リノベーション物件の探し方と注意点|後悔しないための全知識

リノベーション物件の探し方と注意点、後悔しないための全知識

理想の住まいを手に入れる方法として、新築や中古物件の購入だけでなく、「リノベーション」という選択肢が注目を集めています。リノベーション物件は、新築よりも費用を抑えつつ、自分らしいデザインや間取りを実現できる可能性があるため、多くの人にとって魅力的な選択肢です。

しかし、一言でリノベーション物件といっても、その種類や探し方、注意点は多岐にわたります。知識がないまま進めてしまうと、「思ったようなデザインにできなかった」「予想外の費用がかかってしまった」といった後悔につながることも少なくありません。

この記事では、リノベーション物件の基本的な知識から、具体的な探し方、そして購入後に後悔しないための注意点まで、網羅的に解説します。リノベーション済み物件と、中古物件を購入して自分でリノベーションする場合、それぞれのメリット・デメリットを詳しく比較し、あなたがどちらを選ぶべきかの指針を示します。

この記事を読めば、リノベーション物件探しの全体像を把握し、自分に最適な方法で理想の住まいを実現するための第一歩を踏み出せるようになります。

リノベーション物件とは?

リノベーション物件という言葉を耳にする機会は増えましたが、その正確な意味や「リフォーム」との違いを理解している人は意外と少ないかもしれません。まずは、リノベーションの基本的な定義と、物件の主な種類について理解を深めましょう。このセクションを読むことで、リノベーションという選択肢の輪郭がはっきりと見えてきます。

リフォームとの違い

「リノベーション」と「リフォーム」は、どちらも既存の建物に手を加える工事を指すため混同されがちですが、その目的と工事の規模において明確な違いがあります。この違いを理解することが、理想の住まいづくりにおける最初の重要なステップです。

項目 リフォーム(Reform) リノベーション(Renovation)
目的 原状回復・修復 新たな付加価値の創造・性能向上
意味 マイナスをゼロの状態に戻す マイナスやゼロの状態からプラスを生み出す
工事内容の例 ・壁紙やフローリングの張り替え
・古くなったキッチンや浴室の設備交換
・外壁の塗り直し
・間取りの変更(壁の撤去・新設)
・水道管や排水管などインフラの更新
・耐震補強や断熱性能の向上
・デザイン性の大幅な変更
工事の規模 小規模〜中規模 大規模

リフォーム(Reform)とは、主に老朽化した部分を修繕し、新築に近い状態に回復させることを指します。「元に戻す」という意味合いが強く、例えば、汚れた壁紙を新しく張り替えたり、壊れたキッチン設備を同等の新品に交換したりする工事がこれにあたります。目的は、機能の回復や見た目の改善であり、住まいの基本的な構造や間取りには手を加えません。

一方、リノベーション(Renovation)は、既存の建物に大規模な工事を行い、新たな機能や価値を付け加えることを目的とします。これは「刷新」や「革新」といった意味合いを持ち、住む人のライフスタイルに合わせて間取りを大胆に変更したり、建物の性能そのものを向上させたりする工事が含まれます。

具体的には、壁を取り払って広いリビングダイニングキッチン(LDK)を創出したり、使っていなかった和室をワークスペースに変更したりといった間取りの変更が代表例です。さらに、目に見えない部分、例えば給排水管の交換、断熱材の追加による省エネ性能の向上、耐震補強による安全性の確保などもリノベーションの範疇に入ります。

このように、リフォームがマイナスの状態をゼロに戻す「修復」であるのに対し、リノベーションはゼロの状態からプラスを生み出す「創造」の側面が強いといえるでしょう。どちらが良い・悪いというわけではなく、住まいに対する目的や解決したい課題に応じて、適切な手法を選ぶことが重要です。

リノベーション物件は2種類ある

リノベーションを前提とした住まい探しには、大きく分けて2つのアプローチが存在します。それは、「リノベーション済み物件」を購入する方法と、「中古物件を購入して自分でリノベーション」する方法です。どちらを選ぶかによって、費用、手間、入居までの期間、そして何より住まいの自由度が大きく異なります。それぞれの特徴を理解し、自分のライフスタイルや価値観に合った方法を見つけることが、後悔しない物件選びの鍵となります。

リノベーション済み物件

リノベーション済み物件とは、不動産会社やリノベーション会社などが中古物件を買い取り、リノベーション工事を完了させたうえで販売している物件のことです。購入者はすでに完成された空間を見て、納得したうえで購入を決定できます。

このタイプの物件の最大の魅力は、手間がかからない点です。デザインの打ち合わせや工事業者の選定、工事の進捗管理といった煩雑なプロセスを経ることなく、新築同様にきれいな内装の物件にすぐに入居できます。特に、仕事や育児で忙しく、リノベーションのプロセスに時間を割くのが難しい人にとっては、非常に合理的な選択肢といえるでしょう。

また、物件価格にはリノベーション費用が含まれているため、資金計画が立てやすいというメリットもあります。中古物件を購入してからリノベーションを行う場合、物件価格とリノベーション費用の両方を考慮する必要があり、総額が変動するリスクがありますが、リノベーション済み物件であれば、提示された価格で購入できるため安心です。

ただし、デザインや間取りはすでに決定されているため、購入者の好みを反映させることは基本的にできません。万人受けするような標準的なデザインで仕上げられていることが多く、個性的な住まいを求める人には物足りなく感じる可能性があります。さらに、壁の中や床下など、目に見えない部分の工事がどの程度丁寧に行われたかを確認するのが難しいという側面も持ち合わせています。

中古物件を購入してリノベーション

もう一方の方法が、自分で中古物件を探して購入し、その後に自分の理想に合わせてリノベーション会社に設計・施工を依頼するというアプローチです。この方法は、住まいづくりにおける自由度が最も高い選択肢です。

最大のメリットは、間取り、デザイン、素材、設備に至るまで、すべてを自分の思い通りに計画できる点にあります。「壁一面を本棚にしたい」「アイランドキッチンを中心とした開放的なLDKが欲しい」「趣味の自転車を飾る土間スペースが欲しい」といった、ライフスタイルに根差した具体的な要望を形にできます。

また、物件の選択肢が格段に広がるのも大きな魅力です。リノベーション済み物件はまだ市場に数が限られていますが、中古物件であれば、都心部から郊外まで、マンションから戸建てまで、膨大なストックの中から立地や広さ、建物の条件を優先して選ぶことができます。

さらに、設計段階から工事の過程まで、すべてを自分の目で確認できるため、安心感が高いといえます。どのような材料が使われ、どのような工事が行われているかを把握できるため、建物の品質に対する信頼性が高まります。

その反面、入居までには多くの時間と手間がかかります。物件探しと並行してリノベーション会社を選び、設計の打ち合わせを重ね、工事期間を経て、ようやく入居となります。一般的には、物件探しから入居まで半年から1年程度の期間が必要です。また、完成形は図面やパースでしか確認できないため、実際の空間をイメージする力も求められます。

