、ベストに付けるチェーンなど、スーツに付けている付属品は、クリーニングに出す前にすべて外しておきましょう。

これらの付属品は、洗浄中に破損したり、紛失したりするリスクがあります。また、硬い金属などが他の衣類やクリーニング機械を傷つけてしまう可能性もゼロではありません。トラブルを未然に防ぐためにも、必ず外してから預けるようにしてください。

⑥ オプション加工を検討する

自分のスーツの状態や、これからの着用シーンを考えて、必要なオプション加工がないか事前に検討しておきましょう。

  • 「夏に向けて汗対策をしたい」→ 汗抜き加工
  • 「雨の日でもパリッとしたズボンを履きたい」→ 折り目加工
  • 「梅雨の時期や食事の機会に備えたい」→ 撥水加工
  • 「衣替えで長期間しまう」→ 防虫・防カビ加工

事前に決めておくことで、受付でスムーズに注文できますし、店員さんに「こういう悩みがあるのですが、おすすめの加工はありますか?」と相談するきっかけにもなります。

⑦ 仕上がり予定日を確認する

最後に、受付が完了したら、必ず仕上がり予定日を口頭と受付票(預かり伝票)の両方で確認しましょう。

「来週の出張で使いたい」「週末の結婚式に間に合わせたい」といった具体的な予定がある場合は、その旨をはっきりと伝え、間に合うかどうかを確認することが重要です。特に、オプション加工を付けたり、繁忙期に依頼したりする場合は、通常よりも日数がかかることを念頭に置いて、余裕を持ったスケジュールで依頼しましょう。

クリーニングから返ってきたスーツの正しい保管方法

ビニールカバーはすぐに外す、厚みのあるハンガーにかける、風通しの良い場所で保管する

クリーニングできれいになったスーツも、その後の保管方法を間違えると台無しになってしまいます。せっかくの仕上がりをキープし、スーツの寿命を延ばすために、返却後の正しい取り扱い方法を徹底しましょう。

ビニールカバーはすぐに外す

クリーニング店でかけられているビニールカバーは、店舗から自宅へ持ち帰るまでの間のホコリよけや汚れ防止が目的であり、保管用のものではありません。自宅に帰ったら、すぐに外してください

ビニールカバーをかけたままクローゼットに保管すると、以下のような問題が発生します。

  • 湿気がこもる: ビニールは通気性が全くないため、内部に湿気がこもりやすくなります。湿気はカビや悪臭の最大の原因です。
  • 化学物質の影響: ドライクリーニングで使用された溶剤が完全に揮発せず、ビニール内に留まってしまうことがあります。これが生地の変色を引き起こす可能性があります。
  • 静電気の発生: 静電気でホコリを引き寄せ、かえってスーツを汚してしまうこともあります。

ビニールを外した後は、すぐにクローゼットにしまわず、次に説明するように風通しの良い場所で少し休ませるのが理想です。保管する際は、ホコリが気になるなら通気性の良い不織布製のカバーに付け替えましょう。

厚みのあるハンガーにかける

クリーニング店で付いてくる細い針金ハンガーは、あくまで一時的なものです。そのまま長期間使用すると、スーツの自重で肩の部分にハンガーの跡が付き、型崩れの大きな原因となります。

スーツを保管する際は、必ず肩のラインに合った、厚みのあるしっかりとしたハンガーにかけ替えましょう。木製のハンガーは、見た目が良いだけでなく、湿気を吸収してくれる効果も期待できるため特におすすめです。ジャケットの肩幅に合ったサイズを選ぶことが、美しいシルエットを維持する上で非常に重要です。

スラックスも、二つ折りにしてジャケットと同じハンガーにかけるのではなく、クリップ付きのスラックス専用ハンガーで裾を上にして吊るすのが理想です。これにより、スラックス自体の重みで自然にシワが伸び、センタープレスもきれいに保たれます。

風通しの良い場所で保管する

スーツの保管場所として最も重要なのは「風通し」です。

  • 陰干しで湿気を飛ばす: ビニールを外し、適切なハンガーにかけ替えたら、すぐにクローゼットにしまうのではなく、直射日光の当たらない風通しの良い部屋で数時間〜半日ほど陰干ししましょう。これにより、クリーニング工程で残ったわずかな湿気や溶剤の臭いを完全に飛ばすことができます。
  • クローゼットは詰め込みすぎない: クローゼットの中に衣類をぎゅうぎゅうに詰め込むのは避けましょう。衣類同士が密着していると、空気が循環せず湿気がたまりやすくなります。スーツとスーツの間には、最低でも指2本分くらいの隙間を空けることを意識してください。
  • 防虫剤・除湿剤を活用する: 長期保管する場合は、クローゼット内に防虫剤や除湿剤を設置しましょう。防虫剤は、空気より重い成分が下に広がるタイプが多いため、衣類の上に設置するのが効果的です。使用期限を守り、定期的に交換することも忘れないようにしましょう。

