「画一的な間取りの部屋では物足りない」「自分らしい、おしゃれな空間で暮らしたい」
近年、ライフスタイルの多様化に伴い、住まいに対する価値観も大きく変化しています。特に、個性的でデザイン性の高い空間を求める人々から熱い視線を集めているのが「リノベーション賃貸」です。
東京は、世界有数の大都市でありながら、数多くの古い建物が残っています。これらの建物を現代のライフスタイルに合わせて再生したリノベーション賃貸は、新築や築浅物件にはない独自の魅力と、コストパフォーマンスを両立させる選択肢として注目されています。しかし、いざ探そうとすると、「どのサイトで探せばいいの?」「普通の賃貸と何が違うの?」といった疑問に突き当たる方も少なくありません。
この記事では、東京で理想のリノベーション賃貸を見つけるために、まず「リノベーション」そのものの定義やリフォームとの違いをわかりやすく解説します。その上で、それぞれに特色のあるおすすめの物件検索サイトを7つ厳選し、その特徴を徹底比較します。
さらに、リノベーション賃貸に住むメリット・デメリット、おしゃれな物件を探すための具体的なコツ、そして契約前に必ず確認すべき内見のチェックポイントまで、物件探しから入居後の生活までを見据えた情報を網羅的にご紹介します。この記事を読めば、あなたにぴったりのリノベーション賃貸を見つけるための知識とノウハウがすべて手に入ります。
目次
リノベーション賃貸とは?
リノベーション賃貸という言葉を耳にする機会は増えましたが、その正確な意味や「リフォーム」との違いを正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。理想の住まいを見つける第一歩として、まずはリノベーション賃貸の基本的な概念をしっかりと押さえておきましょう。この知識があるだけで、物件情報を見る際の視点が変わり、より自分に合った部屋を選べるようになります。
リノベーション賃貸とは、一言で言えば「既存の建物の骨格(構造体)はそのままに、大規模な改修工事を行うことで、元の状態よりも性能や価値を向上させた賃貸物件」のことです。単に古くなったものを新しくするだけでなく、現代のライフスタイルやニーズに合わせて、間取りの変更、デザインの一新、設備の高機能化など、付加価値を創造する視点が重要となります。
例えば、築40年のマンションの一室があったとします。かつて主流だった細かく仕切られた和室中心の間取りを、壁を取り払って広々としたリビングダイニングキッチン(LDK)に変更したり、古いバランス釜の浴室を最新のユニットバスに入れ替えたりするのがリノベーションです。コンクリートの躯体をあえて見せる「スケルトン天井」にしたり、無垢材のフローリングを敷いたり、オリジナルの造作キッチンを設置したりと、デザイナーの意匠が凝らされた物件も少なくありません。
このように、リノベーションは「再生」や「刷新」といった意味合いが強く、建物の持つポテンシャルを最大限に引き出し、新たな魅力を持つ空間へと生まれ変わらせることを目的としています。そのため、築年数が古い物件であっても、新築同等、あるいはそれ以上の快適性やデザイン性を手に入れられる可能性があるのです。
リフォームとの違いを解説
リノベーションとしばしば混同される言葉に「リフォーム」があります。この二つの違いを理解することは、物件選びにおいて非常に重要です。
リフォーム(Reform)は、英語で「改良・改善」を意味しますが、日本の不動産業界では主に「老朽化した部分を修繕し、新築に近い状態に回復させること」を指します。いわゆる「原状回復」が主な目的であり、マイナスの状態をゼロに戻すイメージです。
具体的なリフォームの例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 汚れた壁紙やクロスの張り替え
- 古くなったキッチンのコンロや換気扇の交換
- 傷んだフローリングの張り替え
- 給湯器やエアコンなど、壊れた設備の交換
これらは、建物の価値を大きく向上させるというよりは、劣化した機能を元に戻し、住む上で最低限必要な状態を維持するための工事です。
一方で、リノベーション(Renovation)は「革新・刷新」を意味し、既存の枠組みにとらわれず、新たな価値を付け加えることを目指します。ゼロの状態からプラスを生み出すイメージです。
リノベーションとリフォームの違いをより明確にするために、以下の表にまとめました。
項目 | リノベーション | リフォーム |
---|---|---|
目的 | 性能・価値の向上、新たな付加価値の創造 | 老朽化した部分の原状回復、初期性能への回復 |
工事規模 | 間取り変更などを含む大規模な工事が多い | 壁紙の張り替えなど、比較的小〜中規模な工事が多い |
設計の自由度 | 高い(デザイン性や機能性を追求できる) | 低い(既存の間取りや仕様がベースとなる) |
工事後の価値 | 元の状態よりも価値が向上することが多い | 元の状態と同等、またはそれに近い価値になる |
工事費用 | 高くなる傾向がある | 比較的安価に収まることが多い |
具体例 | 間取りの変更、断熱・耐震性能の向上、デザインの一新 | 壁紙の張り替え、設備の交換、外壁の塗り替え |
このように、リフォームが「修繕」であるのに対し、リノベーションは「改修」であり、その目的と工事の規模に大きな違いがあります。賃貸物件を探す際には、物件情報に「リフォーム済み」と書かれているのか、「リノベーション済み」と書かれているのかを確認することが重要です。
「リフォーム済み」の物件は、内装が綺麗になっている可能性は高いですが、間取りや基本的な設備は古いままかもしれません。一方で、「リノベーション済み」の物件であれば、現代的な間取りやデザイン、最新の設備が導入されている可能性が高く、より快適で質の高い暮らしが期待できます。