このように、リノベーション物件には2つの異なるアプローチがあります。次の章では、それぞれのメリットとデメリットをさらに詳しく掘り下げていきます。

【種類別】リノベーション物件のメリット・デメリット

リノベーション済み物件のメリット、リノベーション済み物件のデメリット、中古物件を購入してリノベーションするメリット、中古物件を購入してリノベーションするデメリット

リノベーション物件の2つの種類、「リノベーション済み物件」と「中古物件を購入してリノベーション」。どちらにも一長一短があり、どちらが自分に合っているかは、あなたの価値観やライフプランによって決まります。ここでは、それぞれのメリットとデメリットを具体的に比較検討し、客観的な視点からその特性を明らかにしていきます。このセクションを通じて、自分にとって最適な選択肢を見極めるための判断材料を整理しましょう。

リノベーション済み物件のメリット

手間をかけずに、きれいで快適な住まいを比較的手頃な価格で手に入れたいと考える人にとって、リノベーション済み物件は非常に魅力的な選択肢です。ここでは、その具体的なメリットを4つのポイントに分けて詳しく解説します。

新築より費用を抑えられる

リノベーション済み物件の最大のメリットの一つは、同等の立地や広さの新築物件と比較して、購入費用を大幅に抑えられることです。一般的に、同じエリアであれば新築物件の価格よりも2割から3割程度安く購入できるケースが多いとされています。

この価格差が生まれる理由は、建物の価値にあります。不動産の価格は「土地」と「建物」の価格で構成されていますが、建物部分は築年数の経過とともに価値が減少していきます。リノベーション済み物件は、基礎となる建物が中古であるため、建物自体の価格が新築に比べて低く設定されています。内装や設備は新品同様に刷新されていながらも、トータルの価格は中古物件の市場価格をベースにしているため、コストパフォーマンスが高くなるのです。

この価格的なメリットにより、同じ予算でもより都心に近い立地や、より広い面積の物件を検討できるようになります。新築では予算的に手が届かなかったエリアでも、リノベーション済み物件であれば選択肢に入る可能性があるのです。

内装や設備が新しくきれい

リノベーション済み物件は、販売前に内装や住宅設備が一新されています。壁紙やフローリングはもちろん、キッチン、浴室、トイレといった水回りの設備も最新のものに交換されていることがほとんどです。

中古物件をそのまま購入する場合、内装の汚れや設備の古さが気になることがありますが、リノベーション済み物件ならその心配はありません。購入した瞬間から、新築物件と遜色ない清潔で快適な空間で生活を始めることができます

特に、デザイン性の高いリノベーションが施された物件も増えており、プロのデザイナーが手掛けたおしゃれな空間に住めることも魅力の一つです。自分で一からデザインを考えるのは大変だと感じる人にとっては、すでに完成された美しいデザインの中から好みのものを選ぶだけでよいという手軽さは、大きなメリットといえるでしょう。

完成した状態を見てから購入できる

「中古物件を購入してリノベーション」する場合、完成形は図面やCGパースでしか確認できません。そのため、「実際に完成してみたら、思っていたイメージと違った」というミスマッチが起こるリスクが常に伴います。

しかし、リノベーション済み物件は、すでに工事が完了しているため、実際の部屋の日当たりや広さ、素材の質感、動線などを自分の目で直接確認してから購入を判断できます。写真や図面だけでは伝わりにくい空間のスケール感や雰囲気を体感できるため、購入後の「こんなはずじゃなかった」という後悔を避けることができます。

内覧時に家具の配置をシミュレーションしたり、窓からの眺めを確認したりすることで、入居後の生活を具体的にイメージしやすいのも大きな利点です。この安心感は、特に大きな買い物である住宅購入において、非常に重要な要素です。

購入後すぐに入居できる

リノベーション済み物件は、売買契約とローンの手続きが完了すれば、すぐにでも入居が可能です。中古物件を購入してリノベーションを行う場合、物件の引き渡し後に設計の打ち合わせや工事が始まるため、入居までには数ヶ月から1年近くかかることも珍しくありません。

その間、現在の住まいの家賃と住宅ローンの支払いが重なる「二重払い」の期間が発生する可能性もあります。リノベーション済み物件であれば、工事期間を待つ必要がないため、引っ越しのスケジュールが立てやすく、仮住まいの心配や家賃の二重払いのリスクもありません

子どもの進学や転勤など、引っ越しの時期が決まっている人にとっては、このスピーディーさは計り知れないメリットとなるでしょう。

リノベーション済み物件のデメリット

手軽さと安心感が魅力のリノベーション済み物件ですが、その反面、自由度の低さや見えない部分への不安といったデメリットも存在します。購入を検討する際には、これらの点を十分に理解し、許容できるかどうかを慎重に判断する必要があります。

間取りやデザインを自由に選べない

リノベーション済み物件の最大のデメリットは、間取りやデザイン、内装の仕様がすでに決定されているため、購入者の個別の要望を反映できないことです。販売する側は、より多くの人に受け入れられるように、万人受けする無難なデザインや間取りを採用する傾向があります。

そのため、「リビングをもっと広くしたかった」「書斎が欲しかった」「キッチンの色や素材が好みではない」といった不満が出てくる可能性があります。自分のライフスタイルに完璧にフィットする住まいや、個性を表現した独創的な空間を求める人にとっては、この自由度の低さが大きな制約と感じられるでしょう。

細部にまでこだわりたい人や、ゼロから住まいづくりを楽しみたいという価値観を持つ人には、物足りない選択肢かもしれません。

見えない部分の工事内容が分かりにくい

リノベーション済み物件は、内装が美しく仕上げられているため、一見すると非常に魅力的に映ります。しかし、その美しい壁や床の下に隠された、構造躯体や給排水管、断熱材といった目に見えない部分が、どの程度きちんと施工されているかを確認するのは困難です。

悪質なケースでは、表面的な部分だけをきれいに見せかけ、本来交換が必要な配管をそのままにしていたり、断熱工事が不十分であったりすることもあり得ます。これらの問題は、入居後しばらくしてから水漏れや結露、カビといった形で表面化し、高額な追加修繕費用が必要になるリスクをはらんでいます。

このリスクを軽減するためには、「いつ、誰が、どこまでの範囲を」リノベーションしたのか、詳細な工事履歴や図面、検査記録(インスペクションレポート)などを提示してもらうことが非常に重要です。信頼できる売主かどうかを見極めるためにも、情報開示に誠実に対応してくれるかどうかが一つの判断基準となります。

中古物件を購入してリノベーションするメリット

自分だけの理想の住まいを、細部に至るまでこだわり抜いて創り上げたい。そんな強い想いを持つ人にとって、「中古物件を購入してリノベーション」する方法は、最高の選択肢となり得ます。ここでは、その創造的なプロセスがもたらす大きなメリットについて解説します。

理想の間取りやデザインを実現できる

この方法の最大の魅力は、何といってもその圧倒的な自由度の高さです。既成概念にとらわれず、自分のライフスタイルや価値観を100%反映させた、世界に一つだけの住まいを創り出すことができます。