これらのひと手間をかけることで、クリーニングしたての美しい状態を長くキープすることができます。

スーツを長持ちさせる日常のお手入れ方法

着用後はブラッシングでホコリを落とす、シワが気になるときはスチーマーをかける、1日着たら1日以上休ませる

クリーニングはスーツのメンテナンスに不可欠ですが、その効果を長持ちさせ、クリーニングに出す頻度を適切に保つためには、日々のセルフケアが非常に重要です。着用後の少しの習慣が、スーツの寿命を大きく左右します。

着用後はブラッシングでホコリを落とす

一日の終わりにスーツを脱いだら、必ずブラッシングする習慣をつけましょう。これは最も手軽で効果的なお手入れ方法です。

目には見えなくても、屋外ではホコリ、花粉、排気ガスの粒子などがスーツに付着しています。これらを放置すると、繊維の奥に入り込んで生地を傷めたり、虫食いの原因になったりします。

  • 方法: 洋服ブラシ(馬毛などの柔らかいものがおすすめ)を使い、生地の目に沿って、上から下へ優しくなでるようにブラッシングします。襟元や肩、ポケットのフラップ周りなど、ホコリがたまりやすい場所は特に丁寧にかけましょう。
  • 効果:
    • ホコリや汚れを除去する。
    • 繊維の流れを整え、生地本来の光沢を蘇らせる。
    • 繊維の絡まりを防ぎ、毛玉(ピリング)の発生を抑制する。

この数分のブラッシングが、スーツの見た目と寿命に大きな差を生みます。

シワが気になるときはスチーマーをかける

着用によってできてしまった肘や膝の裏、背中のシワには、スチームアイロンや衣類スチーマーをかけるのが効果的です。

アイロンを直接生地に押し当てるプレスは、テカリの原因になったり、生地を傷めたりするリスクがあります。一方、スチーマーは、高温の蒸気を当てることで繊維をほぐし、シワを伸ばす方法です。

  • 方法: スーツをハンガーにかけたまま、シワが気になる部分にスチーマーを少し離して(1〜2cm程度)当てます。生地を軽く引っ張りながらスチームをかけると、よりきれいにシワが伸びます。
  • 効果:
    • 生地を傷めずにシワを伸ばせる。
    • 高温のスチームには、タバコや汗の臭いを飛ばす消臭効果や、除菌効果も期待できます。

スチームをかけた後は、湿気が完全に乾くまで、風通しの良い場所で休ませてからクローゼットにしまいましょう。

1日着たら1日以上休ませる

一度着用したスーツは、最低でも1日、できれば2〜3日休ませるのが理想です。毎日同じスーツを着続けるのは避けましょう。

ウールなどの天然繊維には、湿気を吸ったり吐いたりする性質と、変形しても元に戻ろうとする「復元力」があります。一日着用したスーツは、体から発散された汗などの湿気を含み、繊維が疲労した状態になっています。

ハンガーにかけて休ませることで、

  • 繊維がゆっくりと湿気を放出する。
  • 繊維の復元力によって、細かなシワが自然に回復する。
  • 生地への負担が軽減され、型崩れや傷みを防ぐ。

これを実践するためには、最低でも3着以上のスーツを用意し、ローテーションで着回すことが重要です。結果的に、一着一着への負担が減り、すべてのスーツを長持ちさせることができます。

スーツのクリーニング店の選び方

クリーニング店には、昔ながらの「店舗型」と、近年主流になりつつある「宅配型」の2つの選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが良いかは個人のライフスタイルや何を重視するかによって変わってきます。

店舗型クリーニング(個人店・チェーン店)

近所や通勤経路にある、直接衣類を持ち込むタイプのクリーニング店です。大手チェーン店と個人経営の店舗に大別されます。

メリット:

  • 直接相談できる: シミの原因や場所、仕上がりの希望などを店員さんと対面で直接相談できる安心感があります。細かな要望も伝えやすいでしょう。
  • スピード対応: 「即日仕上げ」や「翌日仕上げ」など、急ぎの要望に対応できるのが最大の強みです。急にスーツが必要になった場合に非常に頼りになります。
  • 1点から気軽に頼める: スーツ1着だけ、スラックス1本だけといったように、点数を気にせず気軽に依頼できます。
  • 送料がかからない: 当然ですが、持ち込み・引き取りなので送料は発生しません。

デメリット:

  • 持ち運びの手間: スーツやコートなど、かさばる衣類を店舗まで持って行き、仕上がったらまた取りに行くという手間と時間がかかります。
  • 営業時間の制約: 店舗の営業時間内に行く必要があるため、仕事が忙しい人にとっては利用しにくい場合があります。