リノベーション賃貸が注目される背景には、社会的な要因も関係しています。 日本では空き家が増加し社会問題となっていますが、リノベーションはこれらのストック(既存建物)を有効活用する持続可能な手法として評価されています。新築物件を建て続けるのではなく、良いものを長く大切に使うというサステナブルな考え方が、リノベーション賃貸の価値を一層高めているのです。
東京のリノベーション賃貸が探せるおすすめサイト7選
東京で理想のリノベーション賃貸を見つけるためには、物件探しの「場」となるウェブサイト選びが極めて重要です。リノベーション物件は、その独自性から専門的に扱うサイトと、一般的な物件も幅広く掲載する大手ポータルサイトの両方に存在します。
ここでは、それぞれに異なる強みと特徴を持つ、選りすぐりの7つのサイトをご紹介します。各サイトのコンセプトや使い勝手を理解し、自分の好みや探し方に合わせて使い分けることで、理想の物件に出会う確率が格段にアップするでしょう。
サイト名 | 特徴 | こんな人におすすめ |
---|---|---|
goodroom | オリジナルリノベ「TOMOS」、無垢床が豊富 | ナチュラルで統一感のある温かみのある部屋が好きな人 |
R-STORE | 物件のストーリー性を重視、ユニークな検索軸 | 個性的で愛着のわく「一点もの」の物件を探したい人 |
東京R不動産 | メディア性が強く、尖った審美眼で物件をセレクト | “普通じゃない”刺激的な物件との出会いを求める人 |
SUUMO | 圧倒的な物件数、全国を網羅 | とにかく多くの選択肢から網羅的に比較検討したい人 |
LIFULL HOME’S | 豊富な物件数と詳細な検索機能、特集が充実 | 条件を細かく設定して効率よく、かつ多角的に探したい人 |
reallocal | 地方移住や地域との関わりに焦点 | 都心だけでなく地方との二拠点生活なども視野に入れている人 |
HEYAZINE | デザイナーズ・リノベに特化、高品質な写真 | デザイン性を最優先し、洗練された空間を求める人 |
① goodroom(グッドルーム)
goodroomは、リノベーション賃貸を探すならまずチェックしておきたい代表的なサイトの一つです。特に、オリジナルリノベーションブランド「TOMOS(トモス)」が有名で、サイトの看板コンテンツとなっています。
「TOMOS」は、「ふつう」で「シンプル」な、暮らしの器をコンセプトに掲げています。その最大の特徴は、温かみのある無垢材のフローリングを標準仕様としている点です。素足で歩くと気持ちの良い無垢床は、部屋全体の雰囲気を格段に引き上げ、どんなインテリアにも馴染む普遍的な魅力を持っています。白を基調としたシンプルな内装に、造作のキッチンや洗面台など、細部にまでこだわったデザインが施されており、統一感のある心地よい空間が作られています。
サイトの作りも非常に丁寧で、物件一つひとつに対してスタッフが実際に足を運んで取材した、血の通った紹介文と、自然光を活かした美しい写真が豊富に掲載されています。これにより、間取り図だけでは伝わらない部屋の空気感や魅力をリアルに感じ取れます。また、「TOMOS」以外にも、セレクトされたおしゃれなリノベーション物件やデザイナーズ物件も多数扱っています。ナチュラルで温かみのある、シンプルながらも質の高い暮らしを求める人にとっては、まさに理想の物件が見つかるサイトと言えるでしょう。(参照:goodroom 公式サイト)
② R-STORE(アールストア)
R-STOREは、「掘り出し物件、ここにあります。」というキャッチコピーが象徴するように、物件探しに「楽しさ」と「物語性」を求める人にぴったりのサイトです。単なるスペックの羅列ではなく、その物件が持つ個性やストーリーを、独自の視点とユーモアあふれる文章で紹介しています。
このサイトの面白い点は、検索の切り口が非常にユニークなことです。「天井が高い」「窓から緑」「渋いビル」「レトロなタイル」といった、住む人の感性に訴えかけるようなキーワードで物件を探すことができます。これは、自分がどんな空間に心地よさを感じるのか、潜在的なニーズに気づかせてくれるきっかけにもなります。
掲載されている物件は、洗練されたリノベーション物件から、少しクセのあるレトロな物件、驚くような眺望を持つ物件まで多岐にわたります。R-STOREのスタッフは、物件の長所だけでなく、「注意点」や「気になる点」も正直に記載しているため、非常に信頼が置けます。例えば、「駅からは少し歩きますが、その分静かな環境です」「このレトロなキッチンが愛せる方に」といった具合に、デメリットを魅力として捉え直す視点を提供してくれます。物件との一期一会を楽しみたい、自分だけの「愛せる部屋」を見つけたい人におすすめのサイトです。(参照:R-STORE 公式サイト)
③ 東京R不動産
東京R不動産は、単なる不動産情報サイトではなく、「新しい視点で不動産を発見していくサイト」を標榜するメディアです。その審美眼は非常に独特で、一般的な不動産サイトでは評価されにくいような、個性的で尖った物件を積極的に紹介しています。
サイトを訪れると、「眺めがいい」「レトロ・ヴィンテージ」「改装可能」「屋上・テラス」といった、ワクワクするようなカテゴリーが並びます。ここで紹介される物件は、まさに”R不動産クオリティ”とでも言うべき、唯一無二の魅力を持つものばかり。例えば、元工場をリノベーションした広大な空間、都心にありながら森の中にいるかのような緑豊かな物件、思わず声が出るような絶景が広がるペントハウスなど、住む人の創造力をかき立てる物件が満載です。
物件の紹介文も読み物として非常に面白く、その空間でどんな暮らしができるのか、具体的なシーンが目に浮かぶようです。東京R不動産は、住まいに「普通」を求めない、クリエイティブな人々から絶大な支持を得ています。 物件数は限られており、人気物件はすぐに申し込みが入ってしまうため競争率は高いですが、他では絶対に出会えないような、刺激的な物件を探しているなら見逃せないサイトです。(参照:東京R不動産 公式サイト)
