住まいの快適性や機能性を向上させたいと考えたとき、「リフォーム」と「リノベーション」という二つの言葉を耳にする機会は多いでしょう。しかし、この二つの言葉の違いを正確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。「古くなったキッチンを新しくしたい」「子供の成長に合わせて間取りを変えたい」といった具体的な要望はあっても、それがリフォームとリノベーションのどちらに該当するのか、どちらを選ぶべきなのか迷ってしまうことも少なくありません。
この記事では、理想の住まいづくりを実現するために不可欠な、リノベーションとリフォームの根本的な違いを徹底的に解説します。それぞれの意味や定義から、工事内容、費用相場、工事期間、さらには利用できるローンや税制優遇制度まで、あらゆる角度から比較検討していきます。この記事を読めば、あなたの目的や予算に最適な選択肢がどちらなのかを明確に判断できるようになるはずです。
中古物件の購入を検討している方や、現在の住まいに何らかの不満を抱えている方は、ぜひ最後までお読みください。違いを正しく理解し、後悔のない住まいづくりへの第一歩を踏み出しましょう。
目次
【比較表】リノベーションとリフォームの違いが一目でわかる
まずはじめに、リノベーションとリフォームの主な違いを一覧表にまとめました。これから詳しく解説する内容の全体像を掴むために、ぜひご活用ください。
比較項目 | リフォーム (Reform) | リノベーション (Renovation) |
---|---|---|
意味・目的 | 原状回復・修復 老朽化・劣化した部分を新築当初の状態に戻すことが主な目的。「マイナスをゼロに戻す」イメージ。 |
刷新・付加価値の創造 既存の建物に大規模な改修を加え、新たな機能や価値を付け加えることが目的。「ゼロをプラスにする」イメージ。 |
工事内容 | 部分的な設備の交換、内装の張り替え、外壁塗装、ひび割れの補修など、比較的小規模な工事。 | 間取りの変更、スケルトン化しての全面改修、断熱・耐震性能の向上、デザインの一新など、大規模で抜本的な工事。 |
費用相場 | 数十万円~数百万円 工事内容により大きく変動。部分的な工事なら比較的低コストで可能。 |
数百万円~数千万円 工事の規模や内容によるが、一般的に高額になる傾向。坪単価で計算されることも多い。 |
工事期間 | 数日~数週間 工事範囲が限定的なため、比較的短期間で完了する。 |
数ヶ月単位(設計期間含む) 設計に2~4ヶ月、工事に3~6ヶ月程度かかるのが一般的。 |
設計の自由度 | 低い 既存の間取りや構造を維持するため、デザインや機能の変更には制約が多い。 |
高い 間取りや内装デザインを自由に設計可能。ライフスタイルに合わせた住空間を創造できる。 |
資産価値 | 維持・回復が中心。大きな向上は期待しにくい。 | 性能やデザイン性の向上により、資産価値が向上する可能性がある。 |
利用できるローン | ・リフォームローン(無担保型が多い) ・住宅ローン(条件による) |
・住宅ローン(リフォーム一体型) ・リフォームローン |
向いている人 | ・設備の不具合を解消したい ・内装をきれいにしたい ・費用と工期を抑えたい |
・間取りを大きく変えたい ・デザインにこだわりたい ・住宅性能を向上させたい |
このように、リフォームとリノベーションは似ているようで、その目的から規模、費用まで大きく異なります。どちらが良い・悪いというわけではなく、ご自身の住まいに対する要望やライフプラン、予算に合わせて最適な方法を選択することが重要です。以降の章で、それぞれの項目をさらに詳しく掘り下げていきます。
リノベーションとリフォームの基本的な意味の違い
言葉の響きは似ていますが、「リフォーム」と「リノベーション」の根本的な意味は大きく異なります。この違いを理解することが、適切な選択をするための第一歩です。ここでは、それぞれの言葉が持つ本来の意味と、公的な機関による定義について詳しく解説します。
リフォームとは老朽化した部分を元の状態に戻すこと
リフォーム(Reform)という言葉は、英語で「改良・改善する」といった意味を持ちますが、日本の住宅業界では一般的に「老朽化した建物を新築に近い状態に回復させること」を指します。つまり、壊れたり、汚れたり、劣化した部分を修理・修繕し、元の機能や見た目を取り戻すための工事です。
イメージとしては、「マイナスの状態をゼロの状態に戻す」という原状回復の意味合いが強いと言えるでしょう。
【リフォームの具体例】
- 汚れた壁紙や床材を新しいものに張り替える
- 古くなったキッチンやユニットバス、トイレなどの設備を新しいものに交換する
- 剥がれてきた外壁や屋根を再塗装する
- 給湯器など、故障した設備を修理・交換する
- 雨漏りやひび割れを補修する
これらの工事は、建物の基本的な構造や間取りには手を加えず、主に表面的な部分や設備の改善が中心となります。住みながらの工事が可能なケースも多く、比較的短期間かつ低コストで住まいの問題を解決できるのが特徴です。
リノベーションとは新たな価値を加える大規模な改修のこと
一方、リノベーション(Renovation)は、英語で「刷新・修復」を意味し、住宅業界では「既存の建物に大規模な改修を行い、新築時以上の新たな価値を付け加えること」を指します。単に元に戻すのではなく、現代のライフスタイルや住む人の好みに合わせて、住まいの機能や性能を全面的に向上させる工事です。
こちらは、「ゼロの状態をプラスの状態にする」という付加価値の創造が目的です。既存の枠組みにとらわれず、住まいを根本からつくり変えるというニュアンスが強くなります。
【リノベーションの具体例】
- 壁を取り払ってリビングダイニングを広くするなど、間取りを全面的に変更する
