「自分たちらしい住まいで暮らしたい」「古くなった家を、現代のライフスタイルに合わせて快適にしたい」といった思いから、リノベーションを選ぶ人が増えています。新築よりもコストを抑えつつ、自由な設計で理想の住まいを実現できるリノベーションは、非常に魅力的な選択肢です。
しかし、その一方で多くの人が頭を悩ませるのが「費用」の問題。「一体いくらかかるのか見当がつかない」「どこにどれくらいの費用がかかるのか知りたい」といった声は後を絶ちません。リノベーション費用は、物件の種類(戸建てかマンションか)、広さ、工事の規模、導入する設備のグレードなど、さまざまな要因によって大きく変動するため、全体像を掴むのが難しいのが実情です。
この記事では、リノベーションを検討しているすべての方に向けて、費用の相場と内訳を徹底的に解説します。戸建て・マンション別の費用相場はもちろん、キッチンや浴室といった箇所別の詳細な費用、コストを賢く抑えるための具体的なコツ、さらには資金計画やローン、信頼できるリノベーション会社の選び方まで、知りたい情報を網羅しました。
この記事を読めば、リノベーション費用の全体像を正確に把握し、予算内で理想の住まいを叶えるための具体的な道筋が見えてくるはずです。後悔のないリノベーションを実現するために、まずは費用の知識をしっかりと身につけていきましょう。
目次
リノベーションにかかる費用の総額と内訳
リノベーションの総費用は、大きく分けて「本体工事費」「設計料(デザイン料)」「諸費用」の3つで構成されます。中古物件を購入してリノベーションを行う場合は、これに「物件購入費」が加わります。それぞれの費用がどのようなものか、どのくらいの割合を占めるのかを理解することが、正確な資金計画の第一歩です。
本体工事費
本体工事費は、リノベーション総費用の約70%〜80%を占める、最も大きなウェイトを持つ費用です。これは、実際に建物を解体したり、組み立てたり、内装を仕上げたり、設備を設置したりするための費用全般を指します。具体的には、以下のような工事が含まれます。
- 仮設工事費: 工事を安全かつスムーズに進めるために必要な準備と後片付けの費用です。具体的には、工事現場の養生(既存の床や壁を傷つけないための保護)、資材置き場の確保、仮設の電気や水道、トイレの設置、工事で発生した廃材の処分費用などが含まれます。工事規模や建物の立地条件によって変動しますが、工事費全体の2%〜5%程度が目安です。
- 解体工事費: 既存の間仕切り壁、床、天井、設備などを撤去するための費用です。どこまで解体するかによって費用は大きく変わります。例えば、壁紙や床材を剥がすだけの場合と、間取りを根本から変えるために壁をすべて撤去する「スケルトン解体」とでは、費用も手間も大きく異なります。
- 木工事費(大工工事費): 壁や床、天井の下地作り、間仕切り壁の設置、建具(ドアや窓)の枠の取り付け、造作家具の製作など、大工職人が行う工事全般の費用です。リノベーションの骨格を作る重要な部分であり、仕上がりの質を大きく左右します。
- 内装仕上げ工事費: 空間の印象を決定づける最終的な仕上げに関する費用です。壁紙(クロス)の張り替え、塗装、珪藻土や漆喰などの塗り壁、フローリングやクッションフロア、タイルなどの床材の施工、天井の仕上げなどが含まれます。選ぶ素材のグレードによって価格が大きく変動する部分です。
- 建具工事費: 室内ドア、窓、クローゼットの扉、ふすまや障子などの設置・交換にかかる費用です。既製品を使うか、オーダーメイドの造作建具にするかで費用が変わります。
- 設備工事費: キッチン、浴室、トイレ、洗面台といった水回り設備の設置・交換や、それに伴う給排水管工事、ガス管工事、電気配線工事、空調設備(エアコン)の設置など、生活インフラに関わる工事の費用です。本体工事費の中でも特に費用がかさむ項目であり、選ぶ設備のグレードによって数十万円単位で金額が変動します。
- 外装工事費(戸建ての場合): 戸建てリノベーションの場合に発生する費用で、外壁の塗装や張り替え、屋根の葺き替えや塗装、防水工事、ベランダ・バルコニーの補修などが含まれます。建物の耐久性を維持し、雨漏りなどを防ぐために重要な工事です。
これらの本体工事費は、リノベーション会社から提示される見積書の中で最も詳細に記載される部分です。項目が多く複雑ですが、一つひとつ内容を確認し、不明な点があれば必ず質問するようにしましょう。
設計料(デザイン料)
設計料(デザイン料)は、リノベーションのプランニングや設計、デザイン、工事監理などを依頼する際に、設計事務所やリノベーション会社に支払う費用です。総費用の約5%〜15%が目安とされています。
設計料の算出方法は会社によって異なりますが、主に以下の3つのパターンがあります。
- 工事費連動方式: 本体工事費に一定の料率(例:10%〜15%)を掛けて算出する方法。最も一般的な方式です。
- 坪単価方式: 建物の面積(坪数や㎡)に、あらかじめ定められた単価を掛けて算出する方法。
- 定額方式: 工事規模にかかわらず、設計料が一定額に定められている方式。
設計料には、以下のような業務が含まれています。
- ヒアリング・現地調査: 施主の要望やライフスタイルを詳しく聞き取り、現状の建物の状態を調査します。
- プランニング・デザイン提案: ヒアリング内容と調査結果を基に、間取りプランやデザインコンセプト、内装材などを提案します。3Dパースなどを用いて、完成後のイメージを分かりやすく提示してくれる会社も多いです。
- 基本設計・実施設計: 決定したプランを基に、詳細な設計図面(意匠図、構造図、設備図など)を作成します。この図面が、正確な見積もりと工事の基礎となります。
- 工事監理: 工事が設計図通りに適切に行われているかを、専門家の立場でチェックする業務です。週に数回現場に足を運び、品質や進捗を確認します。
設計事務所に依頼する場合と、設計施工を一貫して行うリノベーション会社に依頼する場合とで、設計料の考え方や見積書での表示方法が異なることがあります。見積もりを比較する際は、設計料にどこまでの業務が含まれているのかをしっかり確認することが重要です。
諸費用
諸費用は、本体工事費や設計料以外に発生する費用の総称で、総費用の約5%〜10%が目安です。見落としがちですが、合計すると大きな金額になるため、あらかじめ予算に組み込んでおく必要があります。
主な諸費用には以下のようなものがあります。
諸費用の種類 | 内容 | 費用の目安 |
---|---|---|
確認申請手数料 | 建築基準法に関わる大規模なリノベーション(増築など)で必要な申請手数料。 | 15万円~30万円程度 |
登記費用 | 増築や間取り変更で建物の表示が変更になる場合や、ローン利用時の抵当権設定登記にかかる費用。 | 5万円~30万円程度 |
印紙税 | 工事請負契約書や金銭消費貸借契約書(ローン契約書)に貼る印紙代。契約金額による。 | 1万円~6万円程度 |
各種保険料 | 火災保険や地震保険の加入・見直し費用。工事中のリスクに備える建設工事保険は通常施工会社が加入。 | 内容による |
仮住まい費用 | 大規模なリノベーションで住みながらの工事が難しい場合の、仮住まいの家賃や敷金・礼金。 | 家賃×月数+初期費用 |
引越し費用 | 現在の住まいから仮住まいへ、仮住まいからリノベーション後の住まいへの2回分の引越し代。 | 10万円~30万円程度 |