こんな人におすすめ:

  • 急いでクリーニングを仕上げてほしい人
  • シミや汚れについて、専門家と直接対話しながら相談したい人
  • クリーニングに出したい衣類が1〜2点と少ない人
  • 自宅や職場の近くに、信頼できるクリーニング店がある人

宅配クリーニング

インターネット経由で注文し、宅配業者が自宅まで集荷・配達してくれるサービスです。

メリット:

  • 圧倒的な利便性: 24時間いつでもスマホやPCから注文でき、重い衣類を運ぶ手間が一切ありません。自宅から一歩も出ずに完結します。
  • パック料金でお得に: 「5点パック」「10点パック」など、まとめて出すことで1点あたりの単価が割安になる料金体系が魅力です。スーツだけでなく、冬物のコートやダウンも一緒に出すと非常にお得です。
  • 保管サービス: シーズンオフの衣類を、次のシーズンまで最適な環境で預かってくれる無料の長期保管サービスを提供している業者が多くあります。クローゼットのスペースを有効活用できます。
  • 高品質なサービス: 大手の宅配クリーニングは、最新設備を備えた大規模な工場でクリーニングを行うため、品質が安定している傾向にあります。シミ抜き無料などのサービスも充実しています。

デメリット:

  • 時間がかかる: 往復の輸送期間があるため、仕上がりまでには最短でも数日〜1週間程度かかります。即日仕上げには対応できません。
  • 直接相談できない: 基本的に対面でのやり取りがないため、細かな要望は注文フォームに記入するか、電話やメールで問い合わせる必要があります。
  • 少量だと割高になることも: 1点だけクリーニングしたい場合、パック料金の最低点数を満たせないか、送料を含めると割高になる可能性があります。

こんな人におすすめ:

  • 仕事や育児で忙しく、クリーニング店に行く時間がない人
  • 衣替えで、スーツやコートなどをまとめてクリーニングに出したい人
  • クローゼットが狭く、シーズンオフの衣類の保管場所に困っている人
  • 近くに信頼できるクリーニング店がない人
項目 店舗型クリーニング 宅配クリーニング
手間 持ち運び・引き取りが必要 自宅で完結(梱包・発送の手間はあり)
スピード 最短即日〜対応可能 最短でも数日〜1週間程度
料金体系 1点ごとの料金設定 パック料金が主流(まとめてお得)
相談のしやすさ 対面で直接相談できる 電話やメール、チャット
保管サービス 基本的になし 多くのサービスで提供(無料の場合も)

【タイプ別】おすすめのスーツクリーニングサービス4選

ここでは、数ある宅配クリーニングサービスの中から、特徴の異なる4つのサービスを厳選してご紹介します。料金やサービス内容は変更される可能性があるため、利用を検討する際は必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。

① リネット

「リネット」は、会員数50万人を超える、国内最大級の宅配クリーニングサービスです。「速さ」と「手軽さ」を両立させているのが最大の特徴で、忙しいビジネスパーソンから絶大な支持を得ています。

  • 特徴: 専用アプリで注文から集荷依頼、進捗確認まで完結する手軽さが魅力。有料のプレミアム会員になると、最短2日後のお届け(対象エリア限定)、送料無料、朝イチ・夜イチ便の利用、安心保証など、多くの特典を受けられます。スーツのクリーニングも1点から依頼可能です。
  • 料金目安: スーツ上下セットで1,980円(税込)〜(プレミアム会員の場合)。
  • 仕上がり日数: 最短2日後〜。
  • 保管サービス: あり(有料オプション「プレミアムクローク」)。
  • こんな人におすすめ: とにかく早く仕上げたい人、1点からでも気軽に宅配クリーニングを利用したい人、アプリでスマートに管理したい人。

参照:リネット公式サイト

② カジタク

「カジタク」は、大手流通グループであるイオングループが提供する家事代行サービスの一環です。大手ならではの安心感と、分かりやすいパック料金が特徴です。

  • 特徴: 「衣類クリーニング6点パック」や「10点パック」といったパック料金制で、最長9ヶ月間の無料保管サービスが標準で付帯しています。スーツだけでなく、かさばるコートやダウンも同じ1点としてカウントされるため、衣替えの際にまとめて出すと非常にお得です。イオングループの品質基準で管理されており、満足できない場合は再仕上げにも対応してくれます。
  • 料金目安: 10点パックの場合、1点あたり1,650円(税込)。スーツ上下は2点としてカウント。
  • 仕上がり日数: 最短5営業日〜(保管なしの場合)。
  • 保管サービス: あり(無料・最長9ヶ月)
  • こんな人におすすめ: 衣替えで複数の衣類をまとめてクリーNINGしたい人、クローゼットをすっきりさせたい人、大手ブランドの安心感を重視する人。