- 建物の骨組み(構造躯体)だけを残して内外装をすべて解体する「スケルトンリフォーム」
- 耐震補強工事を行い、建物の安全性を高める
- 断熱材を追加したり、高性能な窓に交換したりして、省エネ性能(断熱性・気密性)を向上させる
- カフェ風、北欧風など、内装デザインをコンセプトに合わせて一新する
- オフィスや店舗として使われていた物件を、居住用に用途変更(コンバージョン)する
リノベーションは、建物の構造に関わるような大規模な工事を含むため、費用も工期もリフォームより大きくなるのが一般的です。しかしその分、新築同様、あるいはそれ以上の自由度で理想の住空間を実現できるという大きな魅力があります。
国土交通省による定義の違い
公的な機関である国土交通省も、リフォームとリノベーションについて言及しています。平成24年に発表された「中古住宅・リフォームトータルプラン」の中では、両者の違いについて明確な定義は避けつつも、その目指す方向性の違いを示唆しています。
この資料では、従来の「リフォーム」が持つ「不具合箇所の修繕」というイメージから脱却し、住宅の性能を向上させ、資産価値を高めるような質の高い改修を促進する必要性が述べられています。そして、そのような質の高い改修を「リノベーション」と位置づけ、その普及を目指す方針が示されています。
つまり、国土交通省の考え方としても、リノベーションは単なる修繕に留まらず、住宅の価値そのものを高めるための積極的な投資であると捉えられていることがわかります。(参照:国土交通省「中古住宅・リフォームトータルプラン」)
この背景には、日本の住宅ストック(既存住宅)を有効活用し、長く快適に住み続けられる社会を目指すという国の政策があります。新築偏重の社会から、良質な中古住宅をリノベーションして住み継ぐ文化への転換を促しているのです。
一般社団法人リノベーション協議会による定義
リノベーションの品質基準を定め、その普及を推進している「一般社団法人リノベーション協議会」では、リノベーションをより明確に定義しています。
同協議会では、リノベーションを「機能、価値の再生のための改修」「その家での暮らし全体に対処した、包括的な改修」と定義しています。
さらに、同協議会が定める「適合リノベーション住宅」という基準では、以下の3つのポイントが重要視されています。
- 検査: 建物に潜むリスク(雨漏り、シロアリ、構造の腐食など)を専門家が事前に検査する。
- 工事: 発見されたリスクを解消するための必要な改修工事を行う。
- 保証: 工事完了後、重要インフラ(給排水管、ガス管など)に対して保証を付ける。
(参照:一般社団法人リノベーション協議会ウェブサイト)
この定義からもわかるように、リノベーションは見た目をきれいにするだけでなく、建物の安全性や機能性をきちんと確保し、長期的に安心して暮らせる状態にすることが本質であると言えます。特に中古物件をリノベーションする際には、こうした見えない部分の品質確保が極めて重要になります。
このように、リフォームとリノベーションは、その言葉が指し示す工事の規模や目的に明確な違いがあります。自分の住まいに対する要望が「不満の解消」なのか、それとも「理想の実現」なのかを考えることが、両者を区別する良い指標となるでしょう。
リノベーションとリフォームの具体的な違いを5つの観点で比較
リノベーションとリフォームの基本的な意味の違いを理解したところで、次はより具体的な側面から両者を比較してみましょう。ここでは「工事内容」「費用相場」「工事期間」「メリット・デメリット」「利用できるローン」という5つの観点で、その違いを詳しく解説します。
① 工事内容
最も大きな違いが現れるのが、実際の工事内容です。どこまで手を入れるかによって、住まいは大きく変わります。
リフォームの主な工事内容
リフォームは、前述の通り「原状回復」を目的とした部分的な修繕・交換が中心です。建物の構造体には手を加えず、主に内装や設備の更新を行います。
- 内装工事: 壁紙(クロス)の張り替え、床材(フローリング、クッションフロアなど)の張り替え、畳の表替え・交換
- 水回り設備交換: キッチン、浴室(ユニットバス)、トイレ、洗面化粧台の交換
- 建具の交換: 室内ドア、ふすま、障子の交換
- 外装工事: 外壁の塗装、屋根の塗装・葺き替え、雨樋の交換
- その他: 給湯器の交換、網戸の張り替え、シロアリの防除工事など
これらの工事は、それぞれ独立して行うことが可能です。「今回はキッチンの交換だけ」「来年は外壁塗装を」といったように、予算や必要性に応じて段階的に進めることができるのがリフォームの特徴です。
リノベーションの主な工事内容
リノベーションは、「新たな価値の創造」を目指すため、より大規模で抜本的な工事が伴います。
- 間取り変更: 壁の撤去・新設による部屋数の変更、リビング・ダイニング・キッチン(LDK)の一体化、和室から洋室への変更
- スケルトンリフォーム(フルリノベーション): 床・壁・天井をすべて解体し、建物の骨組み(構造躯体)だけの状態にしてから、内装や設備を全面的に再構築する工事
- 構造補強: 耐震補強(筋交いの追加、構造用合板の設置、金物の補強など)
- 性能向上工事:
- 断熱改修: 壁・床・天井への断熱材の充填、高性能な断熱サッシ(二重窓・三重窓)への交換
- 気密性向上: 気密シートの施工
- インフラ(設備配管)の更新: 給排水管、ガス管、電気配線などの全面的刷新
- デザインの全面的変更: 内装材、照明計画、造作家具などを含め、統一されたコンセプトで空間全体をデザイン
- 用途変更(コンバージョン): 事務所や倉庫などを住宅に変更する