トランクルーム代 | 仮住まいに運びきれない荷物を一時的に保管する場合の費用。 | 月額1万円~3万円程度 |
近隣挨拶の品物代 | 工事開始前に近隣住民へ挨拶する際に持参する粗品代。 | 3,000円~1万円程度 |
これらの諸費用は、リノベーション会社の初期見積もりに含まれていないことも多いため、「諸費用として、他にどのような費用がかかる可能性がありますか?」と事前に確認しておくことが、後の資金計画のズレを防ぐ上で非常に重要です。
中古物件を購入する場合は物件購入費も必要
中古物件を購入してリノベーションを行う「中古リノベ」の場合、上記の費用に加えて物件の購入費用とその諸費用が必要になります。
物件購入にかかる諸費用は、物件価格の6%〜9%程度が目安とされており、主な内訳は以下の通りです。
- 仲介手数料: 不動産会社に支払う手数料。(物件価格×3%+6万円)+消費税が上限。
- 印紙税: 不動産売買契約書に貼る印紙代。
- 登録免許税: 所有権移転登記などにかかる税金。
- 不動産取得税: 不動産を取得した際に課される税金。
- 固定資産税・都市計画税清算金: その年の税金を売主と日割りで精算する費用。
- 司法書士報酬: 登記手続きを代行する司法書士への報酬。
例えば、3,000万円の中古物件を購入して1,000万円のリノベーションを行う場合、総額は4,000万円ですが、実際には物件購入の諸費用(約180万円〜270万円)とリノベーションの諸費用(約50万円〜100万円)が上乗せされます。したがって、総予算は4,230万円〜4,370万円程度と見積もっておく必要があります。
このように、リノベーションの費用は複数の要素で構成されています。それぞれの内訳を正しく理解し、見えないコストも含めて全体像を捉えることが、賢いリノベーション計画の鍵となります。
【戸建て】リノベーションの費用相場
戸建てのリノベーションは、マンションに比べて自由度が高い反面、建物の構造や状態によって費用が大きく変動する特徴があります。ここでは、工事内容別、広さ・坪数別、そして築年数別に、戸建てリノベーションの費用相場を詳しく見ていきましょう。
工事内容別の費用相場
フルリノベーション(スケルトンリフォーム)
フルリノベーションとは、建物の構造躯体(柱、梁、基礎など)だけを残し、内外装や設備をすべて解体・撤去して全面的に改修する工事です。間取りの完全な自由設計、断熱性や耐震性の抜本的な向上、最新設備への一新などが可能になります。
費用相場は1,000万円〜2,500万円以上と高額になりますが、新築同様、あるいはそれ以上の性能とデザイン性を手に入れられるのが最大の魅力です。費用を左右する主な要因は以下の通りです。
- 建物の規模と形状: 当然ながら、延床面積が広いほど費用は高くなります。
- 構造補強の有無: 解体後に柱や基礎の劣化が見つかった場合、耐震補強工事が必要となり、100万円〜300万円程度の追加費用が発生することがあります。
- 断熱改修の範囲: 壁・床・天井への断熱材の充填、高性能な窓への交換など、断熱性能を高める工事は費用に大きく影響します。
- 内外装材のグレード: 無垢材のフローリング、自然素材の塗り壁、デザイン性の高いタイルなど、こだわりの素材を選ぶと費用は上昇します。
- 設備のグレード: ハイグレードなシステムキッチンやユニットバス、全館空調システムの導入などは、費用を押し上げる要因となります。
フルリノベーションは、「建て替えよりはコストを抑えたいが、新築のように根本から住まいを作り変えたい」というニーズに最適な選択肢と言えるでしょう。
内装リノベーション
内装リノベーションは、建物の構造には手を加えず、室内のデザインや機能を向上させる工事です。間取り変更を伴うものと、伴わないものに大別されます。
- 間取り変更を伴う場合: 壁の撤去・新設、部屋の統合・分割、水回りの移動などが含まれます。費用相場は500万円〜1,200万円程度です。特にキッチンや浴室など水回りの移動は、給排水管やガス管、電気配線の移設工事が大規模になるため、高額になる傾向があります。
- 間取り変更を伴わない場合: 壁紙や床材の張り替え、建具の交換、収納の増設、キッチンの入れ替え(位置は変更しない)などが中心です。費用相場は200万円〜800万円程度で、工事範囲や選ぶ素材・設備のグレードによって変動します。
ライフスタイルの変化に合わせて、子供部屋を増やす、リビングを広くする、といった要望に対応できるのが内装リノベーションのメリットです。
外装リノベーション
外装リノベーションは、建物の外観と耐久性を維持・向上させるための工事です。雨風や紫外線から家を守る重要な役割を担っています。
費用相場は100万円〜300万円程度で、主な工事内容は以下の通りです。
- 外壁塗装: 80万円〜150万円。塗料の種類(アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素など)によって耐久年数と価格が異なります。
- 外壁の張り替え(サイディングなど): 150万円〜250万円。既存の外壁を撤去し、新しい外壁材を施工します。断熱材一体型のサイディングを選ぶと、断熱性能の向上も期待できます。
- 屋根の葺き替え・カバー工法: 100万円〜200万円。既存の屋根材を撤去して新しくする「葺き替え」と、既存の屋根の上に新しい屋根材を重ねる「カバー工法」があります。
- 防水工事: 10万円〜50万円。ベランダやバルコニーの床の防水層を補修・再施工します。
これらの工事では、高所作業のための足場の設置が必須となり、15万円〜30万円程度の費用が別途かかります。外壁と屋根の工事を同時に行うことで、足場代を一度で済ませられるため、コスト効率が良くなります。
断熱・耐震リノベーション
既存住宅の性能を向上させるリノベーションも重要です。特に築年数が経過した住宅では、断熱性や耐震性が現在の基準を満たしていないことが多くあります。
- 断熱リノベーション: 50万円〜400万円程度。工事範囲によって費用は大きく異なります。
- 窓の断熱: 内窓の設置(1ヶ所5万円〜15万円)、既存サッシを複層ガラスや樹脂サッシに交換(1ヶ所10万円〜30万円)。
- 壁・床・天井の断熱: 壁を剥がして断熱材を充填する(大規模になりがち)、床下に断熱材を入れる、天井裏に断熱材を敷き詰めるなど。
- 耐震リノベーション: 50万円〜300万円以上。まず耐震診断(10万円〜40万円)を行い、必要な補強工事を計画します。
- 壁の補強: 筋交いや構造用合板を設置して壁の強度を高める。
- 基礎の補強: 基礎のひび割れを補修したり、鉄筋を追加して補強したりする。
- 金物の設置: 柱と梁、土台などを専用の金物で緊結し、地震の揺れで接合部が抜けるのを防ぐ。
これらの性能向上リノベーションは、国や自治体の補助金・助成金の対象となることが多いため、積極的に活用することで費用負担を軽減できます。
広さ・坪数別の費用相場
戸建てのフルリノベーションを想定した場合の、広さ・坪数別の費用相場は以下の通りです。ただし、これはあくまで目安であり、前述の工事内容や仕様によって大きく変動します。
広さ・坪数 | フルリノベーションの費用相場 | 特徴 |
---|---|---|
30坪(約99㎡) | 900万円~1,800万円 | 3~4人家族向けの一般的な広さ。コストバランスを考えやすい。 |