④ SUUMO(スーモ)
SUUMOは、言わずと知れた日本最大級の不動産情報ポータルサイトです。リノベーション専門サイトではありませんが、その圧倒的な情報量は最大の武器です。専門サイトには掲載されていない、地域の不動産会社が扱うリノベーション物件が見つかる可能性があります。
SUUMOでリノベーション賃貸を探す際のコツは、検索機能をうまく活用することです。まず、「賃貸」のページで希望のエリアを選択した後、「こだわり条件」の中から「リフォーム・リノベーション」の項目にチェックを入れます。さらに、フリーワード検索で「リノベーション」「デザイナーズ」「無垢材」「コンクリート打ちっ放し」といったキーワードを入力して絞り込むと、より理想に近い物件に出会いやすくなります。
大手ポータルサイトのメリットは、様々な物件を横断的に比較検討できる点です。家賃相場を把握したり、同じエリアの他の物件と比べたりするのにも役立ちます。ただし、情報が膨大であるため、質の高い物件を見つけ出すには根気と工夫が必要です。専門サイトで好みのテイストを掴んだ後、SUUMOで網羅的に探す、という使い方が効果的です。(参照:SUUMO 公式サイト)
⑤ LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)
LIFULL HOME’Sもまた、SUUMOと並ぶ大手不動産情報ポータルサイトです。基本的な特徴はSUUMOと似ていますが、独自の強みも持っています。豊富な特集記事やコンテンツがその一つで、「リノベーション・リフォーム物件特集」や「デザイナーズ物件特集」などが組まれており、テーマに沿って物件を探しやすくなっています。
検索機能も非常に充実しており、「バス・トイレ別」「独立洗面台」といった基本的な条件はもちろん、「ルームシェア可」「DIY可」といった、よりニッチな条件でも絞り込みが可能です。また、物件ごとに「この物件のポイント」がアイコンで分かりやすく表示されていたり、問い合わせたユーザーの評価が見られたり(一部物件)と、ユーザーが判断しやすいような工夫が随所に見られます。
LIFULL HOME’SもSUUMOと同様に、まずは「リノベーション・リフォーム済み」の条件で絞り込み、さらにフリーワードを駆使して探すのが王道です。「したい暮らし」から探すといった独自の検索軸も用意されており、ライフスタイルを起点とした部屋探しも可能です。多くの選択肢の中から、詳細な条件でフィルタリングして効率よく探したい人に向いているサイトです。(参照:LIFULL HOME’S 公式サイト)
⑥ reallocal(リアルローカル)
reallocalは、これまでに紹介したサイトとは少し毛色の異なる、「移住」や「地域との関わり」をテーマにした不動産・求人情報サイトです。運営はR不動産グループが手掛けており、東京R不動産の地方版ネットワークという位置づけになります。
このサイトの主眼は地方の魅力的な物件にありますが、「東京」のカテゴリーも存在し、個性的なリノベーション物件が掲載されることもあります。reallocalがユニークなのは、単に物件を紹介するだけでなく、その地域でどんな暮らしや仕事ができるのかという、ライフスタイル全体を提案している点です。
そのため、「都心での暮らしも続けたいが、将来的には地方移住や二拠点生活も考えている」「地域に根差した活動に興味がある」といった志向を持つ人にとっては、非常に示唆に富んだサイトとなるでしょう。東京の物件を探しつつも、他の地域の可能性にも目を向けることができるのがreallocalの魅力です。純粋に東京のリノベーション物件だけを探すには少し遠回りかもしれませんが、暮らしの選択肢を広げるきっかけを与えてくれるサイトです。(参照:reallocal 公式サイト)
⑦ HEYAZINE(ヘヤジン)
HEYAZINEは、「デザイナーズ・リノベーション賃貸」に特化したセレクトメディアです。掲載されている物件は、建築家やデザイナーが手掛けた、洗練されたデザイン性の高いものが中心となっています。
このサイトの最大の特徴は、写真のクオリティが非常に高いことです。まるでインテリア雑誌の1ページのような美しい写真が、物件の魅力を最大限に引き出しています。ミニマルでモダンな空間、素材感を生かしたインダストリアルな空間など、アーティスティックな物件が多く、見ているだけでもインスピレーションが湧いてきます。
また、物件情報だけでなく、建築家やデザイナーへのインタビュー記事や、おしゃれな暮らしに関するコラムなど、読み物コンテンツも充実しています。住まいの機能性や利便性はもちろんのこと、何よりもデザイン性を重視する人、空間そのものに美しさを求める人にとっては、まさに宝の山のようなサイトです。掲載エリアは都心部が中心で、家賃も比較的高価格帯の物件が多いですが、質の高いデザインを求めるなら必ずチェックすべきサイトと言えます。(参照:HEYAZINE 公式サイト)
リノベーション賃貸に住む3つのメリット
リノベーション賃貸が多くの人々を惹きつけるのには、明確な理由があります。それは、一般的な賃貸物件では得がたい、独自の価値と魅力を持っているからです。ここでは、リノベーション賃貸に住むことで得られる主な3つのメリットについて、具体的に掘り下げていきます。これらのメリットを理解することで、なぜ多くの人が新築や築浅物件ではなく、あえてリノベーション賃貸を選ぶのかが見えてくるでしょう。
① おしゃれでデザイン性の高い物件に住める
リノベーション賃貸の最大のメリットは、何と言っても「おしゃれでデザイン性の高い空間に住める」ことです。一般的な賃貸物件は、万人受けする無難な内装や間取りが多く、どれも似たり寄ったりに感じられることがあります。しかし、リノベーション賃貸は、貸し手側が明確なコンセプトを持って作り込んでいるため、一つとして同じものがない「一点もの」の魅力にあふれています。