リノベーションでは、目に見える部分だけでなく、普段は見えない壁の中や床下まで手を入れることで、住まいの根本的な課題(冬の寒さ、地震への不安など)を解決し、快適性や安全性を飛躍的に高めることができます。
② 費用相場
工事内容が大きく異なるため、当然ながら費用相場にも大きな差が生まれます。
リフォームの費用相場
リフォームは工事範囲が限定的なため、費用は比較的安価に収まる傾向があります。ただし、使用する建材や設備のグレードによって価格は大きく変動します。
工事箇所 | 費用相場の目安 |
---|---|
トイレ交換 | 10万円 ~ 40万円 |
洗面化粧台交換 | 10万円 ~ 30万円 |
ユニットバス交換 | 60万円 ~ 150万円 |
キッチン交換 | 50万円 ~ 150万円 |
壁紙(6畳) | 4万円 ~ 8万円 |
フローリング(6畳) | 8万円 ~ 20万円 |
外壁塗装(30坪) | 80万円 ~ 150万円 |
屋根塗装(30坪) | 40万円 ~ 80万円 |
これらの工事を複数組み合わせることで、総額は100万円〜500万円程度になるのが一般的です。
リノベーションの費用相場
リノベーションは大規模な工事となるため、費用は高額になります。戸建てかマンションか、また工事の範囲(フルリノベーションか部分リノベーションか)によって大きく異なります。
- マンションの場合:
- 全面リノベーションの総額: 500万円~1,500万円以上が一般的。
- m²単価の目安: 10万円~20万円/m²。例えば70m²のマンションなら700万円~1,400万円程度。
- 戸建ての場合:
- 全面リノベーションの総額: 800万円~2,500万円以上。耐震補強や外装工事も含むとさらに高額に。
- 坪単価の目安: 40万円~80万円/坪。例えば30坪の戸建てなら1,200万円~2,400万円程度。
特に、内装をすべて解体するスケルトンリノベーションの場合は、費用が高くなる傾向にあります。また、既存の建物の状態が悪く、想定外の補修(構造体の腐食、雨漏りなど)が必要になった場合は、追加費用が発生することもあります。総予算に対して10~20%程度の予備費を見込んでおくことが賢明です。
③ 工事期間
工事期間も、その規模に比例して大きく異なります。仮住まいが必要になるかどうかの判断にも関わる重要なポイントです。
リフォームの工事期間の目安
部分的な工事が中心のリフォームは、工事期間も比較的短く済みます。
- トイレ、洗面台の交換: 半日~1日
- キッチンの交換: 2日~5日
- ユニットバスの交換: 3日~1週間
- 内装(壁紙・床)の張り替え: 1部屋あたり1日~3日
- 外壁・屋根塗装: 10日~3週間(天候による)
水回り設備の交換など、数日間水が使えなくなる工事はありますが、多くのリフォームは住みながらでも行うことが可能です。
リノベーションの工事期間の目安
リノベーションは、設計から工事完了まで数ヶ月単位の期間を要します。
- 相談・プランニング・設計: 2ヶ月~4ヶ月
- 見積もり・契約: 1ヶ月程度
- 工事期間:
- マンション: 2ヶ月~4ヶ月
- 戸建て: 3ヶ月~6ヶ月(耐震補強などを含む場合はさらに長くなることも)
トータルでは、半年から1年近くかかることも珍しくありません。工事期間中は、解体による騒音や粉塵が発生するため、基本的には仮住まいへの引っ越しが必要になります。家賃や引っ越し費用も予算に含めておく必要があります。
④ メリット・デメリット
それぞれの特徴をメリット・デメリットとして整理すると、選択の際の判断材料にしやすくなります。
リフォームのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
費用を抑えられる | デザインや間取りの自由度が低い |
工事期間が短い | 根本的な問題(断熱性、耐震性など)は解決できないことがある |
気軽に実施できる(住みながらの工事も可能) | 建物の資産価値向上には繋がりにくい |
必要な部分だけを修繕・改善できる | 見えない部分(構造体や配管)の劣化はそのまま残る可能性がある |
リノベーションのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
設計の自由度が高く、理想の住空間を実現できる | 費用が高額になる |
間取りをライフスタイルに合わせて変更できる | 工事期間が長い(仮住まいが必要) |
断熱性や耐震性など、住宅性能を向上できる | 構造上の制約(撤去できない壁や柱など)がある場合がある |
新築より費用を抑えつつ、同等以上の満足度を得られる可能性がある | 解体後に想定外の問題が見つかり、追加費用が発生するリスクがある |
住宅の資産価値を高めることができる | マンションの場合、管理規約による制約がある |
⑤ 利用できるローン
費用が高額になるリフォームやリノベーションでは、ローンの利用が一般的です。利用できるローンにも違いがあります。
リフォームローンの特徴
リフォームローンは、その名の通りリフォーム費用に特化したローンです。
- 担保: 無担保型が多いのが最大の特徴。抵当権の設定が不要なため、手続きが比較的簡単でスピーディです。
- 借入可能額: 500万円~1,000万円程度と、住宅ローンに比べて低め。
- 金利: 住宅ローンより高め(年2%~5%程度)に設定されていることが多い。
- 返済期間: 最長10年~15年程度と、比較的短い。
- 用途: 小~中規模のリフォームに適しています。
住宅ローン(リフォーム一体型)の特徴
住宅ローンは、本来住宅の購入資金を借り入れるためのものですが、リフォーム費用を合算して借りられる「リフォーム一体型」の商品があります。特に中古物件の購入と同時にリノベーションを行う際に利用されます。