40坪(約132㎡) | 1,200万円~2,400万円 | 4~5人家族でもゆとりのある広さ。二世帯住宅も視野に入る。 |
一般的に、戸建てのフルリノベーションの坪単価は30万円〜60万円程度とされています。例えば30坪の家なら、「30坪 × 30万円 = 900万円」から「30坪 × 60万円 = 1,800万円」が相場となります。
築年数別の費用相場
築年数は、リノベーションの工事内容と費用を考える上で非常に重要な要素です。
築20年
築20年の住宅は、構造躯体はまだ比較的しっかりしていることが多いですが、設備機器や内装の経年劣化が目立ち始める時期です。
- 主な工事内容: キッチン・浴室などの設備交換、壁紙・床材の張り替え、外壁・屋根のメンテナンス(初の塗装など)。
- 費用相場: 300万円〜800万円
- ポイント: この段階でしっかりメンテナンスを行うことで、建物の寿命を延ばすことができます。将来を見据えて、断熱性能の高い窓に交換するなどの部分的な性能向上もおすすめです。
築30年
築30年になると、内外装や設備だけでなく、見えない部分の劣化も進んできます。
- 主な工事内容: 水回り設備の一新、給排水管の点検・交換、内装の全面リフォーム、外壁・屋根の本格的な改修。
- 費用相場: 500万円〜1,500万円
- ポイント: 断熱性や耐震性にも目を向けるべき時期です。特に1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準で建てられた住宅の場合は、耐震診断と補強工事が強く推奨されます。間取り変更を伴う大規模なリノベーションも視野に入ります。
築40年以上
築40年以上の住宅は、現代の生活水準や性能基準から見ると、多くの点で改善が必要となります。
- 主な工事内容: スケルトンリフォーム(フルリノベーション)が主流。構造補強、断熱改修、配管・配線の全面更新、間取りの抜本的な見直し。
- 費用相場: 1,000万円〜2,500万円以上
- ポイント: 解体してみないと分からない不具合(雨漏りによる腐食、シロアリ被害など)が発生するリスクが高まります。そのため、工事費の10%〜20%程度の予備費を必ず確保しておくことが重要です。建て替えとも比較検討し、どちらがコストや要望に合っているかを慎重に判断する必要があります。
戸建てのリノベーションは、このように多角的な視点から費用を検討する必要があります。自分の家の状態と、どこまで手を入れたいのかを明確にすることが、適切な予算計画の鍵となります。
【マンション】リノベーションの費用相場
マンションリノベーションは、戸建てと異なり、工事範囲が「専有部分」に限られます。窓サッシや玄関ドア、バルコニーといった「共用部分」は原則として工事できないなど、管理規約による制約があるのが大きな特徴です。その分、戸建てに比べて費用相場は掴みやすい傾向にあります。
工事内容別の費用相場
フルリノベーション(スケルトンリフォーム)
マンションにおけるフルリノベーションとは、専有部分の床・壁・天井をすべて解体し、コンクリートの躯体だけの状態(スケルトン)にしてから、間取りや内装、設備をすべて新しく作り直す工事です。
費用相場は500万円〜1,500万円程度で、専有面積や仕様によって変動します。戸建てのフルリノベーションよりは安価になる傾向がありますが、これは外装や構造に関する工事がないためです。
- メリット:
- 間取りの自由度が非常に高い(構造壁を除く)。
- 配管や配線をすべて新しくできるため、漏水や電気トラブルのリスクを大幅に低減できる。
- 床や壁に断熱材を追加することで、住戸の断熱性・防音性を向上させられる。
- 費用を左右する要因:
- 専有面積: 面積が広いほど、材料費も人件費も増えます。
- 内装材のグレード: 無垢フローリングやタイル、輸入壁紙など、高級な素材を選ぶと費用は上がります。
- 設備のグレード: 海外製の食洗機やデザイン性の高いキッチン、高機能なユニットバスなどは高額です。
- 解体費用: 既存の間取りが複雑な場合や、解体・搬出に手間がかかる場合は費用が増えることがあります。
築年数が古いマンション(築30年以上など)を、現代のライフスタイルに合わせて根本から作り変えたい場合に最適な方法です。
間取り変更を含むリノベーション
スケルトンリフォームまでは行わないものの、壁を撤去してリビングを広くしたり、逆に壁を新設して子供部屋を作ったりと、間取りの変更を伴うリノベーションです。
費用相場は300万円〜1,000万円程度となります。
- 主な工事内容:
- 壁の撤去・新設
- リビング・ダイニング・キッチンの統合(LDK化)
- 和室から洋室への変更
- ウォークインクローゼットの新設
- 水回り設備の位置変更(費用が高額になりやすい)
- 注意点:
- 撤去できない壁: マンションには、建物の構造を支えている「構造壁(耐力壁)」が存在します。この壁は絶対に撤去できません。リノベーション会社に依頼し、図面でどの壁が撤去可能かを確認してもらう必要があります。
- 水回りの移動制限: キッチンや浴室を大きく移動させる場合、床下の配管スペース(ふところ)の高さや、排水管の勾配が確保できるかが問題になります。管理規約で制限されている場合もあるため、事前の確認が不可欠です。
内装デザインの変更
間取りは変更せず、壁紙や床材の張り替え、設備の交換など、表面的なデザインや機能を一新するリノベーションです。表層リフォームとも呼ばれます。
費用相場は100万円〜500万円程度と、比較的リーズナブルに実施できます。
- 主な工事内容:
- 壁紙(クロス)の全面張り替え
- 床材をフローリングやカーペット、フロアタイルなどに変更
- キッチン、浴室、トイレ、洗面台の交換(位置は変更しない)
- 室内ドアなどの建具交換
- 収納棚の造作・設置
- ポイント:
- 費用を抑えつつ、部屋の雰囲気をガラリと変えることができます。
- 中古マンションを購入後、入居前に最低限手を入れたいという場合に適しています。
- 選ぶ素材や設備のグレードによって費用が大きく変わるため、予算に応じてメリハリをつけることが可能です。
広さ・専有面積別の費用相場
マンションリノベーションの費用は、専有面積に比例して増える傾向があります。ここでは、フルリノベーション(スケルトン)を想定した際の、面積別の費用相場を紹介します。一般的に、マンションリノベーションの㎡単価は10万円〜20万円程度が目安です。
専有面積 | フルリノベーションの費用相場 | ㎡単価10万~20万円で計算 | 特徴 |
---|---|---|---|
50㎡ | 500万円~1,000万円 | 50㎡ × 10~20万円 | 単身者やDINKS向けの広さ。コンパクトながら機能的な空間づくりが可能。 |
60㎡ | 600万円~1,200万円 | 60㎡ × 10~20万円 | 2~3人家族向けの標準的な広さ。間取りの工夫で快適なLDKを実現。 |
70㎡ | 700万円~1,400万円 | 70㎡ × 10~20万円 | 3~4人家族向けのゆとりのある広さ。子供部屋や書斎なども確保しやすい。 |
上記の表はあくまで標準的な仕様の場合です。例えば70㎡のマンションでも、内装や設備に最高級のグレードを求めれば、費用は2,000万円を超えることもあります。逆に、仕様をシンプルにすれば700万円以下に抑えることも可能です。