例えば、以下のような、こだわりのデザインが実現されている物件が数多く存在します。
- 素材感を生かしたデザイン: 温かみのある無垢材のフローリング、スタイリッシュで無骨な印象のコンクリート打ちっ放しの壁や天井、インダストリアルな雰囲気のアイアンの建具や照明など、素材そのものの質感を活かしたデザインはリノベーションの得意とするところです。
- 開放的な間取り: かつての細切れの間取りの壁を取り払い、広々としたワンルームやLDKに作り変えることで、実際の面積以上の開放感と明るさを生み出します。キッチンとリビングが一体化した空間は、友人を招いてホームパーティーを開くなど、暮らしの楽しみを広げてくれます。
- 個性的な造作設備: デザイナーがその部屋のためだけに設計したオリジナルのキッチン(造作キッチン)や、使い勝手とデザイン性を両立させた洗面台、壁一面の本棚など、既製品にはない特別な設えが空間の質を大きく高めます。
- 光と風を活かす設計: 大きな窓を設けたり、室内窓を設置して部屋の奥まで光を届けたりと、自然の要素を巧みに取り入れた設計もリノベーションの魅力です。
このように、リノベーション賃貸は、住む人の「自分らしい暮らしをしたい」という想いに応えてくれる、創造性豊かな空間を提供します。画一的な住まいから脱却し、まるでカフェやギャラリーのようなこだわりの空間を、自分の城にできることは、日々の生活に大きな満足感と豊かさをもたらしてくれるでしょう。
② 新しい設備で快適に暮らせる
「築年数が古い物件」と聞くと、水回りなどの設備が古くて使いにくいのではないかと心配になるかもしれません。しかし、リノベーション賃貸の多くは、内装デザインだけでなく、生活に直結する設備も最新のものに一新されているケースがほとんどです。これも、リノベーション賃貸に住む大きなメリットの一つです。
古い建物の弱点となりがちな水回り設備が、以下のようにグレードアップされています。
- キッチン: 使い勝手の良いシステムキッチン、火力が強く手入れのしやすいIHクッキングヒーター、複数の料理を同時に作れる3口コンロ、家事の負担を軽減する食器洗い乾燥機などが導入されていることがあります。
- バスルーム: 追い焚き機能や浴室換気乾燥機が付いた最新のユニットバスは、快適なバスタイムと雨の日の洗濯に貢献します。タイル張りの在来工法の浴室からユニットバスに変わることで、冬場の寒さや掃除の手間も大幅に軽減されます。
- 洗面・トイレ: 清潔感のある独立洗面台や、ウォシュレット(温水洗浄便座)付きのトイレは、今や必須の設備と考える人も多いでしょう。リノベーションでは、これらの設備もデザイン性の高いものが選ばれる傾向にあります。
さらに、目に見える設備だけでなく、快適な暮らしを支えるインフラも更新されている場合があります。
- インターネット環境: 高速インターネット回線が導入済みで、入居後すぐに快適なネット環境が手に入ります。
- 空調設備: 省エネ性能の高い最新のエアコンが設置されていることも多く、電気代の節約にも繋がります。
- セキュリティ: オートロックやモニター付きインターホンが後付けされ、防犯面での安心感が高まっている物件もあります。
このように、建物の外観や構造は古くても、室内は新築同様の、あるいはそれ以上に高機能な設備を備えているのがリノベーション賃貸の強みです。デザイン性というソフト面に加えて、日々の生活の質(QOL)を直接的に向上させるハード面の快適さも同時に享受できるのです。
③ 新築や築浅物件より家賃が安い場合がある
デザイン性が高く、設備も新しいとなると、家賃も相当高いのではないかと思われるかもしれません。しかし、リノベーション賃貸は、同じエリア・同じ広さの新築や築浅物件と比較した場合、家賃が割安に設定されていることが少なくありません。これが、リノベーション賃貸が持つコストパフォーマンスの高さを象徴する、3つ目の大きなメリットです。
なぜ家賃が安くなる傾向にあるのでしょうか。その理由は、賃貸物件の家賃設定が、内装や設備のクオリティだけでなく、「建物の築年数」に大きく影響されるためです。日本の不動産市場では、建物は年々価値が下がっていく「減価償却」という考え方が基本にあります。そのため、たとえ室内を全面的にリノベーションして新築同様にしたとしても、建物自体の築年数が古ければ、新築物件と同等の家賃を設定するのは難しいのです。
例えば、東京の人気エリアで、駅から徒歩10分、広さ40㎡の新築マンションの家賃が20万円だとします。同じエリア・条件で、築40年のマンションをリノベーションした物件であれば、家賃が16万円〜18万円程度で見つかる可能性があります。この差額は、月々数万円、年間で数十万円にもなり、家計にとって大きな違いとなります。
もちろん、リノベーションにかかった費用が上乗せされるため、同じ築年数の未リノベーション物件よりは家賃が高くなります。しかし、「新築や築浅物件並みの快適性とデザイン性を、それらよりも手頃な家賃で手に入れられる」という点は、非常に大きな魅力です。限られた予算の中で、できるだけ理想に近い住まいを見つけたいと考える人にとって、リノベーション賃貸は極めて合理的な選択肢と言えるでしょう。
知っておきたいリノベーション賃貸の3つのデメリット
リノベーション賃貸には多くの魅力がある一方で、契約してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、事前に知っておくべきデメリットや注意点も存在します。光の部分だけでなく、影の部分も正しく理解し、総合的に判断することが、満足のいく部屋選びの鍵となります。ここでは、リノベーション賃貸に潜む代表的な3つのデメリットを解説します。
① 物件数が少なく競争率が高い