- 担保: 有担保型。購入する土地と建物を担保として提供します。
- 借入可能額: 数千万円単位と高額な借り入れが可能。
- 金利: リフォームローンに比べて大幅に低い(変動金利で年0%台~、固定金利で年1%台~)。
- 返済期間: 最長35年など、長期での返済が可能。
- 用途: 中古物件購入+リノベーションや、大規模なリノベーションに適しています。
金利が低く返済期間も長いため、月々の返済負担を抑えられるのが最大のメリットですが、審査が厳しく、手続きも複雑になります。どちらのローンを利用すべきかは、工事の規模や費用、物件の状況によって変わるため、金融機関やリフォーム会社とよく相談することが重要です。
【目的別】あなたはどっち?リノベーションとリフォームの選び方
リフォームとリノベーションの違いが理解できても、いざ自分の家のこととなると「結局、うちはどちらを選べばいいのだろう?」と迷ってしまうかもしれません。ここでは、あなたの目的やライフプランに合わせて、どちらがより適しているかを判断するための具体的な指針を示します。
リフォームが向いている人の特徴
リフォームは、現在の住まいの基本的な骨格には満足しており、部分的な不満や問題を解消したい場合に最適な選択です。以下のような希望や状況に当てはまる方は、リフォームを検討するのがおすすめです。
- とにかく費用を抑えたい
最も大きな判断基準の一つが予算です。限られた予算内で最大限の効果を得たい場合、優先順位をつけて必要な箇所だけを改修するリフォームが適しています。数百万円単位の大きな出費は難しいけれど、数十万円でキッチンやトイレの使い勝手を良くしたい、といったニーズに応えられます。 - 現在の間取りに大きな不満はない
家族構成やライフスタイルに変化がなく、今の部屋の配置や広さに満足している場合は、大規模な間取り変更は不要です。古くなった内装を一新したり、老朽化した設備を交換したりするだけで、住まいの快適性は大きく向上します。 - 設備の故障や劣化など、明確な問題点を解決したい
「お風呂が寒い」「キッチンの収納が足りない」「トイレが古くて掃除が大変」といった、ピンポイントの悩みを解決したい場合には、その部分だけを対象とするリフォームが最も効率的です。問題が明確であるほど、リフォームの効果を実感しやすくなります。 - 工事期間を短くしたい、仮住まいは避けたい
仕事や子育てで忙しく、長期間の工事や引っ越しは避けたいという方にもリフォームが向いています。多くのリフォームは住みながらの工事が可能であり、生活への影響を最小限に抑えられます。 - 将来的に住み替えや建て替えを考えている
あと数年で実家に戻る予定がある、子供が独立したらもっと小さな家に住み替える計画があるなど、現在の家に長く住み続ける予定がない場合、大きな投資となるリノベーションはコストパフォーマンスが悪いかもしれません。最低限の快適性を確保するためのリフォームに留めておくのが賢明な判断と言えます。
【リフォームを選択する際のチェックポイント】
□ 今の間取りで満足しているか?
□ 解決したい問題は、設備の交換や内装の変更で解決できるか?
□ 予算は500万円以内か?
□ 長期間の工事や引っ越しは避けたいか?
□ 今の家に住む期間は10年未満か?
これらの質問に多く当てはまるなら、あなたはリフォーム向きと言えるでしょう。
リノベーションが向いている人の特徴
一方、リノベーションは、現在の住まいに根本的な変化を求め、ライフスタイルに合わせて住まいを「再構築」したい場合に最適な選択肢です。以下のような方は、リノベーションを視野に入れる価値があります。
- 間取りを自由に変更して、理想の暮らしを実現したい
「子供部屋を二つに分けたい」「壁を取り払って開放的なLDKをつくりたい」「家事動線を良くしたい」など、今の間取りがライフスタイルに合っていないと感じるなら、リノベーションが唯一の解決策です。間取りの自由度は、リノベーションの最大の魅力です。 - デザインやインテリアに徹底的にこだわりたい
雑誌に出てくるようなおしゃれな空間や、特定のデザインコンセプト(北欧、インダストリアル、和モダンなど)で統一された住まいを実現したいという強いこだわりがある場合、リノベーションが適しています。床材から壁、照明、造作家具までトータルでコーディネートすることで、自分だけのオリジナルな空間を創造できます。 - 中古物件を購入して、自分好みの住まいに変えたい
新築よりも価格を抑えられる中古物件を購入し、浮いた予算をリノベーションに充てるという選択は、近年非常に人気があります。立地は良いけれど内外装が古い物件を、自分の理想通りにフルカスタマイズできるのは、この方法ならではの醍醐味です。 - 住宅の性能(断熱性・耐震性)を根本から向上させたい
「冬は寒く夏は暑い」「大きな地震が来たら不安」といった、住宅の基本的な性能に関する悩みを抱えている場合、表面的なリフォームでは解決できません。壁や床を剥がして断熱材を入れ直したり、耐震補強を行ったりするリノベーションによって、安全で快適な暮らしを実現できます。これは、光熱費の削減や健康増進にも繋がる重要な投資です。 - 住宅の資産価値を高めたい
適切なリノベーションは、住宅の快適性だけでなく、その資産価値をも向上させる可能性があります。特に、性能向上や普遍的なデザイン性を備えたリノベーションは、将来売却する際に有利に働くことがあります。単なる消費ではなく、未来への投資と捉えることもできます。
【リノベーションを選択する際のチェックポイント】
□ 今の間取りを大きく変更したいか?
□ デザインや内装に強いこだわりがあるか?
□ 中古物件を購入して、全面的に改修する予定か?
□ 夏の暑さ・冬の寒さや、耐震性に不安を感じているか?
□ 予算は500万円以上確保できるか?