重要なのは、㎡単価という指標を参考にしつつも、自分たちが「どこにこだわり、どこにお金をかけたいか」を明確にすることです。例えば、「キッチンには一番お金をかけたいから、他の部屋の内装はシンプルなものにしよう」といった優先順位付けが、予算内で満足度の高いリノベーションを実現する鍵となります。
また、マンションリノベーションでは、工事中の騒音や振動、資材の搬入・搬出などで近隣住民への配慮が不可欠です。管理組合への届け出や、近隣への挨拶など、ルールやマナーを守ってスムーズに工事を進めることも、費用と同様に重要なポイントと言えるでしょう。
【工事箇所別】部分リノベーションの費用相場
全体的なリノベーションではなく、「古くなったキッチンだけを新しくしたい」「冬に寒い浴室を快適にしたい」といった、特定の箇所だけを工事する「部分リノベーション」も非常に人気があります。ここでは、主要な工事箇所ごとの費用相場と、価格を左右するポイントを詳しく解説します。
キッチン
キッチンは、毎日使う場所だからこそ、リノベーションによる満足度が非常に高い箇所です。
- 費用相場: 50万円~150万円
- 価格を左右するポイント:
- キッチンのグレード: システムキッチンの価格は、扉の素材(メラミン、塗装、ステンレスなど)、ワークトップの素材(人工大理石、ステンレス、セラミックなど)、収納の機能性によって大きく変わります。普及価格帯のキッチン本体は40万円〜80万円、ハイグレードなものになると100万円以上します。
- キッチンのレイアウト: 壁付けのI型キッチンが最も安価です。対面式のL型、U型、アイランドキッチン、ペニンシュラキッチンなどは、本体価格が高くなる上、必要な工事範囲も広がるため費用が上昇します。
- オプション: 食器洗い乾燥機、高機能なレンジフード、浄水器一体型水栓などを追加すると、それぞれ数万円〜十数万円の追加費用がかかります。
- 既存キッチンの解体・処分費、設置工事費: これらで10万円〜20万円程度が見込まれます。
- 内装工事: キッチンの交換に合わせて、床や壁紙を張り替える場合は、5万円〜15万円程度の追加費用が必要です。
浴室
浴室のリノベーションは、快適性の向上だけでなく、ヒートショック対策や日々の掃除のしやすさにも繋がります。
- 費用相場: 50万円~150万円
- 価格を左右するポイント:
- ユニットバスのグレード: 現在の主流はユニットバス(システムバス)への交換です。本体価格は、普及価格帯で40万円〜80万円、ハイグレードなものでは100万円以上します。浴室暖房乾燥機、肩湯機能、床暖房、断熱性能の高い浴槽などの機能で価格が変動します。
- 既存浴室の種類: 既存の浴室がユニットバスの場合、交換は比較的スムーズです。しかし、壁や床がタイル張りの「在来工法」の浴室からユニットバスに交換する場合は、解体工事や下地の造作、給排水管の調整などで工事が大規模になり、費用が20万円〜40万円程度高くなることがあります。
- 浴室のサイズ: ユニットバスは規格サイズ(例: 1216, 1616, 1620など)があり、サイズが大きいほど高価になります。
トイレ
トイレは比較的小規模な工事で、空間の印象と快適性を大きく変えることができます。
- 費用相場: 20万円~50万円
- 価格を左右するポイント:
- 便器の種類: タンク付きトイレが最も安価です。タンクレス風の便器、水道直結のタンクレストイレの順に高価になります。タンクレストイレはデザイン性が高く、空間を広く使えますが、手洗い器を別途設置する必要がある場合が多いです。
- 便器の機能: 温水洗浄機能はもちろん、自動開閉、自動洗浄、除菌機能などが付くと価格が上がります。
- 内装工事の有無: 便器の交換と同時に、壁紙や床のクッションフロアを張り替えるのが一般的です。これに5万円〜10万円程度かかります。
- 和式から洋式への変更: この場合は床の解体や給排水管の工事が必要になるため、費用は30万円〜60万円程度と高額になります。
洗面所
洗面所は、洗面、脱衣、洗濯など多機能な空間であり、収納力や使い勝手の向上がリノベーションの鍵となります。
- 費用相場: 20万円~50万円
- 価格を左右するポイント:
- 洗面化粧台の種類: 既製品の洗面化粧台の交換が一般的で、間口(幅)のサイズや収納タイプ、水栓の機能によって価格が変わります。本体価格は10万円〜30万円程度です。
- 造作洗面台: カウンター、洗面ボウル、水栓、鏡、収納などを自由に組み合わせる「造作洗面台」は、デザインの自由度が高いですが、費用は30万円以上と高額になる傾向があります。
- 内装工事: 壁紙や床材の張り替え、照明の交換なども合わせて行うことが多いです。
リビング・ダイニング
家族が集まる中心的な空間であるリビング・ダイニングは、リノベーションの目的によって費用が大きく異なります。
- 費用相場: 50万円~300万円以上
- 工事内容別の費用目安:
- 内装の変更: 壁紙・床材の張り替え、照明器具の交換など。20万円~80万円。
- 収納の増設: 壁面収納やテレビボードの造作など。20万円~100万円。
- 間取りの変更: 隣の和室と繋げて広いLDKにする、壁を新設して書斎スペースを作るなど。壁の撤去・新設、床や天井の補修、電気工事などが伴うため、100万円~300万円以上かかることもあります。
寝室
寝室は、安眠できる快適な空間づくりがテーマになります。
- 費用相場: 20万円~100万円
- 主な工事内容:
- 内装の変更: 落ち着いた色合いの壁紙への変更、遮光・防音性の高いカーテンやブラインドの設置など。10万円~30万円。
- 収納の拡充: ウォークインクローゼットやクローゼットの新設・拡張。20万円~80万円。
- 断熱・防音対策: 内窓の設置や壁への断熱材・吸音材の追加など。
外壁・屋根(戸建ての場合)
建物の寿命に直結する重要なメンテナンス工事です。
- 費用相場: 100万円~300万円
- 工事内容別の費用目安:
- 外壁塗装: 80万円~150万円。足場代込み。使用する塗料の耐久性(シリコン系で10年〜15年、フッ素系で15年〜20年)が価格に影響します。
- 屋根リフォーム: 80万円~200万円。足場代込み。既存の屋根材の上から新しい屋根材を被せる「カバー工法」は、廃材が出ない分、葺き替えよりも安価になる傾向があります。
- ポイント: 外壁と屋根の工事は、高所作業用の足場を組む必要があるため、同時に行うのが最も効率的です。別々に行うと、その都度足場代がかかってしまい、トータルコストが割高になります。
部分リノベーションは、予算やライフステージに合わせて、必要な箇所から手を入れていけるのが大きなメリットです。まずは最も改善したい場所の優先順位を決め、具体的なプランと見積もりを検討してみましょう。
リノベーション費用を安く抑える7つのコツ
理想の住まいを追求すれば、リノベーション費用は際限なく膨らんでしまいがちです。しかし、いくつかのポイントを押さえることで、質を落とさずにコストを賢く削減することが可能です。ここでは、リノベーション費用を安く抑えるための具体的な7つのコツを紹介します。
① 優先順位を決め、こだわる部分を絞る
リノベーションを成功させる上で最も重要なのが、要望に優先順位をつけることです。「絶対に譲れないこと(Must)」と「できれば実現したいこと(Want)」を家族で話し合い、明確にリストアップしましょう。
例えば、以下のように整理します。