例えば、

  • 料理好きなら、業務用のコンロを備えた広いアイランドキッチンを中心に。
  • 映画鑑賞が趣味なら、防音設備を施したシアタールームを。
  • 在宅ワークが中心なら、集中できる書斎とリラックスできるリビングを明確に分ける。
  • 小さな子どもがいるなら、将来的に部屋を分割できるような可変性のある間取りに。

このように、家族構成や趣味、働き方の変化に合わせた、オーダーメイドの空間設計が可能です。壁の色や床の素材、照明器具の一つひとつまで、すべて自分の好きなものを選ぶことができます。このプロセス自体を楽しめる人にとっては、住まいづくりが自己表現の場となり、完成したときの満足感は計り知れないものになるでしょう。

物件の選択肢が広がる

「リノベーション済み」という条件で物件を探すと、どうしても選択肢は限られてしまいます。しかし、「中古物件」という広い括りで探せば、その選択肢は飛躍的に増加します。

都心の一等地、緑豊かな郊外、駅近の便利な立地など、まずは「場所」や「環境」を最優先で選ぶことができます。建物の状態が古くても、構造的に問題がなければ、リノベーションによって内装はいくらでも生まれ変わらせることが可能です。「立地は最高だけど、内装が古いから…」と諦めていたような物件も、リノベーションを前提に考えれば、魅力的な候補となり得るのです。

マンションだけでなく、戸建てや少し変わった建物など、物件の種類も多岐にわたります。この幅広い選択肢の中から、自分の理想の暮らしを実現するための「器」を見つけ出す楽しみも、この方法ならではの醍醐味です。

工事の過程を自分で確認できる

リノベーション済み物件では不透明になりがちな、工事の品質。しかし、自分でリノベーションを発注する場合、そのプロセスを自分の目で確かめることができます。

設計段階からリノベーション会社の担当者と密にコミュニケーションを取り、どのような計画で工事が進められるのかを詳細に把握できます。そして、工事が始まれば、現場に足を運び、壁や床で隠れてしまう前の、構造体や配管、断熱材の施工状況などを直接確認することが可能です。

この透明性は、大きな安心感につながります。「見えない部分」の品質を自ら管理できるため、建物の性能に対する信頼性が格段に高まります。将来的なメンテナンスの際にも、どこをどのように工事したかが分かっているため、スムーズに対応できるというメリットもあります。

中古物件を購入してリノベーションするデメリット

理想を追求できる一方で、時間、労力、そして不確実性といった側面も持ち合わせているのが、このアプローチです。メリットだけでなく、デメリットもしっかりと理解したうえで、自分に乗り越えられる課題かどうかを見極めることが重要です。

入居までに時間がかかる

自由度の高さと引き換えに、入居までには相応の時間がかかります。このプロセスは、大きく分けて以下のステップで進行します。

  1. 資金計画・リノベーション会社探し(約1〜2ヶ月)
  2. 物件探し・内覧(約2〜4ヶ月)
  3. 物件の売買契約・ローン申し込み(約1ヶ月)
  4. リノベーションの設計・仕様決定(約2〜3ヶ月)
  5. リノベーション工事(約2〜4ヶ月)
  6. 完成・引き渡し

これらを合計すると、一般的に物件探しを開始してから入居するまでに、短くても半年、長い場合は1年以上かかることも珍しくありません。特に、物件探しや設計の打ち合わせにこだわればこだわるほど、期間は長引く傾向にあります。

この間、現在の住まいの家賃を払い続ける必要があり、住宅ローンの返済が始まると家賃との二重払い期間が発生する可能性も考慮しなければなりません。引っ越しの期限が決まっている人や、すぐに新しい生活をスタートさせたい人にとっては、この時間的な制約が大きなデメリットとなるでしょう。

完成形をイメージしにくい

設計図や内装のサンプル、3Dパースなど、リノベーション会社は完成イメージを伝えるために様々なツールを用意してくれます。しかし、それでも二次元の情報から三次元の空間を正確に想像するのは、専門家でなければ難しい作業です。

「図面で見るより、実際に立ってみると天井が低く感じる」「選んだ床材の色が、部屋全体で見ると暗すぎた」「家具を置いたら、思ったより通路が狭くなってしまった」といった、イメージと現実のギャップが生じるリスクは常にあります。

このギャップを最小限に抑えるためには、リノベーション会社のショールームで実際の素材感を確認したり、似たような事例の写真やVR(バーチャルリアリティ)を見せてもらったりするなど、できるだけ多くの情報を集めて、具体的にイメージを膨らませる努力が求められます。この「想像力」が、満足のいく結果を得るための鍵となります。

あなたはどっち?自分に合ったリノベーション物件の選び方

ここまで、「リノベーション済み物件」と「中古物件を購入してリノベーション」の2つの選択肢について、それぞれのメリット・デメリットを詳しく見てきました。では、具体的にあなたはどちらのタイプに向いているのでしょうか。このセクションでは、それぞれの選択肢がどのような人におすすめなのかを具体的に掘り下げ、あなたが自分に合った最適な道を選ぶための判断基準を提示します。

リノベーション済み物件がおすすめな人

リノベーション済み物件は、手軽さ、スピード、そして安心感を重視する人にとって、非常に合理的な選択肢です。以下のような考え方やライフスタイルの人に特におすすめできます。

  • 時間と手間をかけずに新しい住まいを手に入れたい人
    仕事や家事、育児などで日々忙しく、リノベーションの打ち合わせや現場確認に多くの時間を割くことが難しい人には最適です。物件探しから業者選定、設計、工事監理といった一連の煩雑なプロセスをすべてスキップし、完成された物件を選ぶだけで済みます。「住まいづくり」のプロセスよりも、「快適な暮らし」という結果を早く手に入れたいという価値観を持つ人に向いています。
  • 入居したい時期が決まっている人
    子どもの入学や転勤、現在の住まいの契約更新など、明確なタイムリミットがある場合、入居までの期間が読めない「中古購入+リノベーション」はリスクが伴います。リノベーション済み物件であれば、契約後すぐに入居できるため、スケジュール通りに新生活をスタートさせることができます。計画的に物事を進めたい人にとって、この確実性は大きな魅力です。
  • 資金計画をシンプルに、総額を確定させたい人
    中古物件を購入してリノベーションする場合、物件価格とは別にリノベーション費用がかかり、予期せぬ追加工事で予算が膨らむ可能性もあります。リノベーション済み物件は、リノベーション費用を含んだ価格で販売されているため、購入時に支払う総額が明確です。住宅ローンの手続きも一度で済むことが多く、資金計画が非常にシンプルになります。予算オーバーのリスクを避け、安心して購入を進めたい人におすすめです。
  • デザインや間取りに強いこだわりがない、または選ぶのが苦手な人
    「特に奇抜なデザインは求めていない」「標準的で使いやすい間取りが一番」と考える人にとっては、プロが手掛けた万人受けするデザインの物件は、むしろ好都合です。また、選択肢が多すぎると逆に選べなくなってしまう、というタイプの人にとっても、すでに完成された空間の中から好みのものを選ぶスタイルは心理的な負担が少なくて済みます。専門家が整えてくれた快適な空間を、そのまま受け入れたいという人にはぴったりです。
  • 完成した空間を実際に見てから購入を決めたい慎重な人
    図面やパースだけでは空間をイメージするのが不安だという人にとって、実物を見て判断できる点は何よりの安心材料です。日当たりや風通し、天井の高さ、素材の質感、窓からの景色など、五感で空間を確かめてから購入を決めたいという慎重派の人には、リノベーション済み物件が適しています。購入後の「こんなはずじゃなかった」という失敗を極力避けたい人におすすめです。