リノベーション賃貸の最初のハードルは、「物件数が絶対的に少ない」という点です。SUUMOやLIFULL HOME’Sのような大手ポータルサイトで検索してみると分かりますが、全体の賃貸物件数に占めるリノベーション物件の割合はごくわずかです。
物件数が少ない理由はいくつかあります。まず、リノベーションには多額のコストと時間がかかります。オーナー(貸主)にとって、空室になった部屋を単にクリーニングして次の入居者を募集するのに比べ、リノベーションは大きな投資となります。そのため、すべての古い物件がリノベーションされるわけではありません。また、デザイン性の高いリノベーションは、設計や施工にも手間がかかるため、供給スピードが限られてしまいます。
供給が少ない一方で、おしゃれで快適な住まいを求める需要は年々高まっています。 goodroomやR-STOREのような人気専門サイトに掲載される魅力的な物件は、公開されると同時に多数の問い合わせが殺到し、数日のうちに申し込みが入ってしまうことも珍しくありません。特に、家賃が手頃で立地も良い、いわゆる「掘り出し物」は、熾烈な争奪戦になります。
この高い競争率を乗り越えるためには、以下のような心構えと対策が必要です。
- こまめな情報収集: 気になるサイトは毎日チェックし、新着物件を見逃さないようにする。サイトの新着通知機能やメールマガジンに登録するのは必須です。
- 迅速な行動力: 「いいな」と思ったら、迷わずすぐに内見の予約を入れる。内見して気に入ったら、その場で申し込みをするくらいの決断力が求められることもあります。
- 事前の準備: 申し込みに必要な書類(身分証明書、収入証明書など)をあらかじめ準備しておくと、スムーズに手続きを進められます。
リノベーション賃貸探しは、まさにタイミングとスピードが命。良い物件は待ってくれないということを肝に銘じておきましょう。
② 建物の構造が古い可能性がある
リノベーション賃貸で最も注意すべき点は、「内装はピカピカでも、建物自体の躯体(骨格)や共用部分は古いまま」ということです。リノベーションはあくまで専有部分(部屋の中)の改修がメインであり、建物全体の性能が向上するわけではないケースが多いのです。このギャップが、入居後の思わぬトラブルに繋がることがあります。
具体的に、以下のような点を確認する必要があります。
- 耐震性: 日本は地震大国であり、建物の耐震性は命に関わる重要な問題です。建築基準法における耐震基準は、1981年(昭和56年)6月1日に大きく改正されました。これ以降の「新耐震基準」で建てられた建物は、震度6強〜7程度の大規模地震でも倒壊しないことが求められています。一方で、それ以前の「旧耐震基準」の建物は、震度5強程度の中規模地震に耐えることを想定しています。リノベーション物件の母体となる古い建物には、旧耐震基準のものも少なくありません。物件の建築年月日を確認し、1981年6月1日より前かどうかは必ずチェックしましょう。旧耐震基準の建物でも、耐震補強工事が行われている場合もありますので、不動産会社に確認することが重要です。
- 断熱性・気密性: 古い建物は、壁に断熱材が入っていなかったり、窓が単層ガラスのアルミサッシだったりすることが多く、断熱性や気密性が低い傾向にあります。リノベーションで内装壁や床を新しくしても、外壁との間に断熱材を追加する工事まで行われているケースは稀です。その結果、「夏は暑く、冬は寒い」「エアコンの効きが悪い」「結露が発生しやすい」といった問題が起こりやすくなります。内見時には、窓が二重サッシやペアガラスになっているかを確認するだけでも、断熱性への配慮がある程度わかります。
- 防音性: 建物の構造、特に壁の材質や厚さは、隣戸や上下階からの音の伝わりやすさ(遮音性)に直結します。古い建物は壁が薄い場合も多く、隣の部屋のテレビの音や話し声、上の階の足音などが気になることがあります。これもリノベーションで根本的に解決するのは難しい問題です。内見時に壁を軽く叩いてみて、音の響き方を確認したり、できるだけ静かな環境で音漏れがないか耳を澄ませてみたりすることが大切です。
- 共用部分の状態: 部屋の中は美しくても、エントランスや廊下、階段、ゴミ捨て場といった共用部分が古く、管理が行き届いていない場合があります。共用部分の状態は、そのマンション全体の管理意識や住民の民度を反映する鏡です。共用部分が汚れていたり、私物が放置されていたりする物件は、入居後のトラブルが多い可能性も考えられます。
これらの点は、写真や図面だけでは絶対にわかりません。必ず内見時に自分の目で、耳で、肌で感じて確認することが不可欠です。
③ 家賃が周辺相場より高い場合がある
メリットの項目で「新築より安い場合がある」と述べましたが、一方で「同じ築年数の未リノベーション物件と比較すると、家賃は高くなる」という側面も持っています。これは、リノベーションにかかったデザイン料や工事費用が、家賃に上乗せされるため、当然のことと言えます。
例えば、あるエリアに築40年、広さ40㎡の物件が2つあったとします。
- A物件:未リノベーション(内装は当時のまま)→ 家賃12万円
- B物件:フルリノベーション済み(内装・設備は最新)→ 家賃16万円
この場合、B物件は新築(家賃20万円)よりは安いですが、同じ築年数のA物件と比べると月々4万円も高くなります。
したがって、リノベーション賃貸を検討する際には、「自分はそのデザイン性や設備の快適さに、相場より高い家賃を支払う価値を見出せるか」という、自身の価値観と向き合う必要があります。「ただ安い物件」を探しているのであれば、リノベーション賃貸は選択肢から外れるかもしれません。
しかし、「家賃が多少高くても、毎日過ごす空間は心地よく、気に入ったものであってほしい」と考える人にとっては、その価格差は十分に支払う価値のある投資と言えるでしょう。リノベーション賃貸の家賃は、周辺の築浅物件の家賃と比較し、その価格差と物件のクオリティが見合っているかを冷静に判断することが重要です。