- Must(絶対に譲れない):
- 対面式のキッチンにして、子供の様子を見ながら料理したい。
- 冬の寒さが厳しいので、リビングの窓は断熱性の高い二重窓にしたい。
- 収納が少ないので、大容量のウォークインクローゼットが欲しい。
- Want(できれば実現したい):
- 床材は無垢のフローリングにしたい。
- 浴室にテレビをつけたい。
- 玄関の壁をデザインタイルにしたい。
このように優先順位を決めれば、予算がオーバーしそうになった時に、「Want」の項目から見直すことで、計画全体を破綻させることなくコスト調整ができます。「すべてを最高級に」と考えるのではなく、「お金をかける部分」と「コストを抑える部分」にメリハリをつけることが、賢い予算配分の秘訣です。
② 設備のグレードを見直す
キッチン、浴室、トイレなどの設備機器は、リノベーション費用の中でも大きな割合を占めます。最新・最高級のモデルは魅力的ですが、本当にその機能が必要か、一度立ち止まって考えてみましょう。
- ワンランク下のモデルを検討する: 各メーカーは、ハイグレード、ミドルグレード、スタンダードグレードといった価格帯の異なるシリーズを用意しています。デザインや基本的な機能は同じでも、素材や付加機能の違いで価格が大きく変わります。自分たちの使い方に合った、コストパフォーマンスの高いモデルを選ぶことが重要です。
- 機能を絞り込む: 例えば、浴室暖房乾燥機は本当に必要か、キッチンの食洗機は海外製の大型モデルでなくても良いのではないか、といった視点で見直すことで、数十万円のコストダウンに繋がることもあります。
- 施主支給を検討する: 照明器具、水栓、ドアノブ、タオル掛けといった部材を、施主が自らインターネットなどで購入し、リノベーション会社に取り付けだけを依頼する方法を「施主支給」と呼びます。中間マージンをカットできるため、コストを抑えられる可能性があります。ただし、製品の保証責任は施主自身が負う、製品の納期管理が必要、取り付けに対応してくれない会社もある、といったデメリットも理解しておく必要があります。必ず事前にリノベーション会社に相談しましょう。
③ 既存のものを活かし、間取り変更は最小限にする
「使えるものは活かす」という視点も、コスト削減に大きく貢献します。
- 既存の間取りを活かす: 間取り変更は、壁の解体・新設、電気配線や照明の移設、床や天井の補修など、多岐にわたる工事が必要となり、費用が増大する最大の要因の一つです。特に水回り(キッチン、浴室、トイレ)の移動は、給排水管の工事が大規模になり、費用が跳ね上がります。既存の間取りをベースに、家具の配置や内装の工夫で使いやすさを向上させる方法を検討してみましょう。
- 既存の建具や部材を再利用する: 状態の良い柱や梁、ドア、窓などは、塗装し直したりデザインを少し変えたりするだけで、新しい空間に馴染む魅力的なパーツとして再利用できます。これも解体費用や新規購入費用を削減する有効な手段です。
④ 部分的にDIYを取り入れる
すべての工事をプロに任せるのではなく、自分たちでできる範囲の作業をDIYで行うことで、人件費を節約できます。
- DIYにおすすめの作業:
- 壁の塗装: 比較的簡単で、部屋の印象を大きく変えられます。家族や友人と一緒に作業すれば、良い思い出にもなります。
- 棚の取り付け: 簡単な収納棚や飾り棚の設置。
- 既存設備の解体: 簡単な棚の撤去など、専門的な知識が不要な範囲。
- 注意点:
- プロに任せるべき領域: 電気工事、ガス工事、水道工事、構造に関わる工事は、資格が必要であったり、安全上のリスクが高かったりするため、絶対にDIYで行ってはいけません。
- 仕上がりの質: 当然ながら、プロのような完璧な仕上がりは期待できません。DIYに挑戦する際は、多少の粗は「味」として楽しめるくらいの気持ちで臨むことが大切です。
- リノベーション会社への事前相談: DIYを取り入れたい場合は、必ず契約前にリノベーション会社に相談し、どの範囲までなら可能か、工事の工程にどう影響するかを確認しましょう。
⑤ 国や自治体の補助金・助成金制度を活用する
リノベーションの内容によっては、国や自治体が実施している補助金・助成金制度を利用できます。返済不要のお金が支給されるため、費用負担を大幅に軽減できる可能性があります。
- 主な対象工事: 省エネ改修(断熱、高効率給湯器)、耐震改修、バリアフリー改修(手すり設置、段差解消)、同居対応改修など。
- 代表的な国の制度:
- 子育てエコホーム支援事業: 省エネ改修などを行う場合に補助が受けられます。(※制度の名称や内容は年度によって変わります)
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業: 住宅の性能向上や長寿命化に資するリフォームに対して補助が出ます。
- 自治体の制度: 各市区町村でも、独自の補助金制度を設けている場合があります。「(お住まいの市区町村名) リフォーム 補助金」などで検索し、ウェブサイトを確認してみましょう。
- 注意点: これらの制度は、工事契約前や着工前に申請が必要な場合がほとんどです。また、予算に上限があり、早期に受付を終了することもあります。リノベーションを計画する早い段階で情報を集め、リノベーション会社に相談することが重要です。
⑥ 減税制度を利用する
特定の要件を満たすリノベーションを行った場合、所得税や固定資産税が減額される制度があります。
- 住宅ローン減税(リフォーム): 10年以上のローンを組んでリフォームした場合、年末のローン残高の一定割合が所得税から控除されます。
- リフォーム促進税制: ローンを利用しない場合でも、耐震、バリアフリー、省エネ、同居対応、長期優良住宅化リフォームを行った場合に、その年の所得税から一定額が控除されます。
- 固定資産税の減額措置: 耐震、バリアフリー、省エネ改修を行った場合、工事完了の翌年度分の固定資産税が減額されます。
これらの制度を利用するには、工事内容を証明する書類などが必要になります。確定申告の手続きが必要になるため、リノベーション会社や税務署に詳細を確認しましょう。
⑦ 複数の会社から相見積もりを取る
適正な価格で質の高い工事を行ってくれる会社を見つけるために、複数の会社(できれば3社程度)から見積もりを取る「相見積もり」は必須です。
- 比較するポイント:
- 総額だけでなく、内訳もチェック: 「一式」という表記が多い見積もりは要注意です。どのような工事にいくらかかるのか、単価や数量が明記されているかを確認しましょう。
- 提案内容: 同じ要望を伝えても、会社によって提案されるプランは異なります。自分たちの理想をより良く形にしてくれる提案かを見極めます。
- 担当者の対応: 質問にていねいに答えてくれるか、こちらの要望をしっかり汲み取ってくれるかなど、担当者との相性も重要な判断基準です。
相見積もりを取ることで、費用の相場感が養われ、各社の強みや特徴も見えてきます。手間はかかりますが、後悔しないリノベーションのためには欠かせないプロセスです。
リノベーションの資金計画とローンの基礎知識
リノベーションにはまとまった資金が必要です。自己資金をいくら用意し、不足分をどのようにローンで補うか、現実的な資金計画を立てることがプロジェクトの成功を左右します。ここでは、資金計画とローンの基本的な知識について解説します。
自己資金はどのくらい必要?