中古物件を購入してリノベーションするのがおすすめな人

一方、住まいづくりそのものを楽しみ、自分の理想を徹底的に追求したい人には、「中古物件を購入してリノベーション」する方法が最高の満足感をもたらしてくれるでしょう。以下のような人に特におすすめです。

  • 間取りやデザインに強いこだわりがあり、理想の空間を追求したい人
    「リビングはこのくらいの広さが絶対に欲しい」「キッチンは対面式で、パントリーも必須」「趣味のコレクションを飾るための特別なスペースが欲しい」など、住まいに対する明確なビジョンや譲れないこだわりがある人には、この方法以外に選択肢はないと言っても過言ではありません。自分のライフスタイルや価値観を空間に反映させ、世界に一つだけのオーダーメイドの住まいを創り上げたいという情熱を持つ人に最適です。
  • 住まいづくりのプロセスそのものを楽しみたい人
    どんな空間にしようかと想いを巡らせ、リノベーション会社の担当者と打ち合わせを重ね、少しずつ形になっていく過程に喜びを感じられる人。大変なことも含めて、ゼロから何かを創り上げるクリエイティブな作業を楽しめる人に向いています。完成した家に住むことだけでなく、そこに至るまでのストーリーにも価値を見出せる人にとっては、このプロセスはかけがえのない経験となるでしょう。
  • 立地や周辺環境、建物の選択肢を最優先したい人
    住まい選びにおいて、「内装は後から変えられるが、立地は変えられない」という考え方を重視する人におすすめです。リノベーションを前提とすることで、内装の状態に左右されず、純粋に立地や日当たり、広さ、管理状態といった物件の本質的な価値で選ぶことができます。「リノベーション済み」というフィルターを外すことで、圧倒的に多くの物件が選択肢となり、理想の「場所」を見つけやすくなります。
  • 見えない部分の品質や性能にもこだわりたい人
    見た目のデザインだけでなく、断熱性や気密性、耐震性といった住宅の基本性能にもこだわりたい人。また、給排水管や電気配線といったインフラ部分の更新を自分の目で確認し、安心して長く住み続けたいと考える人。工事の過程を自らチェックし、建物の品質を透明性の高い状態で確保したいという人には、この方法が適しています。
  • 将来的な家族構成の変化などを見越して、可変性のある住まいを望む人
    現在は夫婦二人でも、将来的には子ども部屋が必要になるかもしれない。そんなライフステージの変化に対応できる、柔軟な間取りを計画したい人にもおすすめです。例えば、最初は広いワンルームとして使い、将来は壁を設置して部屋を二つに分けられるような設計も可能です。長期的な視点で、暮らしの変化に合わせて住まいを進化させていきたいと考える人には、自由設計のメリットが最大限に活かされます。

リノベーション物件の探し方【3つの方法】

不動産情報ポータルサイトで探す、リノベーション会社の公式サイトで探す、不動産会社に直接相談する

自分に合ったリノベーションのスタイルが見えてきたら、次はいよいよ具体的な物件探しのステップです。リノベーション物件を探す方法は、主に3つあります。それぞれの方法に特徴があり、メリット・デメリットも異なります。ここでは、各探し方の具体的な手順やコツを解説し、あなたが効率的に理想の物件に出会うための道筋を示します。

① 不動産情報ポータルサイトで探す

最も一般的で、多くの人が最初に利用するのが、SUUMO(スーモ)やLIFULL HOME’S(ライフルホームズ)、athome(アットホーム)といった大手不動産情報ポータルサイトです。これらのサイトは掲載物件数が圧倒的に多く、エリアや価格、広さなど、様々な条件で絞り込み検索ができるため、情報収集の第一歩として非常に有効です。

探し方のポイント:

  • 「リノベーション済み物件」を探す場合:
    多くのポータルサイトには、「こだわり条件」や「フリーワード」検索の機能があります。ここで「リノベーション済」「リフォーム済」「デザイナーズ」といったキーワードにチェックを入れたり、入力したりすることで、該当する物件を効率的に絞り込むことができます。「リフォーム済」とされている物件の中にも、大規模なリノベーションが施されているケースは少なくないため、両方のキーワードで探してみるのがおすすめです。物件詳細ページで、リノベーションの実施時期や工事内容を確認しましょう。
  • 「中古物件を購入してリノベーション」する場合:
    この場合は、リノベーションの有無に関わらず、すべての中古物件が対象となります。まずは立地、広さ、価格といった基本的な条件で物件を絞り込みます。その際、リノベーションに適した物件を見つけるための視点を持つことが重要です。例えば、間取りの変更を考えているなら、壁の撤去が比較的容易な「ラーメン構造」のマンションを探す、築年数が古い物件でも管理状態が良いものを選ぶ、といった視点です。

メリット:

  • 情報量が圧倒的に多い:全国の多種多様な物件情報が網羅されており、相場感を掴むのに役立ちます。
  • 手軽に始められる:スマートフォンやPCから、いつでもどこでも気軽に物件探しをスタートできます。
  • 比較検討が容易:複数の物件を一覧で比較できるため、客観的な判断がしやすいです。

デメリット:

  • 情報の鮮度が低い場合がある:人気の物件は掲載後すぐに申し込みが入ってしまうため、サイト上で「募集中」となっていても、実際には契約済みというケースがあります。
  • リノベーションの質は玉石混交:「リノベーション済み」と一口に言っても、表層的な改修のみの物件から、構造部分まで手を入れた高品質な物件まで様々です。写真や情報だけではその質を見極めるのが難しい場合があります。

② リノベーション会社の公式サイトで探す

デザイン性の高いリノベーションや、物件探しから施工までを一貫して任せたい「ワンストップリノベーション」を検討している場合、リノベーションを専門に手掛ける会社の公式サイトを直接チェックするのも非常に有効な方法です。

これらの会社は、自社で中古物件を仕入れてリノベーションを施した「リノベーション済み物件」を販売しているほか、これからリノベーションを行うことを前提とした「リノベーション向き中古物件」の情報を公開していることがあります。

探し方のポイント:

  • 施工事例から好みのデザインを見つける:まずは各社のウェブサイトに掲載されている豊富な施工事例を見てみましょう。自分の好みに合うデザインテイストの会社を見つけることが、満足度の高いリノベーションにつながります。
  • 「物件紹介」や「for Sale」のページを確認する:多くのリノベーション会社のサイトには、販売中のリノベーション済み物件や、リノベーションに適した中古物件を紹介する専門ページが設けられています。ポータルサイトには掲載されていない、独自の物件が見つかることもあります。
  • イベントやセミナーに参加する:多くのリノベーション会社が、リノベーションの基礎知識を学べるセミナーや、実際の物件を見学できるオープンハウス(見学会)を定期的に開催しています。参加することで、その会社の実力や担当者の雰囲気を知ることができ、具体的な相談にもつながります。