おしゃれなリノベーション賃貸を東京で探すコツ
競争率が高く、物件数も限られているリノベーション賃貸。その中から、自分にとって最高の「一点もの」を見つけ出すには、少しの工夫と戦略が必要です。やみくもに探すのではなく、効率的かつ効果的に理想の物件にたどり着くための4つのコツをご紹介します。
専門サイトと大手ポータルサイトを併用する
リノベーション賃貸探しにおいて、最も基本的かつ重要な戦略が、「専門サイト」と「大手ポータルサイト」の二刀流で探すことです。それぞれに異なる長所と短所があるため、両者をうまく使い分けることで、情報の網羅性と質の高さを両立させることができます。
- 専門サイトの役割(goodroom, R-STORE, 東京R不動産など)
- 長所: サイト独自の審美眼でセレクトされた、質の高いおしゃれな物件がまとまっています。物件紹介文や写真も丁寧で、その部屋の持つ雰囲気やストーリーを深く理解できます。「自分の好みに合うのはどんな部屋か」という、感性の軸を見つけるのに最適です。
- 短所: 掲載物件数が限られており、人気物件はすぐに埋まってしまいます。掲載エリアも都心部に集中しがちです。
- 活用法: まずは専門サイトをいくつか巡回し、自分が「好きだな」と感じる物件の共通点(例:無垢床、コンクリート、レトロ感など)を探ります。ここで自分の好みのテイストを明確にすることが、後の物件探しの羅針盤となります。
- 大手ポータルサイトの役割(SUUMO, LIFULL HOME’Sなど)
- 長所: 圧倒的な物件情報量が最大の武器です。専門サイトには載っていない、地域の不動産会社が扱う隠れたリノベーション物件が見つかる可能性があります。家賃相場の把握や、幅広いエリアでの検索にも適しています。
- 短所: 情報が玉石混交であり、質の低い物件も多く含まれています。理想の物件にたどり着くには、効果的な検索キーワードの選定など、ある程度の探し方のスキルが求められます。
- 活用法: 専門サイトで見つけた「好みのテイスト」を具体的なキーワード(例:「無垢材フローリング」「デザイナーズ」「天井高」「スケルトン」など)に変換し、フリーワード検索を駆使します。「リフォーム・リノベーション」のチェックボックスと組み合わせることで、膨大な情報の中から効率的に候補を絞り込めます。
この併用戦略により、「専門サイトで感性を磨き、大手サイトで網を広げる」という、理想的な物件探しのサイクルが生まれます。
希望条件の優先順位を決めておく
リノベーション賃貸は、個性的な魅力がある一方で、すべての条件を満たす完璧な物件はほとんど存在しません。「デザインは最高だけど駅から少し遠い」「間取りは理想的だけど家賃が予算オーバー」といったケースは日常茶飯事です。そこで重要になるのが、「希望条件に優先順位をつける」ことです。
あれもこれもと欲張ってしまうと、決断ができずに良い物件を逃してしまう原因になります。事前に自分の中で「これだけは譲れない条件」と「妥協できる条件」を明確にしておきましょう。
優先順位付けのステップ
- 条件のリストアップ: まず、思いつく限りの希望条件を書き出します。(例:家賃、エリア、駅からの距離、広さ、間取り、デザインの好み、バス・トイレ別、独立洗面台、2階以上、オートロックなど)
- 「MUST(必須)条件」と「WANT(希望)条件」への分類:
- MUST(必須)条件: これが満たされなければ絶対に契約しない、という最低限のラインです。項目はできるだけ少なく、3〜4つ程度に絞るのがコツです。(例:「家賃15万円以下」「通勤時間40分以内」「バス・トイレ別」)
- WANT(希望)条件: あれば嬉しいが、なくても検討の余地がある条件です。(例:「無垢床」「独立洗面台」「駅から徒歩10分以内」「南向き」)
- 優先順位の決定: WANT条件の中で、さらに「これが叶うなら他のWANT条件は諦めてもいい」というように、自分の中での優先度を考えます。
この作業を事前に行っておくことで、内見時に冷静な判断が下せるようになります。「MUST条件はすべてクリアしている。WANT条件も1番重要なものが満たされているから、この物件に決めよう」といったように、迷いを減らし、スピーディーな意思決定を助けてくれます。
エリアを少し広げて探してみる
東京で部屋を探す際、多くの人が特定の人気エリア(例:渋谷区、目黒区、世田谷区など)や、慣れ親しんだ沿線に固執しがちです。しかし、リノベーション賃貸のような希少な物件を探す場合、そのこだわりが選択肢を極端に狭めてしまうことがあります。
そこで試してほしいのが、「エリアを少し広げて探してみる」という視点です。
- 隣の駅で探す: いつも探している駅の、一つか二つ隣の駅まで範囲を広げてみましょう。特に、各駅停車しか停まらない駅は、急行停車駅に比べて家賃相場が下がる傾向にあり、同じ家賃でもより広く、質の高い物件が見つかる可能性があります。
- 沿線を変えてみる: いつも使っている沿線と並行して走っている別の沿線や、乗り換え1回で行ける範囲の沿線も検索対象に加えてみましょう。普段馴染みのない街でも、実際に訪れてみると意外な魅力に気づくことがあります。
- 「穴場」エリアを探す: 都心へのアクセスは良いのに、知名度がそれほど高くないために家賃が比較的リーズナブルなエリアも存在します。不動産サイトの特集記事や、街の情報を発信するウェブメディアなどを参考に、自分だけの「穴場」を探してみるのも面白いでしょう。
エリアを広げることは、単に物件の選択肢を増やすだけでなく、家賃を抑えたり、より広い部屋を見つけたり、これまで知らなかった魅力的な街に出会ったりと、多くのメリットをもたらします。固定観念を一度リセットし、柔軟な視点で地図を眺めてみることが、思わぬ良物件との出会いに繋がるのです。