リノベーションにかかる費用をすべてローンで賄うことも可能ですが、一般的には総費用の10%〜30%程度の自己資金(頭金)を用意することが推奨されます。
- 自己資金を用意するメリット:
- ローン借入額を減らせる: 借入額が少なければ、毎月の返済額が軽くなり、支払う利息の総額も減ります。
- ローンの審査に通りやすくなる: 自己資金を用意できることは、金融機関に対して返済能力の高さを示す材料となり、審査で有利に働くことがあります。
- 諸費用に対応できる: ローンは基本的に「工事費」を対象とするものが多く、登記費用や印紙税、引越し代といった「諸費用」は現金での支払いが必要になる場合があります。諸費用分は自己資金でカバーできると安心です。
例えば、1,000万円のリノベーションを計画する場合、100万円〜300万円程度の自己資金を目標に準備を進めると良いでしょう。もちろん、これはあくまで目安であり、家計の状況やライフプランに合わせて無理のない範囲で設定することが大切です。「いくらまでなら自己資金として出せるか」を最初に確定させることで、リノベーションの総予算の上限も見えてきます。
利用できるローンの種類と特徴
自己資金で足りない分は、ローンを利用して賄うことになります。リノベーションで利用できるローンは、主に「リフォームローン」と「住宅ローン(リフォーム一体型)」の2種類です。それぞれに特徴があるため、自分の状況に合わせて最適なものを選びましょう。
リフォームローン
リフォームローンは、その名の通り、リフォームやリノベーションの資金に特化したローンです。
- 特徴:
- 無担保・保証人不要なことが多い: 担保となる不動産が不要なため、手続きが比較的スピーディーで、審査のハードルも住宅ローンに比べて低い傾向があります。
- 借入可能額が比較的低い: 一般的に500万円〜1,000万円程度が上限とされています。
- 借入期間が短い: 最長でも10年〜15年程度と、返済期間が短めに設定されています。
- 金利が比較的高め: 住宅ローンに比べると金利は高く、年利2%〜5%程度が相場です。
リフォームローンが向いているケース:
- 工事費用が比較的少額(数百万程度)な部分リノベーション。
- すでに住宅ローンを完済しており、担保にしたくない場合。
- 手続きを早く済ませたい場合。
- 中古物件の購入は伴わず、今住んでいる家をリノベーションする場合。
住宅ローン(リフォーム一体型)
住宅ローン(リフォーム一体型)は、中古物件の購入費用とリノベーション費用をまとめて一つの住宅ローンとして借り入れることができる商品です。
- 特徴:
- 金利が低い: リフォームローンに比べて金利が大幅に低く、年利0%台〜1%台が主流です。総支払額を大きく抑えることができます。
- 借入期間が長い: 最長35年など、長期での返済計画が立てられます。これにより、毎月の返済額を低く抑えることが可能です。
- 借入可能額が高い: 物件価格とリノベーション費用を合算した高額な借り入れが可能です。
- 審査が厳しい: 担保評価や個人の信用情報など、リフォームローンよりも審査基準は厳しくなります。また、物件の売買契約と工事請負契約を同時に進める必要があり、手続きが煩雑になることがあります。
住宅ローン(リフォーム一体型)が向いているケース:
- 中古物件を購入して、大規模なリノベーション(フルリノベーションなど)を行う場合。
- 総額が1,000万円を超えるような高額なリノベーションを行う場合。
- 月々の返済負担をできるだけ軽くしたい場合。
ローンの種類 | 金利 | 借入期間 | 借入限度額 | 担保 | 審査 |
---|---|---|---|---|---|
リフォームローン | 高め (2%~5%) | 短め (最長10~15年) | 低め (~1,000万円) | 不要なことが多い | 比較的やさしい |
住宅ローン(一体型) | 低め (0%台~1%台) | 長め (最長35年) | 高め | 必要 | 厳しい |
どちらのローンを選ぶかによって、総支払額は数百万円単位で変わってきます。特に中古物件購入とセットでリノベーションを考えている場合は、低金利の恩恵が大きい「住宅ローン(リフォーム一体型)」を第一候補として検討するのがセオリーです。金融機関によって商品の内容や条件は異なるため、複数の銀行に相談し、シミュレーションをしてもらうことをお勧めします。
リノベーション費用で注意すべきポイント
綿密に資金計画を立てたつもりでも、予期せぬ事態で費用が膨らんでしまうことがあります。リノベーション費用に関して、特に注意すべき3つのポイントを解説します。これらを事前に理解し、対策を講じておくことが、トラブルを未然に防ぎ、安心してプロジェクトを進めるために不可欠です。
想定外の追加費用が発生するケース
リノベーション、特に築年数が古い物件のフルリノベーションでは、解体工事を始めてから初めて発覚する問題が少なくありません。これらは初期の見積もりには含まれていないため、追加費用として請求されることになります。
- 主な追加費用の発生要因:
- 構造躯体の劣化・腐食: 壁や床を剥がしたところ、雨漏りが原因で柱や土台が腐っていた、シロアリの被害にあっていた、といったケースです。構造の安全性を確保するために、部材の交換や補強工事が必須となり、数十万円〜200万円以上の追加費用がかかることがあります。
- 断熱材の欠損: 図面では断熱材が入っているはずが、実際には入っていなかったり、不十分だったりするケース。快適な温熱環境を確保するために、断熱材の充填が必要になります。
- アスベスト(石綿)の含有: 2006年以前に建てられた建物では、壁や天井、配管の断熱材などにアスベストが使用されている可能性があります。アスベストの除去作業は専門の業者による厳重な管理下で行う必要があり、数十万円〜100万円以上の専門費用が発生します。
- 配管の著しい劣化: 給排水管が想定以上に錆びていたり、詰まっていたりした場合、交換が必要になります。
- 地盤の問題(戸建て): 基礎の補強工事中に地盤の弱さが判明し、地盤改良工事が必要になるケースもあります。
これらのリスクに備えるため、必ず「予備費」を確保しておくことが極めて重要です。一般的に、本体工事費の10%〜20%程度を予備費として予算に組み込んでおけば、万が一の事態にも慌てずに対処できます。1,000万円の工事なら、100万円〜200万円は不測の事態のために取っておく、という考え方です。
物件価格とリノベーション費用のバランス
中古物件を購入してリノベーションを行う場合、「物件価格」と「リノベーション費用」のトータルコストを常に意識する必要があります。