メリット:

  • デザイン性の高い物件に出会える:リノベーションのプロが手掛けているため、デザインや間取りにこだわった質の高い物件が多い傾向にあります。
  • 物件とリノベーションの専門家から話が聞ける:物件情報と同時に、リノベーションに関する専門的なアドバイスも得られます。
  • 仲介手数料が不要な場合がある:会社が売主となっている物件の場合、仲介手数料がかからないため、諸費用を抑えることができます。

デメリット:

  • 物件数が限られる:ポータルサイトに比べると、紹介されている物件の数は限られます。
  • 特定の会社に縛られる可能性がある:その会社で物件を見つけた場合、リノベーションもその会社に依頼することが前提となるケースが多いです。

③ 不動産会社に直接相談する

オンラインでの情報収集と並行して、地域に密着した不動産会社や、リノベーションに強みを持つ不動産会社に直接足を運び、相談するという方法も非常に重要です。特に、希望のエリアが決まっている場合には効果的です。

プロの担当者に希望条件を伝えておくことで、ウェブサイトに掲載される前の「非公開物件」や「未公開物件」を紹介してもらえる可能性があります。これは、売主の事情で大々的に広告を出せない物件や、情報公開の準備中の物件などです。ライバルが少ない状態で、優良物件に出会えるチャンスが広がります。

探し方のポイント:

  • 希望条件を具体的に伝える:エリア、予算、広さといった基本情報だけでなく、「リノベーションでこんな暮らしがしたい」というイメージまで具体的に伝えることで、担当者はより精度の高い物件提案をしてくれます。
  • リノベーションへの理解度を確認する:担当者に「このマンションは壁式構造ですか?」「管理規約で床材の規定はありますか?」といった専門的な質問を投げかけてみましょう。その反応によって、リノベーションに関する知識や経験がどの程度あるかを見極めることができます。
  • 複数の不動産会社と付き合う:不動産会社によって持っている情報や得意なエリアが異なります。1社に絞らず、複数の会社に相談することで、情報収集の網を広げることができます。

メリット:

  • 非公開物件に出会える可能性がある:市場に出回る前の、条件の良い物件情報を得られるチャンスがあります。
  • 地域の情報に精通している:学区や治安、周辺の商業施設など、その地域ならではの細かな情報を提供してもらえます。
  • プロの視点でアドバイスがもらえる:物件の良し悪しだけでなく、リノベーションの観点から見た注意点など、専門的なアドバイスを受けられます。

デメリット:

  • 担当者のスキルや相性に左右される:担当者の提案力や知識、そして自分との相性によって、物件探しの成果が大きく変わってきます。
  • 積極的に動く必要がある:良い関係を築き、良い情報を得るためには、自分からこまめに連絡を取り、希望を伝え続けるといった能動的な姿勢が求められます。

これらの3つの方法を単独で進めるのではなく、ポータルサイトで相場観を養いながら、リノベーション会社の事例で理想を固め、最終的には不動産会社のプロと連携して物件を決定する、といったように組み合わせることで、後悔のない物件探しが実現できるでしょう。

後悔しないための注意点【リノベーション済み物件編】

施工内容(いつ・誰が・どこまで)を確認する、アフターサービスや保証の有無を確認する、建物の管理状態や規約を確認する、耐震基準を満たしているか確認する、住宅ローン控除の条件を確認する

手軽に新しくきれいな住まいが手に入るリノベーション済み物件。しかし、その手軽さの裏には、購入前に必ずチェックすべき重要なポイントがいくつか存在します。見た目の美しさだけに目を奪われず、建物の本質的な価値や将来にわたる安心感をしっかりと見極めることが、後悔しないための鍵です。ここでは、リノベーション済み物件を選ぶ際に絶対に押さえておきたい5つの注意点を詳しく解説します。

施工内容(いつ・誰が・どこまで)を確認する

リノベーション済み物件で最も重要なチェックポイントは、「いつ、誰が、どの範囲まで」工事を行ったのかという施工内容の透明性です。内装がきれいなのは当然として、その裏側にある情報こそが物件の品質を左右します。

  • いつ(When): リノベーション工事が完了した時期は必ず確認しましょう。例えば「築30年、5年前にリノベーション済み」という物件と、「築30年、半月前にリノベーション完了」という物件では、設備の保証期間や状態が大きく異なります。リノベーションからの経過年数も考慮に入れる必要があります。
  • 誰が(Who): 施工を担当した会社名を確認しましょう。信頼できる実績のある会社か、あるいは小規模でも丁寧な仕事をする会社か。可能であれば、その会社のウェブサイトや評判を調べることも有効です。売主(不動産会社)に問い合わせ、施工会社に関する情報をできるだけ詳しく聞き出しましょう。
  • どこまで(Where): これが最も重要なポイントです。リノベーションの工事範囲が、目に見える表層的な部分だけなのか、それとも目に見えないインフラ部分まで及んでいるのかを必ず確認してください。具体的には、以下の点について書類で確認することが理想です。
    • 給排水管・ガス管: 交換されているか、あるいは既存のままか。特に築年数の古いマンションでは、配管の寿命が問題になるケースが多いため、交換済みであれば大きな安心材料になります。
    • 電気配線: 回路の容量は現代の生活(多くの家電利用)に対応できるものか。配線自体が新しくなっているか。
    • 断熱・防音: 壁や床、天井に断熱材や防音材が追加されているか。窓は断熱性の高いペアガラスなどに交換されているか。
    • 下地: 壁や床の表面材だけでなく、その下地まで新しく交換されているか。

これらの情報を確認するために、売主に対して「リノベーション工事の履歴」「設計図面」「仕様書」などの開示を求めましょう。また、第三者機関による「住宅診断(ホームインスペクション)」の報告書があれば、建物の状態を客観的に把握できるため、非常に信頼性が高まります。情報開示に協力的でない場合は、何か隠したい問題がある可能性も考えて、慎重に判断する必要があります。

アフターサービスや保証の有無を確認する

リノベーション工事を行った部分に、万が一不具合が発生した場合に備えて、どのような保証が受けられるのかを確認することは極めて重要です。

  • 売主独自の保証: リノベーションを手掛けた会社(売主)が、施工箇所に対して独自のアフターサービスや保証制度を設けている場合があります。「設備は1年保証」「内装仕上げは2年保証」など、保証の対象範囲と期間を契約前に書面で明確にしてもらいましょう。
  • 既存住宅売買瑕疵(かし)保険: これは、中古住宅の検査と保証がセットになった保険制度です。専門の検査員(建築士)が建物の検査を行い、基準に合格した物件について、引き渡し後に構造耐力上主要な部分や雨水の浸入などに欠陥(瑕疵)が見つかった場合に、その補修費用が保険金で支払われます。この保険に加入している物件は、一定の品質が担保されている証となり、買主にとっては大きな安心材料です。また、後述する住宅ローン控除の適用要件を満たすためにも重要になります。売主がこの保険に加入しているか、あるいは買主が加入できる物件かどうかを必ず確認しましょう。