これらの質問に多く当てはまるなら、あなたの希望を叶えるのはリノベーションかもしれません。大切なのは、表面的な言葉の違いに惑わされず、自分が住まいづくりに何を求めているのかを深く見つめ直すことです。
リノベーションやリフォームで使える補助金・減税制度
リノベーションやリフォームにはまとまった費用がかかりますが、国や地方自治体が用意している補助金・助成金制度や、税金が優遇される減税制度を活用することで、負担を軽減できる場合があります。これらの制度は、省エネ性能の向上や耐震性の強化、バリアフリー化など、社会的に有益な改修を後押しすることを目的としています。制度は年度ごとに内容が変わったり、予算が上限に達すると終了したりするため、常に最新の情報を確認することが非常に重要です。
国が実施している補助金・助成金制度
国が主導する補助金制度は、全国どこに住んでいても利用できる可能性があります。近年は特に、カーボンニュートラルの実現に向けた省エネ関連の改修への支援が手厚くなっています。2024年時点での主な制度には以下のようなものがあります。
- 子育てエコホーム支援事業
エネルギー価格高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する住宅の新築や、省エネ改修等に対して支援する事業です。リフォームの場合、世帯を問わず対象となります。- 対象工事: 開口部(窓・ドア)の断熱改修、外壁・屋根・天井・床の断熱改修、エコ住宅設備の設置(太陽熱利用システム、高効率給湯器など)、子育て対応改修(ビルトイン食洗機、宅配ボックスなど)
- 補助額: 工事内容に応じて上限額が設定されており、例えば子育て世帯・若者夫婦世帯の場合は上限30万円(条件により最大60万円)。
- 注意点: 申請は工事を行う事業者が行います。また、補助額の合計が5万円未満の場合は申請できません。(参照:子育てエコホーム支援事業 公式サイト)
- 先進的窓リノベ2024事業
既存住宅の窓を高性能な断熱窓に改修する費用に対して、重点的に支援する制度です。- 対象工事: 高性能なガラスへの交換、内窓の設置、外窓の交換など。
- 補助額: 補助率は工事費用の1/2相当で、上限は200万円。非常に補助額が大きいのが特徴です。
- 注意点: 補助対象となる製品の性能グレードが厳格に定められています。(参照:先進的窓リノベ2024事業 公式サイト)
- 給湯省エネ2024事業・賃貸集合給湯省エネ2024事業
家庭のエネルギー消費で大きな割合を占める給湯分野について、高効率給湯器の導入を支援する制度です。- 対象機器: ヒートポンプ給湯機(エコキュート)、ハイブリッド給湯機、家庭用燃料電池(エネファーム)など。
- 補助額: 導入する機器に応じて定額で補助されます。(参照:給湯省エネ2024事業 公式サイト)
これらの制度は併用が可能な場合が多く、組み合わせて活用することで、より大きな補助を受けることができます。
地方自治体が実施している補助金・助成金制度
国とは別に、各都道府県や市区町村が独自に補助金・助成金制度を設けている場合も多くあります。お住まいの地域ならではの制度がないか、必ず確認しましょう。
- 制度の探し方: 「〇〇市 リフォーム 補助金」「〇〇県 耐震改修 助成金」のように、「自治体名+工事内容+補助金(助成金)」で検索するか、自治体のホームページ(住宅課、建築指導課など)を確認するのが確実です。
- 一般的な制度の例:
- 耐震改修支援: 旧耐震基準(1981年5月31日以前)の建物の耐震診断や耐震改修工事に対する補助。
- 省エネ改修支援: 太陽光発電システムの設置、断熱改修などに対する補助。
- バリアフリー改修支援: 高齢者や障害のある方が安全に暮らすための手すりの設置、段差解消などの工事に対する補助。
- 三世代同居・近居支援: 親・子・孫の三世代が同居または近くに住むための住宅改修に対する補助。
- 地域産木材の利用促進: 地元の木材を使用してリフォームする場合の補助。
これらの制度は、国の制度との併用が可能な場合と不可能な場合があります。申請条件や期間も様々なので、必ず事前に自治体の担当窓口に問い合わせることが大切です。
住宅ローン控除などの減税制度
補助金だけでなく、税金が戻ってくる・安くなる減税制度も重要なチェックポイントです。
- リフォーム促進税制(所得税の控除)
特定の性能向上リフォームを行った場合、その費用の一部が所得税から控除される制度です。ローンを利用しない自己資金での工事も対象になります。- 対象工事: 耐震、バリアフリー、省エネ、三世代同居対応、長期優良住宅化リフォームなど。
- 控除額: 工事内容によって異なり、年末のローン残高の0.7%を控除する「ローン型減税」と、標準的な工事費用額の10%を控除する「投資型減税」があります。
- 注意点: それぞれの工事に床面積や費用などの要件があります。確定申告が必要です。(参照:国税庁ウェブサイト)
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
リフォームやリノベーションで住宅ローンを利用した場合、年末のローン残高の0.7%が、最大13年間にわたって所得税(および一部住民税)から控除される制度です。- 対象: 10年以上のローンを組むこと、工事費が100万円以上であること、床面積が50㎡以上であることなどの要件があります。
- 借入限度額: 改修する住宅の省エネ性能によって異なり、性能が高いほど控除対象となる借入限度額も大きくなります。
- 固定資産税の減額措置
耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修などを行った住宅は、工事完了の翌年度分の固定資産税が減額される場合があります。- 申請: 工事完了後、原則として3ヶ月以内に市区町村の税務担当課に申告する必要があります。
これらの制度は複雑な要件が絡み合うため、リフォーム会社の担当者や税務署、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しながら進めることを強くお勧めします。賢く活用すれば、数十万円から百万円以上のメリットが生まれる可能性もあります。
中古物件を購入してリノベーション・リフォームする際の注意点
新築よりも手頃な価格で立地の良い物件を手に入れ、自分好みの空間に作り変えられる「中古物件購入+リノベーション」は、非常に魅力的な選択肢です。しかし、成功させるためには、物件選びから資金計画まで、新築購入とは異なる注意点がいくつかあります。