SNSで情報収集する
現代の部屋探しにおいて、SNSは強力な情報収集ツールとなり得ます。特に、ビジュアルが重視されるリノベーション賃貸探しでは、その効果は絶大です。
- Instagram: 「#リノベーション賃貸」「#東京リノベーション」「#デザイナーズマンション東京」「#goodroom」「#TOMOS」などのハッシュタグで検索すると、不動産会社が投稿した最新の物件情報や、実際にリノベーション賃貸に住んでいる人のリアルな暮らしぶりを見ることができます。部屋の雰囲気だけでなく、インテリアのコーディネートやDIYのアイデアなど、入居後の生活をイメージする上で非常に参考になります。
- Pinterest: インテリアやデザインのアイデアを探すのに最適なプラットフォームです。キーワードで検索すれば、国内外の美しいリノベーション事例が大量に見つかります。これを眺めているうちに、自分の好きなデザインの方向性が固まってくるでしょう。気に入った画像を保存して「理想の部屋ボード」を作っておけば、不動産会社の担当者に自分の好みを伝える際にも役立ちます。
- X (旧Twitter): 不動産会社の公式アカウントをフォローしておくと、Webサイトに掲載される前の先行情報や、急な空き情報が流れてくることがあります。情報の速報性が高いため、こまめにチェックする価値はあります。
ただし、SNSの情報はあくまで参考と捉えることが重要です。投稿されている写真は加工されている可能性もありますし、断片的な情報だけでは物件の全体像は掴めません。気になる物件を見つけたら、必ず公式サイトで詳細を確認し、最終的には自分の目で内見することを忘れないでください。
契約前に確認!内見時のチェックポイント
Webサイトでどれだけ魅力的に見えても、最終的な契約の判断は「内見」にかかっています。写真や間取り図だけでは決してわからない、その部屋の本当の姿を五感をフルに使って確かめる、非常に重要なプロセスです。ここでは、後悔しないために内見時にチェックすべきポイントを、「室内全体」「水回り」「建物全体」の3つのカテゴリーに分けて、網羅的に解説します。
室内全体
部屋の中に入ったら、まず全体の印象を掴みつつ、これから始まる新しい生活を具体的にシミュレーションしながら、細部をチェックしていきましょう。
間取りと生活動線
間取り図を見るだけでは、実際の広さの感覚や、生活のしやすさはわかりません。
- 家具の配置シミュレーション: 持っていく予定のベッドやソファ、テーブル、棚などのサイズをあらかじめ測っておき、メジャーを持参して実際に配置可能かを確認しましょう。特に、大型家具を置くスペースと、ドアや廊下を通るか(搬入経路)は必須のチェック項目です。
- 生活動線の確認: 朝起きてから、顔を洗い、着替えて、朝食をとり、家を出るまでの一連の流れを頭の中でシミュレーションしてみます。また、帰宅してから、料理をして、食事をして、入浴して、寝るまでの動きも想像してみましょう。その際に、窮屈に感じたり、不自然な動きになったりする箇所がないかを確認します。例えば、「キッチンからダイニングテーブルまでの距離が遠い」「寝室からトイレまでが遠い」といった点は、日々の小さなストレスに繋がります。
収納の量と使いやすさ
収納は、部屋をすっきりと保つための生命線です。
- 容量の確認: クローゼットや押入れ、物入れの扉をすべて開け、奥行きと高さをメジャーで測りましょう。自分の持っている服や荷物がすべて収まるか、シビアに判断します。特に、コートなどの丈の長い衣類をかけるスペースがあるか、収納ケースが収まるかは重要です。
- 使いやすさ: 棚板が可動式か、ハンガーパイプの位置は適切かなど、実際の使い勝手も確認します。玄関のシューズボックスの容量も忘れずにチェックしましょう。手持ちの靴がすべて収まるかは、意外と見落としがちなポイントです。
日当たりと風通し
日当たりと風通しは、部屋の快適さを大きく左右します。
- 日当たり: 内見する時間帯によって日の入り方は変わりますが、窓の向き(方角)と、窓の外に日光を遮るような高い建物がないかを確認します。南向きが最も日当たりが良いとされますが、東向きは朝日が入り、西向きは西日が強いなど、それぞれに特徴があります。自分のライフスタイル(朝型か夜型かなど)と照らし合わせて考えましょう。
- 風通し: 複数の窓を開けて、空気の流れ(風の通り道)ができるかを試してみます。風通しが良い部屋は、湿気がこもりにくく、カビの発生を防ぐだけでなく、夏場でも涼しく感じられるというメリットがあります。
コンセントの位置と数
現代生活に不可欠な電気。コンセント問題は、入居後に発覚すると非常に厄介です。
- 位置と数の確認: 「どこで」「どの家電を」使うかを具体的に想定しながら、すべてのコンセントの位置と数を確認します。テレビ、PC、スマートフォンの充電、オーディオ機器、キッチン家電(冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器)、掃除機、ドライヤーなど、必要な場所に十分な数のコンセントがあるかチェックしましょう。
- テレビ・ネット回線の端子: テレビアンテナ端子やLANケーブルの差込口の位置も確認し、家具のレイアウトを考えます。
水回り
キッチン、浴室、トイレなどの水回りは、毎日使う場所だからこそ、特に念入りにチェックが必要です。リノベーションで新しくなっていることが多いですが、見た目だけでなく機能性や使い勝手もしっかり確認しましょう。
キッチン
- 作業スペース: まな板を置いて、食材を切るための十分なスペースが確保されているか。シンクとコンロの間のスペースが重要です。
- シンク: 広さや深さを確認します。大きな鍋やフライパンが洗いやすそうかイメージしましょう。蛇口がシャワーヘッドになっていると、シンクの掃除に便利です。