参照:カジタク公式サイト

③ せんたく便

「せんたく便」は、宅配クリーニングのパック料金制をいち早く導入した、業界のパイオニア的存在です。シンプルな料金体系とリーズナブルな価格が魅力です。

  • 特徴: 「5点パック」と「10点パック」が基本で、それぞれに「最速パック(保管なし)」と「保管パック」があります。シミ抜き、ボタン付け、毛玉取り、再仕上げが無料で付帯しており、コストパフォーマンスに優れています。全国どこでも送料無料(一部地域を除く)なのも嬉しいポイントです。
  • 料金目安: 5点最速パックの場合、1点あたり1,596円(税込)。スーツ上下は2点としてカウント。
  • 仕上がり日数: 最短5営業日〜(最速パックの場合)。
  • 保管サービス: あり(保管パックを選択)
  • こんな人におすすめ: とにかく分かりやすく、リーズナブルに利用したい人、オプション料金を気にせず基本的なケアを任せたい人。

参照:せんたく便公式サイト

④ キレイナ

「キレイナ」は、オーダースーツやハイブランドの衣類、ウェディングドレスなど、他店で断られるような特殊な衣類を専門とする、高品質なクリーニングサービスです。

  • 特徴: 機械的な流れ作業ではなく、アパレル経験の豊富な職人が一点一点の状態を見極め、最適な「ウェットクリーニング」と手仕上げで対応します。他社ではオプションとなるような高度なシミ抜きや、細かな修復なども基本料金内で行われることがあります。料金は個別見積もりで高額になりますが、大切な一着を最高の状態で蘇らせたい場合には、これ以上ない選択肢です。
  • 料金目安: スーツ上下セットで8,800円(税込)〜。素材やデザインにより個別に見積もり。
  • 仕上がり日数: 2週間〜1ヶ月程度が目安。
  • 保管サービス: あり(有料)。
  • こんな人におすすめ: オーダースーツやインポートブランドのスーツを持っている人、他店でシミが落ちなかった経験がある人、料金よりも仕上がりの質を最優先したい人。

参照:キレイナ公式サイト

サービス名 特徴 料金目安(スーツ上下) 仕上がり日数目安 保管サービス
リネット スピードと手軽さ、アプリで完結 約1,980円~(プレミアム会員) 最短2日 あり(有料)
カジタク イオングループの安心感、パック料金 10点パックで1点あたり約1,650円 最短5営業日 あり(無料)
せんたく便 シンプルで分かりやすいパック料金 5点パックで1点あたり約1,596円 最短5営業日 あり(パック料金に含む)
キレイナ 高級品・特殊品に特化した高品質 約8,800円~(個別見積もり) 2週間~ あり(有料)

まとめ

今回は、スーツのクリーニングに関する料金相場から頻度、種類、そしてスーツを長持ちさせるための様々な知識について、幅広く解説しました。

最後に、この記事の重要なポイントを振り返ってみましょう。

  • クリーニングの必要性: スーツはデリケートな素材と構造で作られているため、型崩れや生地の傷みを防ぎ、長く愛用するためにはプロのクリーニングが不可欠です。
  • 適切な頻度: 夏用スーツは2週間に1回、冬用スーツはシーズンに1〜2回を目安とし、汚れや汗が気になった場合はその都度出すのが理想です。
  • 料金相場: 店舗型ではスーツ上下で1,500円〜3,000円、宅配クリーニングのパック料金では1点あたり1,200円〜2,400円程度が目安です。
  • クリーニングの種類: 油性汚れに強い「ドライクリーニング」と、汗汚れに強い「ウェットクリーニング」の違いを理解し、スーツの状態で使い分けることが重要です。
  • オプション加工: 「汗抜き」「折り目」「撥水」「防虫」などのオプションを賢く利用することで、仕上がりが格段に向上し、スーツがより快適になります。
  • 出す前と返却後のケア: 出す前のポケット確認や汚れの申告、そして返却後のビニールを外して適切なハンガーで保管するといったひと手間が、スーツの寿命を大きく左右します。
  • 日常のお手入れ: 着用後のブラッシング、スチーマーによるシワ伸ばし、ローテーションでスーツを休ませる習慣が、クリーニングの効果を長持ちさせます。
  • 店の選び方: スピードと対面相談を重視するなら「店舗型」、手軽さや保管サービス、複数まとめて出すお得さを求めるなら「宅配型」と、自分のライフスタイルに合わせて選ぶことが大切です。

スーツのクリーニングは、単なる出費ではなく、自分への投資です。適切なメンテナンスを行うことで、スーツは常にあなたを魅力的に見せ、ビジネスシーンでの自信を支えてくれるでしょう。この記事が、あなたのスーツライフをより豊かにするための一助となれば幸いです。