保証が全くない物件は、購入後にトラブルが発生した場合、すべての修繕費用が自己負担となるリスクがあります。安心して長く住むためにも、保証の手厚さは物件選びの重要な指標の一つです。

建物の管理状態や規約を確認する

特にマンションの場合、専有部分(自分の部屋)がいくらきれいでも、建物全体の管理状態が悪ければ、将来的に快適な生活が送れなくなる可能性があります。内覧時には、部屋の中だけでなく、共用部分の状態もしっかりとチェックしましょう。

  • 共用部分のチェック: エントランス、廊下、階段、ゴミ置き場などがきれいに清掃・管理されているか。外壁にひび割れや塗装の剥がれはないか。エレベーターや機械式駐車場などの設備は定期的にメンテナンスされているか。これらの点は、管理組合が適切に機能しているかどうかのバロメーターになります。
  • 長期修繕計画と修繕積立金: マンションは十数年ごとに大規模修繕工事(外壁補修、屋上防水など)が必要です。そのための「長期修繕計画」がきちんと策定されているか、そして計画通りに工事を行うための「修繕積立金」が十分に積み立てられているかを、不動産会社を通じて確認しましょう。積立金が不足していると、将来的に一時金として高額な費用を徴収されたり、管理費が大幅に値上げされたりするリスクがあります。
  • 管理規約の確認: 管理規約には、そのマンションで暮らす上でのルールが定められています。「ペットの飼育は可能か」「楽器の演奏時間に制限はあるか」「フローリングの遮音等級に規定はあるか」など、自分のライフスタイルに関わる項目は必ず事前に確認が必要です。リノベーション済み物件のフローリングが、実は管理規約の遮音規定を満たしていなかった、というトラブルも起こり得ます。

耐震基準を満たしているか確認する

日本で暮らす以上、建物の耐震性は命に関わる重要な問題です。建築基準法における耐震基準は、1981年(昭和56年)に大きく改正されました。

  • 新耐震基準と旧耐震基準: 1981年6月1日以降に建築確認申請が行われた建物を「新耐震基準」、それ以前のものを「旧耐震基準」と呼びます。新耐震基準は「震度6強から7程度の大規模地震でも倒壊・崩壊しない」ことを目標としており、旧耐震基準に比べて格段に高い耐震性が求められています。まずは、検討している物件がどちらの基準で建てられているかを確認しましょう。これは、建物の登記簿謄本で建築年月日を見ればおおよそ判断できます。
  • 旧耐震でも諦めない: 旧耐震基準の建物であっても、その後に耐震診断や耐震補強工事が実施されていれば、新耐震基準と同等の安全性が確保されている場合があります。工事の履歴や、「耐震基準適合証明書」が取得されているかどうかを確認しましょう。

この耐震基準は、安全性だけでなく、次に説明する住宅ローン控除や各種税制優遇を受けられるかどうかにも大きく関わってきます。

住宅ローン控除の条件を確認する

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末のローン残高の一定割合が所得税(および一部の住民税)から控除される、非常にメリットの大きい制度です。リノベーション済み物件でこの制度を利用するためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。

特に注意が必要なのが、中古住宅の築年数要件です。原則として、マンションなどの耐火建築物は築25年以内、木造などの非耐火建築物は築20年以内である必要があります。

しかし、この築年数要件を超えている物件でも、以下のいずれかの条件を満たせば、住宅ローン控除の対象となります

  1. 耐震基準適合証明書が取得されていること
  2. 既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)が取得されていること
  3. 既存住宅売買瑕疵保険に加入していること

築古のリノベーション済み物件を検討する際には、これらの書類が揃っているか、あるいは引き渡しまでに取得可能かどうかを必ず確認してください。これがあるかないかで、10年以上にわたる総支払額が数百万円単位で変わってくる可能性もあります。売主や不動産会社に確認し、確実に控除を受けられるように準備を進めましょう。(参照:国土交通省Webサイト「住宅ローン減税」のページなど)

後悔しないための注意点【中古物件を購入してリノベーション編】

物件探しの希望条件を明確にする、希望のリノベーションが可能か確認する、物件価格とリノベーション費用の資金計画を立てる、ワンストップリノベーションを検討する

自由な住まいづくりが魅力の「中古物件を購入してリノベーション」ですが、その自由度の高さゆえに、計画段階で押さえておくべきポイントが数多く存在します。物件選びとリノベーション計画をうまく連携させないと、理想と現実のギャップに悩まされたり、予算が大幅に超過したりといった事態に陥りかねません。ここでは、成功への道を切り拓くための4つの重要な注意点を解説します。

物件探しの希望条件を明確にする

「どんな物件にしようか」と考える前に、「リノベーションでどんな暮らしを実現したいか」を具体的にイメージすることが、このアプローチの成功の鍵です。リノベーション後の理想の暮らしから逆算して、それを実現できる「器」としての物件を探していくという視点が重要になります。

まずは、頭の中にある理想を言語化し、整理してみましょう。

  • ライフスタイルの洗い出し:
    • 家族構成は?(現在と将来の展望)
    • 在宅ワークの頻度は?(専用の仕事部屋は必要か)
    • 趣味は何か?(収納スペースや作業スペースは必要か)
    • 来客の頻度は?
    • 休日は家でどう過ごしたいか?
  • 空間への要望を具体化:
    • 「広いリビング」→ 何畳くらい?家族がどう集う?
    • 「使いやすいキッチン」→ 対面式?壁付け?収納量は?
    • 「明るい部屋」→ どの方角に窓が欲しい?窓の大きさは?
    • 「収納を多く」→ ウォークインクローゼット?シューズクローク?壁面収納?

これらの要望をリストアップしたら、「絶対に譲れない条件(Must)」と「できれば叶えたい条件(Want)」に優先順位をつけます。すべての希望を100%満たす物件は存在しないかもしれません。しかし、優先順位が明確であれば、物件を内覧した際に「この物件なら、譲れない条件はクリアしつつ、リノベーションで工夫すれば理想に近づけられる」といった的確な判断ができるようになります。この作業を事前に行っておくことが、物件探しの迷いをなくし、効率を上げるための第一歩です。

希望のリノベーションが可能か確認する

理想の暮らしを思い描き、良さそうな中古物件を見つけても、その建物で希望のリノベーションが物理的に可能でなければ意味がありません。特にマンションの場合は、構造上の制約や、マンション全体のルール(管理規約)によって、できることとできないことが明確に分かれています。

  • 構造上の制約:
    マンションの構造には、主に「ラーメン構造」と「壁式構造」の2種類があります。

    • ラーメン構造: 柱と梁で建物を支える構造です。室内の壁は構造上重要でない「間仕切り壁」であることが多く、比較的自由に撤去したり移動させたりできるため、間取り変更の自由度が高いのが特徴です。
    • 壁式構造: 壁(構造壁)で建物を支える構造です。構造壁は撤去できないため、間取りの変更には大きな制約が伴います。