- コンロ: ガスコンロかIHクッキングヒーターか、口数はいくつかを確認します。料理好きなら2口以上は欲しいところです。
- 収納: 調理器具や食器、調味料などを収納するスペースが十分にあるか、扉を開けて確認します。
- 家電スペース: 冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器などを置くための専用スペースと、その近くにコンセントがあるかを確認します。
浴室・脱衣所
- 浴槽と洗い場: 実際に浴槽をまたいでみて、広さや深さを体感します。洗い場のスペースも十分か確認しましょう。
- 機能: 追い焚き機能、浴室換気乾燥機、ミストサウナなど、付随する機能を確認します。特に浴室換気乾燥機は、雨の日の洗濯やカビ防止に非常に役立ちます。
- シャワーの水圧: 可能であれば、不動産会社の方に許可を得て、少しだけ水を出させてもらい、水圧をチェックできるとベストです。
- 脱衣所と洗濯機置き場: 脱衣スペースが狭すぎないか、洗濯機置き場の防水パンのサイズをメジャーで測り、自分の洗濯機が設置できるかを確認します。
トイレ
- 機能: 温水洗浄便座(ウォシュレット)の有無は必ず確認しましょう。
- 広さ: ドアを開閉する際に窮屈でないか、便座に座った時に圧迫感がないかを確認します。
- 収納: トイレットペーパーや掃除用品を置くための棚や収納スペースがあるかチェックします。
建物全体
専有部分(部屋の中)だけでなく、建物全体や周辺環境のチェックも、快適で安全な暮らしのためには欠かせません。
共用部分(廊下・ゴミ捨て場など)の状態
- 清掃状況: エントランス、廊下、階段、エレベーターなどがきれいに清掃されているかは、その建物の管理体制の良し悪しを判断する重要な指標です。
- 掲示板: 掲示板に貼られているお知らせの内容(例:騒音に関する注意喚起など)から、住民間のトラブルの有無を推測できる場合があります。
- ゴミ捨て場: 24時間ゴミ出し可能か、分別ルールが守られているか、清潔に保たれているかを確認します。
- 駐輪場・駐車場: 自転車や車を所有している場合は、空き状況や料金を確認します。
建物の防音性や断熱性
- 防音性: 内見時に、室内で一度静かにして、外の音や隣戸・上下階からの生活音が聞こえないか耳を澄ませてみましょう。また、自分の足音や話し声がどの程度響くかを確認するために、同行者と少し離れて話してみるのも有効です。壁を軽くコンコンと叩いてみて、詰まった音がするか、軽い音がするかで壁の構造がある程度推測できます。
- 断熱性: 窓の仕様を確認します。二重サッシやペアガラス(複層ガラス)になっていれば、断熱性や結露防止への配慮があると考えられます。古いアルミサッシのままの場合は、冬の寒さや結露を覚悟する必要があるかもしれません。
周辺環境
- 駅からの道のり: 実際に自分の足で歩いてみて、時間、坂道の有無、街灯の数、夜でも安全そうかなどを確認します。人通りや道の明るさは、特に女性にとっては重要なチェックポイントです。
- 生活利便施設: スーパー、コンビニ、ドラッグストア、郵便局、銀行などが徒歩圏内にあるか、その営業時間や品揃えも確認できるとより良いでしょう。
- 騒音・匂い: 建物の周りに、線路、幹線道路、工場、飲食店、学校、公園など、騒音や匂いの発生源となる施設がないかを確認します。平日と休日、昼と夜で環境が大きく変わることもあるため、可能であれば時間帯を変えて再訪するのが理想です。
まとめ
東京で自分らしい暮らしを実現する選択肢として、リノベーション賃貸は非常に大きな魅力を持っています。この記事では、その全貌を解き明かすために、基本的な定義から具体的な探し方、契約前の注意点までを詳しく解説してきました。
最後に、重要なポイントを改めて振り返ります。
リノベーション賃貸とは、単に古いものを新しくする「リフォーム」とは一線を画し、既存の建物に大規模な改修を施して、新たな価値を創造する「刷新」を意味します。その結果として、私たちは以下の3つの大きなメリットを享受できます。
- おしゃれでデザイン性の高い物件に住める: 無垢材やコンクリート打ちっ放しなど、こだわりの素材や開放的な間取りで、画一的ではない自分だけの空間が手に入ります。
- 新しい設備で快適に暮らせる: キッチンやバスルームなどの水回り設備が最新のものに一新され、見た目だけでなく機能面でも質の高い生活が送れます。
- 新築や築浅物件より家賃が安い場合がある: 建物の築年数が古いため、同等のクオリティを持つ新築物件などと比較して、コストパフォーマンスに優れた家賃設定になっていることがあります。
一方で、魅力的なリノベーション賃貸には、知っておくべきデメリットも存在します。
- 物件数が少なく競争率が高い: 良い物件はすぐに埋まってしまうため、こまめな情報収集と迅速な行動力が不可欠です。
- 建物の構造が古い可能性がある: 内装は新しくても、建物の耐震性や断熱性、防音性は古いままの可能性があり、内見でのチェックが重要になります。
- 家賃が周辺相場より高い場合がある: リノベーション費用が上乗せされるため、同じ築年数の未リフォーム物件よりは家賃が高くなります。
これらのメリット・デメリットを深く理解した上で、理想の物件を見つけ出すための具体的なコツは「専門サイトと大手サイトの併用」「希望条件の優先順位付け」「エリアを少し広げて探す」そして「SNSでの情報収集」です。これらの戦略を駆使し、候補物件が見つかったら、最後の砦である「内見」で、生活動線からコンセントの位置、共用部分の状態まで、五感をフルに使って徹底的にチェックすることが、後悔しない部屋選びの鍵となります。
リノベーション賃貸探しは、宝探しに似ています。簡単に見つからないかもしれませんが、だからこそ、理想の一部屋に出会えた時の喜びは格別です。この記事が、あなたの素晴らしい東京ライフの始まりとなる、最高のリノベーション賃貸を見つけるための一助となれば幸いです。