- 「総額」で近隣の新築物件と比較する: 例えば、「2,500万円の中古マンション+1,500万円のリノベーション費用」で総額が4,000万円になったとします。この時、近隣で同程度の広さの新築マンションが4,200万円で販売されていたらどうでしょうか。この200万円の差額で「自分たちの理想を詰め込んだオーダーメイドの住まい」が手に入るなら価値がある、と考えることもできます。一方で、リセールバリュー(将来売却する際の価値)を重視するなら、新築の方が有利な場合もあります。「中古物件価格+リノベーション費用」が、周辺の新築物件価格を大きく上回ってしまわないか、という視点は持っておくべきです。
- 物件の「安さ」だけで選ばない: 格安で売りに出されている物件は、一見魅力的に見えるかもしれません。しかし、安いのには理由があります。構造的な問題を抱えていたり、法規制で大規模な改修が難しかったり、管理状態が悪かったりすることで、結果的にリノベーション費用が想定以上に膨らんでしまい、総額では割高になってしまうケースが少なくありません。物件を選ぶ際は、価格だけでなく、建物の状態や立地、管理規約などを総合的に判断することが重要です。リノベーション会社に物件探しの段階から同行してもらう「物件探し同行サービス」などを利用するのも一つの手です。
工期が長引く可能性も考慮する
リノベーションの工期は、天候や不測の事態によって遅延することがあります。
- 工期遅延の主な原因:
- 悪天候(戸建て): 外壁や屋根の工事、基礎工事などは、雨や雪、強風が続くと作業が中断し、工期が延びる原因となります。
- 追加工事の発生: 前述の、解体後に発覚した問題に対応するための追加工事が発生すると、その分工期も延長されます。
- 資材の納期遅延:ウッドショックや世界情勢の影響で、特定の建材や海外製の設備機器などの納期が遅れることがあります。
- 近隣トラブル: 騒音や振動に対するクレームなどで、一時的に工事を中断せざるを得なくなるケースも稀にあります。
工期が長引くと、仮住まいの家賃や引越しスケジュールの再調整など、さらなる追加費用や手間が発生します。特に、現在の住まいの退去日や子供の転校時期などが決まっている場合は、工期に余裕を持たせたスケジュールを組むことが不可欠です。リノベーション会社と契約する際には、工期が遅延した場合の対応(遅延損害金など)について、契約書でどのように定められているかを確認しておくことも大切です。
これらの注意点を踏まえ、余裕を持った資金計画とスケジュール管理を心がけることが、リノベーションを成功に導く鍵となります。
予算内で理想を叶えるリノベーション会社の選び方
リノベーションの成否は、パートナーとなる会社選びで9割決まると言っても過言ではありません。費用、デザイン、品質、すべてにおいて満足のいく結果を得るためには、信頼できる会社を慎重に見極める必要があります。ここでは、予算内で理想を叶えるためのリノベーション会社の選び方を4つのポイントに絞って解説します。
施工実績が豊富か確認する
まず最初にチェックすべきは、その会社の「施工実績」です。ウェブサイトの施工事例ページなどを詳しく見て、以下の点を確認しましょう。
- デザインのテイスト: 自分たちが思い描く住まいのイメージ(ナチュラル、モダン、インダストリアルなど)と、その会社が得意とするデザインの方向性が合っているか。いくら評判の良い会社でも、デザインの好みが合わなければ満足のいく提案は期待できません。
- 工事の規模と種類: 自分たちが計画しているのと同じような規模(例:70㎡マンションのフルリノベーション)や種類(例:築古戸建ての耐震・断熱改修)の実績が豊富にあるか。実績が多いということは、その分野に関するノウハウや問題解決能力が蓄積されている証拠です。
- 費用の透明性: 施工事例に、かかった費用の概算や内訳が掲載されているか。価格帯が自分たちの予算感と合っているかを確認する上で重要な手がかりになります。「この事例と似たような内容だと、いくらくらいになりますか?」と具体的に質問してみるのも良いでしょう。
気になる事例を見つけたら、ブックマークしておき、相談時に「この事例の雰囲気が好きです」と伝えることで、イメージの共有がスムーズに進みます。
保証やアフターサービスの内容をチェックする
リノベーションは、引き渡されたら終わりではありません。実際に住み始めてから、建具の不具合や設備の初期不良など、何らかの問題が発生する可能性はゼロではありません。万が一の時に、迅速かつ誠実に対応してくれる体制が整っているかを確認することは非常に重要です。
- 工事部分の保証: 会社独自の保証制度を設けているか。保証の対象となる範囲(構造、防水、内装、設備など)と保証期間(1年、5年、10年など)を具体的に確認しましょう。保証内容が書面で明確に提示されるかどうかもポイントです。
- アフターサービス: 定期点検(例:1年後、3年後、5年後など)の制度はあるか。不具合があった際の連絡先や対応フローはどのようになっているか。「何かあったらいつでも連絡してください」という口約束だけでなく、具体的な体制が整っている会社が安心です。
- リフォーム瑕疵(かし)保険への加入: 第三者機関による保険に加入している会社かどうかも、信頼性を測る一つの指標です。万が一、リノベーション会社が倒産してしまっても、保険法人から補修費用などが支払われるため、施主は保護されます。
これらの保証やアフターサービスは、会社の誠実さや工事品質に対する自信の表れでもあります。契約前に必ず詳細を確認しましょう。
担当者との相性を見極める
リノベーションは、設計から工事完了まで数ヶ月、時には1年近くかかる長いプロジェクトです。その間、密にコミュニケーションを取りながら二人三脚で進めていくのが、リノベーション会社の担当者(営業、設計、プランナーなど)です。そのため、担当者との相性は、プロジェクトの満足度を大きく左右します。
- コミュニケーションの質:
- こちらの要望や不安を親身になって聞いてくれるか。
- 専門用語を避け、素人にも分かりやすい言葉で説明してくれるか。
- メリットだけでなく、デメリットやリスクについても正直に話してくれるか。
- レスポンスが早く、質問に対して的確な答えが返ってくるか。
- 提案力:
- こちらの要望をただ形にするだけでなく、プロの視点から「もっとこうしたら良くなる」というプラスアルファの提案をしてくれるか。
- 予算内で理想を実現するための、コストダウンのアイデアなどを積極的に提案してくれるか。
複数の会社と打ち合わせを重ねる中で、「この人になら安心して任せられる」「この人と一緒に家づくりをしたい」と心から思える担当者に出会えるかどうかが、会社選びの最終的な決め手になることも少なくありません。
ワンストップリノベーションを検討する
「ワンストップリノベーション」とは、中古物件探しから、資金計画(ローン)、設計・デザイン、施工までを、一つの会社が一貫してサポートしてくれるサービスです。