物件探しで気をつけること
リノベーションを前提とした物件探しでは、単に立地や価格だけでなく、「リノベーションのしやすさ」という観点が極めて重要になります。
- マンションの管理規約を必ず確認する
マンションは共用部分と専有部分に分かれており、リノベーションできるのは専有部分のみです。しかし、その専有部分の工事でさえ、管理規約によって様々な制約が設けられています。- 床材の制限: 階下への騒音を防ぐため、フローリングの使用が禁止されていたり、遮音等級(L-45など)が定められていたりする場合があります。
- 水回りの移動制限: 給排水管が床下のコンクリートスラブを貫通している場合、水回りの位置を大幅に移動できないことがあります。
- 窓や玄関ドア: これらは共用部分にあたるため、原則として交換できません。断熱性を高めたい場合は、内窓の設置などで対応することになります。
- 工事時間の制限: 工事可能な曜日や時間帯が決められていることがほとんどです。
購入前に必ず管理規約の写しを入手し、リノベーション会社にも見せて、希望する工事が可能かを確認しましょう。
- 建物の構造を理解する
特に間取り変更を考えている場合、建物の構造形式がリノベーションの自由度を大きく左右します。- ラーメン構造: 柱と梁で建物を支える構造。室内の壁は構造上重要でない「間仕切り壁」が多いため、比較的自由に撤去でき、間取り変更の自由度が高いのが特徴です。多くの分譲マンションで採用されています。
- 壁式構造: 柱や梁の代わりに、鉄筋コンクリートの壁で建物を支える構造。室内の壁が構造体そのものであるため、撤去できない「構造壁」が多く、間取り変更には大きな制約があります。低層のマンションや団地によく見られます。
戸建ての場合は、在来工法(木造軸組工法)かツーバイフォー工法(木造枠組壁工法)かによっても壁の扱いや補強方法が変わってきます。
- 新耐震基準(1981年6月1日以降)の物件を選ぶ
建築基準法は1981年に大きく改正され、それ以降の「新耐震基準」で建てられた建物は、震度6強~7程度の大地震でも倒壊しないことが求められています。これ以前の「旧耐震基準」の物件は耐震性に不安があるため、大規模な耐震補強工事が必要になる可能性が高く、費用もかさみます。また、住宅ローン控除などの税制優遇も、原則として新耐震基準を満たしていることが条件となります。
建物本体のチェックポイント(インスペクション)
中古物件は、新築と違って経年劣化が進んでいます。見た目だけではわからない建物の状態を正確に把握するために、専門家による診断が不可欠です。
- ホームインスペクション(住宅診断)の実施を強く推奨
ホームインスペクションとは、住宅診断士(ホームインスペクター)が、第三者の客観的な立場で、建物の劣化状況や欠陥の有無、改修すべき箇所などを調査することです。- 調査項目: 基礎や柱のひび割れ、構造躯体の傾き、雨漏りの痕跡、シロアリ被害の有無、給排水管の劣化状況など、多岐にわたります。
- メリット: 購入前に建物のコンディションを把握できるため、「買ってから重大な欠陥が見つかった」という最悪の事態を避けられます。また、診断結果を元に、必要な補修費用をリノベーション予算に組み込むことができます。場合によっては、売主との価格交渉の材料にもなり得ます。
- 費用: 調査内容にもよりますが、5万円~10万円程度が一般的です。後々のトラブルや追加費用を考えれば、決して高い投資ではありません。
- 特に注意すべき劣化のサイン
内見の際に、自分でもある程度チェックできるポイントがあります。- 雨漏り: 天井や壁のシミ、窓サッシ周りのカビや木部の腐食。
- 給排水管: キッチンや洗面台下の収納を開けて、配管からの水漏れの跡やサビがないか確認。
- 建物の傾き: ビー玉を床に転がしてみる、ドアや窓の開閉がスムーズか確認する。
- 基礎のひび割れ: 幅0.5mm以上の「構造クラック」は注意が必要です。
これらのサインが見られた場合は、専門家による詳細な調査が必須です。
資金計画とローンの注意点
中古リノベの資金計画は、「物件価格」と「リノベーション費用」を一体で考える必要があります。
- 総予算(物件価格+リノベ費用+諸経費)で考える
物件価格だけで予算を組んでしまうと、いざリノベーションをしようとした時にお金が足りなくなる、という失敗に陥りがちです。最初に「総額でいくらまで出せるか」を決め、そこから諸経費(仲介手数料、登記費用、ローン手数料など)を差し引き、残った金額を物件価格とリノベーション費用に配分するという考え方が重要です。 - リフォーム一体型住宅ローンの活用
前述の通り、中古物件の購入費用とリノベーション費用をまとめて低金利の住宅ローンで借りられる「リフォーム一体型ローン」が最も一般的な選択肢です。- 注意点: このローンを利用するには、物件の売買契約と同時に、リノベーションの工事請負契約を結ぶ必要があるケースが多いです。つまり、物件探しと並行してリノベーション会社を選定し、プランと見積もりを固めなければなりません。非常にタイトなスケジュールになるため、早めにリノベーション会社に相談を開始することが成功のカギとなります。
- 予備費の確保を忘れずに
中古物件のリノベーションでは、解体して初めてわかる問題(柱の腐食、雨漏り、断熱材の欠損など)が発生することが少なくありません。こうした不測の事態に対応するための予備費として、工事費の10~20%程度を必ず確保しておきましょう。予算を使い切ってしまうと、必要な補修ができなくなってしまいます。
これらの注意点を踏まえ、不動産会社とリノベーション会社と緊密に連携しながら計画を進めることが、中古リノベーションを成功に導くための最も重要なポイントです。
失敗しないリノベーション・リフォーム会社の選び方
理想の住まいづくりが成功するかどうかは、パートナーとなる会社選びにかかっていると言っても過言ではありません。しかし、設計事務所、工務店、リフォーム専門会社など、業者の種類は多岐にわたり、どこに頼めば良いのか迷ってしまうものです。ここでは、後悔しない会社選びのための具体的なポイントを解説します。
会社の種類とそれぞれの特徴
まずは、どのような種類の会社があるのかを理解し、自分の目的に合った業態を見極めましょう。
会社の種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