    どちらの構造かは、間取り図を見た際に室内に柱の出っ張り(梁)があるかどうかでおおよそ判断できますが、正確には竣工図書などで確認が必要です。

  • 管理規約による制約:
    マンションは共同住宅であるため、住民全員が快適に暮らすためのルール「管理規約」が存在します。リノベーションに関連する主な規約には以下のようなものがあります。

    • 床材の変更: 下の階への音漏れを防ぐため、フローリングの遮音等級(L-45など)が定められていることが多いです。無垢材など、規定を満たせない床材は使用できない場合があります。
    • 水回りの移動: 給排水管の勾配の問題や、階下への漏水リスクから、キッチンや浴室、トイレなどの水回りの位置を大幅に移動することを禁止している場合があります。
    • 窓や玄関ドアの交換: 窓サッシや玄関ドアは「共用部分」とされていることが多く、個人で勝手に交換することはできません。

これらの制約を確認せずに物件を購入してしまうと、「やりたかった間取り変更ができなかった」「使いたかった床材が使えなかった」という最悪の事態になりかねません。物件の購入を申し込む前に、必ず不動産会社を通じて管理規約を取り寄せ、内容を精査することが不可欠です。

さらに確実なのは、リノベーション会社の担当者など、専門家に物件の内覧に同行してもらうことです。プロの視点で、希望のリノベーションが実現可能か、構造や規約、設備の状況などをその場でチェックしてもらえるため、安心して物件購入の判断ができます。多くのリノベーション会社が、このような「内覧同行サービス」を提供しています。

物件価格とリノベーション費用の資金計画を立てる

この方法で最も注意すべき点の一つが、資金計画です。「物件価格」と「リノベーション費用」という2つの大きな支出を、トータルで管理する必要があります。

  • 総額で予算を考える:
    「物件価格2,500万円、リノベーション費用1,000万円」のように、常に「総額」で予算を考える癖をつけましょう。これに加えて、仲介手数料や登記費用、ローン手数料、各種税金などの「諸経費」もかかります。諸経費は、一般的に物件価格の6〜9%程度、リノベーション費用の諸経費も別途考慮が必要です。
    総予算 = 物件価格 + リノベーション費用 + 諸経費
    この全体像を常に把握し、予算配分を考えることが重要です。
  • リノベーション費用の相場を知る:
    リノベーション費用は、工事の範囲や仕様によって大きく変動しますが、一般的なマンションの場合、1平方メートルあたり10万円〜20万円程度が目安とされています。例えば、70平方メートルのマンションをフルリノベーションする場合、700万円〜1,400万円程度がかかる計算になります。リノベーション会社のウェブサイトにある施工事例の費用感を参考に、大まかな相場を掴んでおきましょう。
  • 住宅ローンとリフォームローン:
    物件購入費用は「住宅ローン」、リノベーション費用は「リフォームローン」で借り入れるのが一般的ですが、これらを別々に組むと、リフォームローンの方が金利が高く、手続きも煩雑になる傾向があります。
    そこでおすすめなのが、物件価格とリノベーション費用をまとめて一つの住宅ローンとして借り入れられる「一体型ローン」です。低金利の住宅ローンでリノベーション費用までカバーできるため、総返済額を抑えることができます。ただし、取り扱っている金融機関が限られていたり、融資の審査にリノベーションの見積書や工事請負契約書が必要だったりと、手続きには注意が必要です。

ワンストップリノベーションを検討する

これまでに挙げた「物件探し」「リノベーションの実現可能性チェック」「資金計画」といった複雑な要素を、スムーズに、そして賢く進めるための有効な手段が「ワンストップリノベーション」です。

ワンストップリノベーションとは、物件探しから、リノベーションの設計・施工、資金計画の相談、さらにはアフターサービスまで、すべてのプロセスを一つの会社が一貫してサポートしてくれるサービスです。

ワンストップリノベーションのメリット:

  • 窓口が一つで手間が省ける: 不動産会社、設計事務所、工務店、金融機関と、別々にやり取りする必要がなく、窓口が一つのためコミュニケーションが非常にスムーズです。忙しい人でも効率的に進められます。
  • 連携がスムーズで判断が早い: 物件探しの段階からリノベーションのプロが関わるため、「この物件で希望のリノベーションは可能か?」「可能な場合、費用はいくらかかるか?」といった判断がスピーディーに行えます。
  • 総額での資金計画が立てやすい: 物件価格とリノベーション費用をセットで考え、住宅ローン(一体型ローン)の提案や手続きのサポートもしてくれるため、安心して資金計画を立てられます。
  • リノベーション向きの物件提案: リノベーションのプロの目で、建物のポテンシャルを見抜き、リノベーションに適した優良物件を紹介してもらえる可能性が高まります。

「中古購入+リノベーション」を成功させるためには、不動産の知識と建築の知識の両方が不可欠です。ワンストップリノベーション会社は、その両方を兼ね備えた専門家集団であり、初めてリノベーションに挑戦する人にとって、非常に心強いパートナーとなるでしょう。

物件探しからリノベーションまで頼める会社3選

「中古物件を購入してリノベーションしたいけれど、不動産会社とリノベーション会社を別々に探すのは大変そう…」。そんな悩みを解決してくれるのが、物件探しから設計・施工までを一貫してサポートする「ワンストップリノベーション会社」です。ここでは、業界でも特に実績と人気のある代表的な3社をピックアップし、それぞれの特徴やサービス内容を詳しくご紹介します。会社選びの参考にしてください。

会社名 特徴 対応エリア(主な拠点)
リノベる。 業界最大級の実績。テクノロジー活用(VR等)。全国規模のネットワーク。スマートホーム提案も。 全国主要都市(札幌、仙台、関東、東海、関西、広島、福岡など)
ひかリノベ 定額制とオーダーメイドの2プラン。インスペクション・瑕疵保険が標準付帯。デザイン性の高さ。 主に関東(東京、神奈川、埼玉、千葉)、関西(大阪、兵庫、京都)
nuリノベーション デザイン性を最重視したフルオーダーメイド型。専属チームによる手厚いサポート。「自分らしさ」を追求。 主に関東(東京、神奈川、埼玉、千葉)

① リノベる。

「リノベる。」は、ワンストップリノベーション業界のリーディングカンパニーであり、累計6,000戸以上という業界トップクラスの設計施工実績を誇ります。(参照:リノベる。公式サイト 2024年6月時点)全国各地にショールームを展開しており、その知名度と信頼性は抜群です。

サービスの特徴:

  • 全国規模のネットワークと豊富な実績: 北海道から沖縄まで全国にサービスを展開しており、どの地域に住んでいても相談しやすいのが大きな強みです。豊富な実績に裏打ちされたノウハウで、物件探しから資金計画、設計・施工までをトータルでサポートします。
  • テクノロジーの活用: 設計の打ち合わせでは、専用アプリやVR(バーチャルリアリティ)を活用。完成後の空間をリアルに体感しながらプランを練ることができるため、イメージの齟齬が起こりにくく、納得感の高い家づくりが可能です。
  • 専属チームによるサポート体制: 顧客一人ひとりに対して、コーディネーター、設計デザイナー、施工管理担当者からなる専属チームが組まれ、初回相談から引き渡しまで一貫してサポート。各分野のプロフェッショナルが連携し、理想の住まいづくりを強力にバックアップします。
  • スマートホームの提案: IoT技術を活用したスマートホームの提案も積極的に行っており、デザイン性だけでなく、より便利で快適な暮らしを実現するための先進的なソリューションを提供しています。

こんな人におすすめ:

  • 初めてのリノベーションで、実績と信頼のある大手企業に任せたい人。
  • 地方在住で、近くに相談できる拠点がある会社を探している人。
  • VRなどの最新技術を使って、失敗のない家づくりを進めたい人。
  • 物件探しからアフターサービスまで、ワンストップで手厚いサポートを受けたい人。

参照:リノベる。公式サイト

② ひかリノベ

「ひかリノベ」は、物件探しからリノベーション、さらにはインテリアの提案まで、住まいに関わるすべてをワンストップで提供するサービスです。特に、建物の安全性とデザイン性の両立を重視している点が特徴です。

サービスの特徴:

  • 選べる2つのリノベーションプラン: 費用が分かりやすい「定額制プラン」と、こだわりを追求できる「オーダーメイドプラン」の2種類を用意。予算やこだわりに合わせて柔軟に選択できるのが魅力です。定額制プランは、仕様がある程度決まっているため、コストを抑えつつスピーディーに進めたい人に向いています。
  • 安心を標準装備したサービス: すべてのプランに、専門家による建物の「住宅診断(ホームインスペクション)」と、引き渡し後の安心を保証する「既存住宅売買瑕疵保険」が標準で付帯しています。目に見えない部分の品質や安全性を重視する姿勢が、顧客からの高い信頼につながっています。
  • デザイン性の高い空間提案: 経験豊富なデザイナーが、顧客のライフスタイルや好みを丁寧にヒアリングし、デザイン性の高い空間を提案してくれます。ウェブサイトには洗練された施工事例が多数掲載されており、デザインにこだわりたい人も満足できるクオリティです。
  • 中古購入+リノベーションに特化: 物件の仲介からリノベーションまでを自社で一貫して行うことに特化しており、不動産と建築の両面から最適な提案を受けられます。

こんな人におすすめ:

  • リノベーション費用を明瞭な定額制で考えたい人。
  • 建物の安全性や品質、購入後の保証を手厚くしたい人。
  • デザイン性の高い、おしゃれな空間を実現したい人。
  • 関東圏や関西圏でワンストップリノベーションを検討している人。

参照:ひかリノベ公式サイト

③ nuリノベーション

「nu(エヌ・ユー)リノベーション」は、「“自分らしい”暮らしをデザインする」をコンセプトに、徹底したオーダーメイドのデザインを追求するワンストップリノベーション会社です。デザイン性を最優先し、唯一無二の空間を創り上げたい人に絶大な支持を得ています。

サービスの特徴:

  • 完全オーダーメイドの設計: 決まったプランや型はなく、ゼロから顧客と一緒に理想の住まいを創り上げていくスタイルです。設計の自由度が非常に高く、細部に至るまでこだわりを反映させることができます。
  • デザインへの強いこだわりと提案力: 所属するデザイナーは、顧客の漠然としたイメージを汲み取り、具体的な形にする高いスキルを持っています。多様なテイスト(シンプル、インダストリアル、和モダンなど)に対応可能で、ウェブサイトの豊富な施工事例は、見ているだけでもインスピレーションが湧いてきます。
  • 手厚いパーソナルサポート: 顧客一人ひとりに、物件探しのプロ、設計デザイナー、施工管理のプロがチームとなって専属でサポート。物件探しから資金計画、設計、施工管理まで、各フェーズで専門家が密に連携し、きめ細やかなサービスを提供します。
  • 明確な料金体系: 料金は「物件価格+設計料+施工費+諸経費」で構成されており、設計料が定額であるなど、分かりやすい体系を提示しています。初回コンサルティングで詳細な資金計画シミュレーションを行ってくれるため、安心して進めることができます。

こんな人におすすめ:

  • 何よりもデザイン性を重視し、自分だけのオリジナルな空間を創りたい人。
  • 既製品ではなく、造作家具などを取り入れたこだわりの家づくりをしたい人。
  • 自分のライフスタイルや価値観を、設計者にじっくりと伝えて形にしたい人。
  • 関東圏で、デザインに特化したリノベーション会社を探している人。

参照:nuリノベーション公式サイト

まとめ

リノベーション物件という選択肢は、新築でもなく、単なる中古でもない、第三の住まい探しの方法として大きな可能性を秘めています。この記事では、後悔しないリノベーション物件探しのために知っておくべき知識を、網羅的に解説してきました。

最後に、重要なポイントを改めて振り返ります。

まず、リノベーション物件には大きく2つの種類があることを理解することがスタート地点です。

  • リノベーション済み物件: 手間なく、早く、完成形を見てから購入できる安心感が魅力。ただし、デザインの自由度はない。
  • 中古物件を購入してリノベーション: 時間と手間はかかるが、理想の間取りやデザインを追求できる究極のオーダーメイド。

どちらが良いかは、あなたのライフスタイル、価値観、そして住まいづくりにかけられる時間と労力によって決まります。「スピードと手軽さ」を重視するなら前者、「自由と創造性」を重視するなら後者が向いているでしょう。

そして、どちらのタイプを選ぶにしても、後悔しないためには共通して重要な注意点があります。

  • リノベーション済み物件の場合:
    • 見えない部分の施工内容(いつ・誰が・どこまで)の確認
    • アフターサービスや瑕疵保険の有無
    • 建物の管理状態と耐震性
    • 住宅ローン控除の適用条件
  • 中古物件を購入してリノベーションする場合:
    • リノベーション後の理想の暮らしから逆算した物件探し
    • 構造や規約によるリノベーションの実現可能性の事前確認
    • 物件価格+リノベーション費用+諸経費を一体で考える資金計画
    • 物件探しから施工までを任せられる「ワンストップリノベーション」の検討

特に、目に見えない部分の品質や、将来にわたるお金の問題(資金計画、税制優遇、保証)をいかにクリアにするかが、満足度の高い住まいづくりを実現するための分かれ道となります。

リノベーションは、単に古いものを新しくするだけではありません。既存のストックを活かしながら、自分たちの暮らしに合わせて空間を再編集し、新たな価値を創造するクリエイティブな行為です。この記事で得た知識を武器に、情報収集を重ね、信頼できるパートナー(不動産会社やリノベーション会社)を見つけることができれば、きっとあなたの理想を超える住まいが手に入るはずです。

後悔のない物件選びのために、まずは一歩、行動を起こしてみましょう。 ポータルサイトを眺めてみたり、気になるリノベーション会社のセミナーに参加してみたりすることから、あなたの新しい物語が始まります。