- メリット:
- 手間と時間の削減: 不動産会社、銀行、設計事務所、工務店など、複数の窓口とやり取りする必要がなく、すべての窓口が一つにまとまるため、施主の手間が大幅に省けます。
- 連携がスムーズ: 物件探しとリノベーションのプロが連携するため、「購入したけど、やりたいリノベーションができなかった」という失敗を防げます。リノベーションに適した物件を効率的に探すことができます。
- ローン手続きが容易: 物件購入費用とリノベーション費用をまとめる「リフォーム一体型住宅ローン」の利用がスムーズに進められます。
- 総予算の管理がしやすい: 物件価格とリノベーション費用を合わせた総額を常に把握しながら計画を進められるため、資金計画が立てやすくなります。
- デメリット:
- 会社の選択肢: ワンストップリノベーション会社という枠の中で探すことになるため、物件探しや設計を別々に依頼する場合に比べて、会社の選択肢は限られます。
- 担当領域の専門性: 各分野の専門家が揃っていますが、設計事務所や工務店など、特定の分野に特化した会社と比べると、デザインや施工の専門性で劣る可能性もゼロではありません。
特に、中古物件を購入してリノベーションをしたいと考えている人にとっては、ワンストップリノベーションは非常に効率的で心強いサービスです。多くの会社が無料相談会やセミナーを実施しているので、まずは話を聞いてみることをお勧めします。
おすすめのリノベーション会社・サービス
ここでは、豊富な実績と独自の強みを持つ、代表的なリノベーション会社・サービスを5社紹介します。各社の特徴を比較し、自分に合った会社を見つけるための参考にしてください。
(※各社のサービス内容や情報は、記事執筆時点のものです。最新の情報は各社公式サイトでご確認ください。)
リノベる。
「リノベる。」は、ワンストップリノベーションの業界を牽引するリーディングカンパニーの一つです。全国にショールームを展開し、豊富な実績とデータに基づいたサービスを提供しています。
- 特徴:
- 国内最大級の実績: 累計7,000戸以上の設計・施工実績を誇り、多種多様なノウハウが蓄積されています。(参照:リノベる。公式サイト)
- ワンストップサービス: 物件探しから設計・施工、インテリア提案、ローン相談まで、専門家チームがトータルでサポートします。
- スマートホーム提案: 自社開発のスマートホームサービス「eNe(エネ)る」も提供しており、IoTを活用した快適でエコな暮らしを提案しています。
- 専用アプリ: 施主とスタッフが情報共有するための専用アプリがあり、打ち合わせの記録や工事の進捗をいつでも確認できるため、コミュニケーションがスムーズです。
- 向いている人: 初めてのリノベーションで何から始めたら良いか分からない人、実績豊富で安定したサービスを求める人、全国規模で物件を探したい人におすすめです。
nuリノベーション
「nuリノベーション(エヌユーリノベーション)」は、デザイン性の高さに定評がある、オーダーメイドリノベーションに特化したサービスです。
- 特徴:
- 高いデザイン性: 「自分らしい空間」をコンセプトに、施主一人ひとりのライフスタイルや価値観を丁寧にヒアリングし、自由な発想でデザインを提案します。ウェブサイトに掲載されている事例は、洗練されたものが多く、デザインにこだわりたい層から強い支持を得ています。
- オーダーメイドへのこだわり: 決まったプランはなく、ゼロから設計士と一緒に理想の住まいを創り上げていくスタイルです。
- ワンストップサービス: 物件探しから資金計画、設計、施工までを一貫してサポート。リノベーションを前提とした物件探しに強みがあります。
- 向いている人: デザインに徹底的にこだわりたい人、ありきたりな間取りではなく、自分だけのオリジナルな空間を実現したい人、都心部を中心に物件を探している人に向いています。
ひかリノベ
「ひかリノベ」は、物件探しからリノベーション、さらにインテリアやIoT、スマートホームまでをトータルで提案するワンストップサービスです。
- 特徴:
- 住まいのトータル提案: 「リノベーション+インテリア」をサービスの核としており、空間に合わせた家具や照明、カーテンまでをコーディネーターが提案してくれます。引っ越したその日から、デザインに統一感のあるおしゃれな暮らしを始められます。
- 性能向上リノベーション: デザインだけでなく、断熱や耐震といった住宅性能の向上にも力を入れています。見えない部分の安心・快適も重視する姿勢が特徴です。
- 定額制プラン: 仕様やグレードがある程度決まった定額制プランも用意されており、予算の見通しが立てやすい選択肢もあります。
- 向いている人: インテリアコーディネートまで含めてプロに任せたい人、デザインと住宅性能の両方を重視したい人、予算を明確にして計画を進めたい人におすすめです。
スタイル工房
「スタイル工房」は、自然素材を活かした心地よい空間づくりを得意とする、一級建築士事務所を母体としたリノベーション会社です。
- 特徴:
- 自然素材へのこだわり: 無垢材のフローリング、珪藻土や漆喰の壁など、体に優しく、経年変化を楽しめる自然素材を積極的に提案。温かみのあるナチュラルなデザインを好む人に人気です。
- プランナーと設計施工管理者によるチーム制: 最初の相談からアフターフォローまで、同じチームが担当するため、情報伝達がスムーズで、施主の思いが現場に伝わりやすい体制です。
- 高い設計力: 一級建築士事務所としてのノウハウを活かし、デザイン性だけでなく、暮らしやすさや機能性を両立させた設計を提案します。
- 向いている人: 自然素材を使ったナチュラルな家づくりがしたい人、一人の担当者とじっくり向き合って家づくりを進めたい人、設計の質を重視する人に向いています。対応エリアは首都圏が中心です。
LOHAS studio(ロハススタジオ)
「LOHAS studio」は、自然素材やパッシブデザインを取り入れた、健康的で環境にも配慮したリノベーションを提供する会社です。
- 特徴:
- パッシブデザイン: 機械設備に頼りすぎず、太陽の光や熱、風といった自然エネルギーを最大限に活用して、夏は涼しく冬は暖かい快適な室内環境を作る「パッシブデザイン」を得意としています。光熱費の削減にも繋がります。
- 自然素材の活用: 無垢材や漆喰、セルロースファイバー(断熱材)など、厳選された自然素材を使用し、健康的で心地よい空間を追求しています。
- デザインコンテスト受賞歴多数: 国内外のデザインコンテストで数多くの賞を受賞しており、そのデザイン力と提案力は高く評価されています。(参照:LOHAS studio公式サイト)
- 向いている人: 健康や環境に配慮した家づくりに関心がある人、光熱費を抑えたい人、デザイン性と性能を両立させたい人におすすめです。