設計事務所 | 建築士が設計・デザインを専門に行う。施工は工務店に別途発注する「設計施工分離」が基本。 | 設計の自由度とデザイン性が非常に高い。第三者の立場で工事を監理してくれる。 | 設計料が別途かかる。施工会社との連携がうまくいかないリスクも。 |
工務店 | 地域に密着し、実際の施工を担う会社。設計から施工まで一貫して行うことが多い。 | 施工の技術力が高く、現場の対応力が良い。比較的コストを抑えやすい傾向。 | デザイン力や提案力は会社によって差が大きい。 |
リフォーム専門会社 | 大手から中小まで様々。水回りや内装など、特定の分野の小~中規模リフォームを得意とする。 | 部分的なリフォームの実績が豊富で、商品知識も多い。比較的安価なパッケージプランなどがある。 | 大規模なリノベーションやデザイン性の高い案件は不得意な場合がある。 |
リノベーション専門会社 | デザイン性の高いリノベーションや、中古物件探しから設計・施工までを一貫して行う「ワンストップサービス」に特化。 | デザイン提案力が高く、トータルコーディネートが得意。ワンストップなら窓口が一つで楽。 | 費用は比較的高額になる傾向。会社によって得意なデザインテイストがある。 |
ハウスメーカー | 自社ブランドの住宅を建てる会社。リフォーム部門を持っていることが多い。 | 自社で建てた住宅のリフォーム・リノベーションに強く、構造を熟知している安心感がある。 | 他社で建てた住宅の工事は断られるか、割高になることがある。 |
どの会社が良いという絶対的な正解はありません。「デザインに徹底的にこだわりたいなら設計事務所」「中古を買ってフルリノベしたいならワンストップのリノベーション会社」「キッチンの交換だけならリフォーム専門会社」というように、自分のやりたいことに合わせて相談先を選ぶことが最初のステップです。
会社選びで確認したい5つのポイント
相談する会社の候補がいくつか挙がったら、以下の5つのポイントを重点的にチェックして、信頼できる一社を絞り込んでいきましょう。
① 施工実績は豊富か
会社のウェブサイトや資料で、過去の施工事例を必ず確認しましょう。
- 事例の数と質: これまでどれくらいの数の工事を手がけてきたか。写真はきれいで、工事内容や費用、期間などの情報が詳しく掲載されているか。
- 自分の好みに合うか: 掲載されている事例のデザインテイストが、自分の思い描くイメージと合っているか。美的センスが合うかどうかは、満足度に直結する重要な要素です。
- 同規模・同条件の事例: 自分と同じような予算規模や、マンション・戸建て、築年数などの条件が近い事例があるか。その会社の得意分野を判断する材料になります。
② 得意な工事内容と合っているか
会社によって得意な分野は異なります。
- デザイン性: 「シンプルモダン」「自然素材」「ヴィンテージ」など、会社ごとに得意なデザインの方向性があります。
- 性能向上: 断熱改修や耐震補強といった、住宅性能を向上させる工事の実績が豊富か。専門的な知識や技術が求められる分野です。
- 特定の工事: 水回りに強い、外装が得意、造作家具の提案がうまいなど、特定の強みを持っている会社もあります。
自分の要望が、その会社の「得意技」と一致しているかを見極めることが重要です。
③ 見積書の内容は詳細で分かりやすいか
複数の会社から見積もりを取ると、その内容に大きな差があることに気づくはずです。信頼できる会社の見積書には、以下のような特徴があります。
- 項目が細かい: 「〇〇工事一式」といった大雑把な記載ではなく、「解体工事」「木工事」「内装工事」などと工種ごとに分かれ、さらにその中で「〇〇(商品名) 数量〇個 単価〇円」というように、使用する材料や設備の単価、数量が明記されています。
- 不明な点がない: 見積もり内容について質問した際に、担当者が丁寧かつ的確に説明してくれるか。専門用語ばかりでごまかそうとしないか。
- 諸経費の内訳: 現場管理費や一般管理費などの諸経費が、何に対する費用なのかが明確にされているか。
安さだけで選ぶのは危険です。安すぎる見積もりは、必要な工事が抜けていたり、後から追加費用を請求されたりするリスクがあります。
④ 保証やアフターサービスは充実しているか
工事が終わってからが本当のお付き合いの始まりです。万が一の不具合に備え、保証制度を確認しておきましょう。
- 保証内容と期間: 工事箇所ごとに、どのような保証が何年間付くのかを明記した「保証書」を発行してくれるか。
- リフォーム瑕疵保険への加入: 国土交通大臣が指定する保険法人が提供する保険です。工事中や工事後に欠陥が見つかった場合に、補修費用が保険金で支払われます。また、万が一会社が倒産してしまっても保証が受けられるという大きなメリットがあります。この保険に登録している事業者は、一定の基準を満たした信頼できる会社と言えます。
- 定期点検: 引き渡し後、1年後、2年後などに定期的な点検を実施してくれるか。
⑤ 担当者との相性は良いか
リノベーションやリフォームは、数ヶ月から時には1年近くにわたる長いプロジェクトです。その間、密にコミュニケーションを取る担当者との相性は、プロジェクトの成功を左右する非常に重要な要素です。
- 要望を正確に理解してくれるか: こちらの話を親身に聞き、要望の背景にある想いまで汲み取ろうとしてくれるか。
- 提案力があるか: こちらの要望に対して、プロならではの視点でプラスアルファの提案をしてくれるか。できないことについても、理由と代替案をきちんと示してくれるか。
- レスポンスが速く、誠実か: 質問や相談に対する返信が迅速で、丁寧な対応をしてくれるか。
「この人になら安心して任せられる」と心から思えるかどうか、自分の直感を信じることも大切です。
複数の会社から相見積もりを取る重要性
最終的に契約する会社を決める前に、必ず2~3社から相見積もりを取ることを強くお勧めします。相見積もりには、以下のようなメリットがあります。
- 適正価格がわかる: 1社だけの見積もりでは、その金額が高いのか安いのか判断できません。複数社を比較することで、工事内容に見合った適正な価格帯が見えてきます。
- 提案内容を比較できる: 同じ要望を伝えても、会社によって提案してくるプランやデザインは様々です。自分では思いつかなかったようなアイデアに出会えることもあります。
- 会社の姿勢が見える: 見積もりのスピードや詳細さ、担当者の対応などを比較することで、各社の仕事に対する姿勢や熱意を判断できます。
時間と手間はかかりますが、このプロセスを丁寧に行うことが、満足のいくリノベーション・リフォームを実現するための最大の防御策であり、成功への近道となります。
おすすめのリノベーション・リフォーム会社紹介サービス3選
「複数の会社に自分で連絡して、一から説明するのは大変…」「そもそも、どんな会社があるのかわからない」という方も多いでしょう。そんな時に便利なのが、あなたの要望に合った会社を中立的な立場で紹介してくれるマッチングサービスです。ここでは、実績が豊富で信頼性の高い代表的なサービスを3つ紹介します。
① SUUMOカウンター リフォーム
株式会社リクルートが運営する、リフォームやリノベーションを検討している人と会社をつなぐ無料相談サービスです。全国に店舗があり、対面またはオンラインで専門のアドバイザーに相談できます。
- 特徴:
- 専門アドバイザーによる無料相談: 住まいづくりの経験豊富なアドバイザーが、リフォームとリノベーションの違いといった基本的なことから、予算の立て方、会社の選び方まで、中立的な立場で無料でアドバイスしてくれます。何から始めていいかわからないという初心者の方に特におすすめです。
- 要望に合わせた会社紹介: 相談内容をもとに、あなたの予算や希望のデザイン、工事内容に合った会社を複数社ピックアップして紹介してくれます。自分で会社を探す手間が省けます。
- 無料講座の開催: 「リノベーション基礎講座」や「費用・相場まるわかり講座」など、家づくりに役立つ様々なテーマの無料講座を定期的に開催しており、情報収集に役立ちます。
- メリット:
- 第三者の客観的な意見を聞けるため、冷静に計画を立てられる。
- 紹介後の会社との面談設定や、断りの連絡も代行してくれるため、心理的な負担が少ない。
- 注意点:
- 紹介される会社はSUUMOと提携している企業に限られます。
- 最終的な契約は、紹介された会社と直接行うことになります。
(参照:SUUMOカウンター リフォーム 公式サイト)
② ホームプロ
株式会社ホームプロが運営する、日本最大級の利用者数と加盟会社数を誇るリフォーム会社紹介サイトです。2001年からサービスを開始した老舗であり、NTT東日本・NTT西日本が出資していることからも信頼性が高いと言えます。
- 特徴:
- 厳しい審査を通過した会社のみが加盟: 加盟するには、書類審査や面談など、独自の厳しい審査基準をクリアする必要があります。悪質な業者は排除される仕組みになっているため、安心して利用できます。
- 匿名での相談・見積もり依頼が可能: 自分の名前や連絡先を会社に知らせることなく、匿名でリフォームの相談や見積もりの依頼ができます。しつこい営業電話を心配する必要がありません。
- 豊富な口コミと事例: 実際にその会社でリフォームした施主による評価や口コミが多数掲載されており、リアルな評判を参考に会社を選ぶことができます。
- 無料の工事完成保証: 万が一、工事中に加盟会社が倒産した場合でも、ホームプロが代替の会社を探したり、手付金や前払金の損失を保証したりする制度が無料で付いてきます。
- メリット:
- インターネット上で完結できるため、手軽に複数社の比較検討ができる。
- 客観的な口コミを判断材料にできる。
- 注意点:
- アドバイザーによる対面相談はないため、自分で会社と直接やりとりを進める必要があります。
(参照:ホームプロ 公式サイト)
③ リノベる。
リノベーションの設計・施工、中古物件探しまでをワンストップで提供する、リノベーション専門の会社です。全国にショールームを展開しており、リノベーション後の空間を体感できます。
- 特徴:
- ワンストップリノベーションに特化: 中古物件探しから資金計画、設計・施工、インテリアコーディネートまで、リノベーションに関わるすべてを一つの窓口でサポートしてくれます。物件探しと会社探しを並行して進める手間が省け、連携もスムーズです。
- 専属チームによるサポート: コーディネーター、設計デザイナー、施工管理者など、各分野の専門家がチームを組んで家づくりをサポートしてくれます。
- アプリで進捗管理: 専用アプリを使って、物件情報や打ち合わせ内容、工事の進捗状況などをいつでも確認でき、透明性の高い家づくりが可能です。
- メリット:
- 複雑な中古リノベのプロセスを、プロに任せてスムーズに進められる。
- デザイン性の高い提案が期待できる。
- 注意点:
- 自社で設計・施工を行うため、他の会社との相見積もりには向いていません。
- あくまでリノベーション専門会社であり、中立的な紹介サービスではありません。
(参照:リノベる。 公式サイト)
これらのサービスはそれぞれに特徴があります。「まずは知識をつけたい、相談したい」ならSUUMOカウンター リフォーム、「手軽に多くの会社を比較したい」ならホームプロ、「中古を買ってワンストップでリノベしたい」ならリノベる。といったように、自分の状況やニーズに合わせて活用するのが良いでしょう。
まとめ:違いを理解して最適な住まいづくりを
この記事では、リノベーションとリフォームの違いについて、意味の定義から工事内容、費用、期間、会社の選び方まで、多角的に解説してきました。
最後に、重要なポイントを改めて整理します。
- リフォームは「原状回復」: 老朽化した部分を修繕し、新築時の状態に戻す比較的小規模な工事。「マイナスをゼロへ」がコンセプトです。
- リノベーションは「付加価値の創造」: 間取り変更や性能向上など、大規模な改修によって新たな価値を生み出す工事。「ゼロをプラスへ」がコンセプトです。
この根本的な違いが、費用や工期、設計の自由度など、あらゆる側面に影響を与えます。どちらの選択が正しいというわけではなく、あなたの「目的」「予算」「ライフプラン」の3つの軸で総合的に判断することが何よりも重要です。
設備の不具合解消や内装の一新など、部分的な改善で満足できるなら、コストと期間を抑えられるリフォームが適しています。一方、ライフスタイルの変化に合わせて間取りを大きく変えたい、デザインや住宅性能にこだわり抜いた理想の住まいを実現したいと考えるなら、リノベーションがその夢を叶える強力な手段となるでしょう。
そして、どちらを選ぶにせよ、成功の鍵を握るのは信頼できるパートナー、すなわち優良なリフォーム・リノベーション会社との出会いです。今回ご紹介した会社の選び方や紹介サービスも参考にしながら、複数の会社を比較検討し、あなたの想いを形にしてくれる最高のパートナーを見つけてください。
この記事が、あなたが理想の住まいづくりへの一歩を踏み出すための、確かな道しるべとなれば幸いです。